「五味オーディオ教室」
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「五味オーディオ教室」は、ごま書房が昭和51年に刊行したGoma Booksの中の一冊です。五味さんが、芸術新潮やステレオ・サウンドに書かれた原稿を、新書を買う読者というか、新書の形態に合わせて、読みやすく再編集されたものと思えます。かなり昔の本ですが、先日再読してみて、漁盤、オーディオがらみで直裁、かつ小気味良い発言が、「今でも色あせないなぁ。」と感じ入りました。ご興味があれば、この本ではなくとも、「西方の音」とか、「いい音いい音楽」とか、「オーディオ巡礼」とか、類書がありますから、図書館ででも探されるといいかもしれません。
五味さんとは
- 五味康祐さんは、まぁ、歴史・時代小説作家というのが表看板なんでしょうが、マージャン、手相等々の余技的な書き物の一つとして、オーディオ関係本があり、いわゆる音楽評論家、オーディオ評論家といわれる人のクダラナイ、おっと失礼、杓子定規な書きぶりと異なるアプローチの文章に音楽愛好家の心を撃つものがあって、よく読まれていました。1921年の大阪生まれですから、Nelsonにとっても大先輩となります。
- 明大文学部卒で、純文学期が少しあった後は、一貫して大衆路線で、柳生武芸帳などを通して人間の真実を描かれた方です。 オーディオ関係では、「西方の音」とか著名な本がありますし、タンノイ・オートグラーフでクラシック音楽を聴くことをこよなく愛する中で、その手段としてのオーディオについても一家言を持たれたようです。
- 音楽を聴くのが好きだという情熱が、書かれたものから十分に伝わってくる筆力があるので、多くの支持を受けたのも当然でしょう。その音楽好きが、不幸なことに、晩年は耳が不自由になられたんですから、世の中ママならないものです。言われていることは、分野こそ違え、ジャズにおいても当てはまることが多くあります。
- この「五味オーディオ教室」を再読して、現時点でも大いに共感するところがあることに気付きました。ジャンルは違っても、同じ音楽であり、「好きな道であれば、考えることにそれほど違いはないんだなぁ。」というところです。
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