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微塵も揺るがない骨っぽさ : JBLエヴェレストD66000試聴記 (2)
  • ダイナのサウンドハウス5階におけるJBLエヴェレストD66000試聴記の続きです。
    Milt Hinton : 'Three Little Words'
  • この「Trio Jeepy」盤は手持ちであり、このサイトでも好演盤に挙げています。全体はピアノレス・トリオ盤なのですが、このトラックはテナーとベースのデュオ。この演奏を選ぶというのが、山口さんの真骨頂でしょう。前説でベースという楽器の「そもそも論」から入り、この演奏でのスラッピング気味なMilt Hintonの付け方と、それに反応してスタイルを切り替えるBranford Marsalisの当意即妙さこそが、ジャズであるという認識が披露されました。「ジャズオーディオ・ウェイク・アップ」でも、「楽器とか、ジャズの変遷に詳しいなぁ、、、」と感じさせる記述が多かったんですが、説明の中で「ホット・クラブの例会では、いつも皿回しをしていました。」との言及があったので、「年季が入っているんだ」と納得しました。
    Jimmy Blanton : 'Pitter Panther Patter'
  • Ray Brownが尊敬するベースの巨人Jimmy Blantonと、ピアノというか、ジャズの巨人Duke Ellingtonとが、デュオで演奏する昔から有名なトラックで、恐らくはSP音源をデジタル化したものでしょう。
    Oscar Pettiford : 'The Man I Love'
  • Coleman Hawkinsのワン・ホーンのトラックで、正統派ベース、Oscar Pettifordがアドリブを取っています。これも手持ちがありますが、「体全体でピチカートしている」という説明が納得できる再生でした。
    Scott La Faro : 'Autumn Leaves (Monaural Take)'
  • 超有名な「Portrait in Jazz」盤からの「枯葉」ながら、モノ、ステレオ両テイクが残っている中で、山口さんはモノラル・ヴァージョンの奔放さが気に入っているようです。Scott La FaroBill Evansに絡む勢いが、文字通りに眼前に髣髴(ほうふつ)しました
    Gary Peacock : 'Embraceable You'
  • これは、Mark LevinsonがMLASを売ッ払ってCelloを立ち上げた時期に、知人(Distinguished Friends)のジャズメンの演奏を、自分なりのやり方で録音したもののようで、初聴きです。Gary Peacockの素晴らしいベース一本のソロ・テイクで、これは今夜一番の聴きものでした。パワーのMC501のピーク・メーターが、盛大に500Wの目盛りを振り越していましたし、まぁ、凄かったですわ。
    Charles Mingus : 'So Long, Eric'
  • これも手持ち盤で聴き慣れたトラックで、Eric Dolphyに贈った曲ですが、これほどの大音量で聴いたことはありません。Charles McPhersonのアルトが凄いですし、お気に入りのLonnie Hillyerのトランペットも実に良い音で再生されていました。そして恐らくはイスにお尻を少し乗せながらのCharles Mingusのベースは、ブッ太くて、快感です。
    先ずは「音量」、、、
  • 、、、と淡々と書いてきましたが、実は聴いている最中は「おい、おい、この音量でいつも聴いてるのかよぉ、、、」と感じるほどの大音量で、尻に火が点いていました。我が家でも、100dB超のSPに200Wを突っ込めるアンプがつないであるので、この音量は出せなくはありませんが、これほどの質は伴わないでしょう。それに、たとえ雨戸を閉め切ったとしても、この音量で鳴らすと家鳴り鳴動する上に、カミサンや近所から苦情が来ます。聴取位置は、両SPから約2メートル程度の、ほぼ真ん中でした。そこでの音量は、ライブのかぶりつきと同等かそれ以上の音で、まぁ、有り得ない音量では無いものの、「この音量は、半端ではない」のです。主催の両氏は部屋の後方で聴いていましたから、その辺なら「かぶりつき」程度の音量で聴けたのでしょうが、それよりずっと前に座っていたNelson等は、「ベースのf孔の真ん前に首を差し出して、時に運指の邪魔をしながら聴いている感じ(^^;」とでも言えば当たっているでしょうか。ジャズ喫茶でも、ここまでの音量は普通は出しませんし、出ません。一関ベイシーなら時々出してましたが、、、(^o^)
  • 「そんな現実とかけ離れた音量で聴くのは、音楽の正しい聴き方ではない。」とおっしゃる方には、「それも、オーディオの楽しみ方の一つと信じる。」と山口さんは答えるそうであり、Nelsonも時にそういうことをしますから、その主張には首肯します。
  • 話を実証的にしてみます。パワーのMC501には、ピーク・メーターが付いており、表示枠の上限から1本下の線まで針が振り込んでいるのが見えました。終了後に確認したところ、それよりももう1本下の線が定格の500Wでした(^o^)。ちょっと暗算すると、500を512と見ると、2の9乗であり、電力で2倍が+3dBという対数計算ですから、3 x 9は27となって、500Wは+27dBとなります。DD66000の能率は96dB/ 1W/ 1mですから、音圧は96 + 27 =123となって123dBなんですが、2メートルの所で聴いたんで -3dB減じると、仕上がり音圧はピーク値で120dBですねぇ。モノの本によれば、120dBは「飛行機のエンジンの傍」に該当します。ピークがそんな具合であるとして、恐らくは、平均音圧レベル100dBの世界だったのかなぁ、と回想しています。
    トランジェントと耐入力
  • そして、立派なのは押し引きというか、トランジェントがしっかりとしていることです。CDPのUnidiskの方は、まぁ、あんなもんでしょうが、アナログのLP12のフル・システムには脱帽しました。微塵のハウリングの気配も見せず、しかもイコライズされているとは言え、大振幅の低音をくっきりと再生しえていました。まぁ、LINN LP12、C46、そしてMC501程の機器なら、この音量でのアナログ再生くらいは、別に平気なのでしょう。しかし普通は、SPさんがどこかでヘタレて、立ち上がり・立下りがモタ付く筈です。しかし、DD66000は余裕綽々と見えました。もっと言えば、ドライバーはこれ位なら大丈夫なんでしょうが、ウーファーが平気というのが凄いですねぇ。ボトミングやコーン紙のねじれのような妙な感じは皆無でした、、、というか、「もっと出しますかぁ、、、」なんて、まだまだ天井打ち無しに、スーーッと吹き抜けて行ける余地さえ感じさせました。システムよりもむしろ、部屋の壁飾りが始終盛大に、また時に床が鳴っていたくらいのものです。
    録音
  • 無論、これは録音がそれなりに良いから、惹き込まれて聴けるのです。音の最初の入り口であるLP/CD等に録音されている音が、真剣に聴くに値しない音でしかない場合には、如何にオーディオ・システムが頑張っても、無駄です。歪を増幅するだけに終始し、ある程度以上に音量を上げると耳に不快感を与えます。しっかりした録音が行われていてこそ、この企画が目指す「一期一会の再生音との出会い」が成立します。ベースの場合、量や克明さだけを言えば、結構多くの盤がベースの音を拾っています。しかし、そのベースが、どうしてもふやけてしまうのが、世の常です。でもベースの音では、量よりも何よりも、締りが大事です。
    ウッベの胴鳴り
  • もうひとつの山口さんの主張は、今様のペケペケしたベースの全否定です。今のベーシストのほとんどが、しっかりとしたウォーキングも出来ない癖に、派手なだけの小技を利かせたがり、コマの高さを低くして、ギターのように弾いています。しかもコマ近くに小型マイクを付けて、そこでの撥弦音を過剰に録ってPAで鳴らすことに重きを置き、ウッド・ベースで一番大事な本体の胴鳴りを軽視しています。しかし山口さんは、「あんなのは、全部ダメ!」と言い切っていました。上記にあるように、山口さんが選んで聴かせた名トラックでは、そういうひ弱なベース音はしません。ブッ太い、それこそステージを土台から揺るがすような強靭な音がするものばかりでした。
  • 、、、ということで、JBLエヴェレストD66000の「微塵も揺るがない骨っぽさ」が堪能できました。山口さん、そしてダイナミック・サウンドさん、実に素晴らしい機会をお作り頂いたことに、お礼を申し上げます。(メモし終わって、わが聴き部屋の前方の寸法を測りなおして見ました。まぁ、入らないことは無い寸法でした。クワバラ、クワバラ、、、(^^;

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