「Impressions/ A Tenor Supreme」における「繋ぎリフ」(4)
- 今週のメモのために、このジャズ・フェス本体にはどういうグループが出ていたのかという点と、どうやらこの「Impressions/ A Tenor Supreme」という催しものの舞台回し役と思える「Dave Liebman」は、どういう考えでこれを引き受けたのかという点とを調べようとしました。前回までのメモをまだご覧になっていない方は、ここ、ここと、ここでそれをお読みになってからの方が読み易い筈です。なお、26分余もある演奏の動画は、ここにあります。
このジャズフェスは・・・
- ここでの「Impressions」の演奏の詳細についてメモする中で、「夏のジャズフェスでの余興」という大変失礼かもしれない表現を使ってきました。これはNelsonの貧しい個人的体験では、ジャズフェスでは多数のジャズメンが一堂に会するので、その機会に便乗して声を掛けたら乗ってきたジャズメンを寄せ集めてバンドを組ませることも、結構ありました。そうしたジャム・セッション様の演奏枠だと、その顔触れが面白いとか、「実は前からアイツとやってみたかったんだ」とか・・・と言うような聴きものになる訳です。
- でも偶には某「げっつ」みたいに欧米ではない場末の国(日本も含む)のジャズフェスだと、チョットした小遣い稼ぎだからと馬鹿にするのか、完全に手抜きをしてるのに出食わしたことがあります。バンマスがそうだと、脇の面子もピリッとはしないわけで、そういう余興だと判った時には、ゲンナリとしたものです。しかし、この「Impressions/ A Tenor Supreme」では、その中でも例外的に内容が良くって、皆に気合が入っており、凄い演奏が聴けます。それで、このメモも含めて4回分もの分量で色々と、Nelsonのような「聴き専」レベルで気付いたことを、こもごもにメモしているのです。
- 先ず、このジャズフェスの「Newport Jazz Festival: Live by the Sea '97」という名称ですが、後に挙げるような錚々たる面子を一堂に集めるのは、来日のフライト自体にマル1日は掛かるので、日本の呼び屋さんにとっては結構経費がかかります。まして夏のジャズフェスのシーズンには、各国の呼び屋さんたちが自分たちの国呼びたがるから、大物たちは引っ張りだこになり、日程が込み合う訳です。聴いた話ですと、どこの国でもそういった事情は同じで、多分この「 Live by the Sea」の場合も含めて、破格の知名度を持つGeorge Wein主催の「Newport Jazz Festival」のカンムリ・シリーズにして、各国の需要を取りまとめてジャズメンを分配する仕組みがうまく行く年もあるそうです。
- その場合、カンムリに「Newport Jazz Festival」と付けることで、大所のジャズメンの初夏から初秋頃までのスケジュールを丸取りしてしまい、上手く関係国を回れるような旅程に仕上げて、各国の呼び屋さん達を巻き込んで、ジャズフェス巡りを国際的に仕切る年もあるんだと聞きました。
- 全員が同じ旅程で回るのではなく、アジアなんかだと途中からバラけるのが普通で、日本以外の豪州とか、フィリッピンとか移動時間が短くて済むリゾートに離合集散して、秋までその地域で過ごすと言います。一部の出入りがあるのが当然のこととなると、その辺の面子合わせ、移動に伴うアゴ・アシの手配、や取りまとめは大変だと言います。この「A Tenor Supreme」のケースでも、直前まではJoe Lovano入りでやる筈でしたが、彼の参加がドタキャンになったので、George Weinが無理を言えるテナーを探したら、Geroge Garzoneが「やっても良いよ」と言ったので、穴が埋まったそうです。
- 米国に居てもジャズフェスは一杯あって、どこにでも出られるような名があるジャズメンだと、そのビータ道中のど真ん中に極東の日本に行くとなれば、数日か、一週間仕事になります。その穴埋めとかギャラとか、来日ついでに東京のBlue Noteに出るとか・・・色々と大変です。
- そんなこんなで、調べた限りではこの東京湾でのジャズフェスには、下記のようなグループが参加していたという情報が見つかりましたので、順不同で挙げてみました。(記載は、グループ名、面子、判る範囲でのセットリストの順です。)
「Live by the Sea '97」の面子
- Joshua Redman 'Wish' Quartet:(8月23日録音、動画あり)
Joshua Redman ts; Christian McBride b; Brian Blade, ds: P. Metheny, g 1 Turnaround ; 2 The Deserving Many; Pat Interview; 4 WISH.
- Michael Brecker Quintet, 'Tales from the Hudson Band': (8月23日録音、動画あり)
Michael Brecker, ts; Joey Calderazzo, p; Pat Metheny, g; Dave Holland, b; Jack DeJohnette, ds 1 Interview Michael Brecker; 2 Slings And Arrows; 3 Interview Joey Calderazzo; 4 Midnight Voyage; 5 Interview Jack DeJohnette; 6 Interview Dave Holland; 7 Song For Bilbao; 8 Interview Pat Metheny; 9 Every Day I Thank You.
- A Tribute to John Coltrane (1):(8月23日録音)
Joshua Redman, ts; Geoffrey Keezer, p; Christian McBride, b; Brian Blade, ds; The New York Voices, vocal 1 Naima; 2 Giant Steps; 3 Lush Life; 4 Crescent.
- A Tribute to John Coltrane (2) 'A Tenor Supreme': (8月24日録音、動画あり)
Michael Brecker, Dave Liebman, George Garzone, Joshua Redman: ts; Joey Calderazzo, Geoff Keezer: p; Dave Holland, Christian McBride: b; Jack DeJohnette, Brian Blade: ds; The New York Voices 1 Intro; 2 Interview Dave Liebman; 3 My Favorite Things (by Dave Liebman 4); 4 Interview George Garzone; 5 Chasin' the Train (by George Garzone 3); 6 Interview Michael Brecker; 7 Interview Dave Holland; 8 The Father And The Son And The Holy Ghost/ India (by Dave Liebman G); 9 Interview Jack DeJohnette; 10 Interview Joshua Redman; 11 Impressions (by Dave Liebman G。今回の繋ぎリフに関するメモの主題とした演奏がコレ。).
余興なんかじゃないレベルの高さ
- このジャズフェスにどんなジャズメンが参加したのかを調べるうちに、上記(Michael Brecker Quintet, 'Tales from the Hudson Band')の演奏が、Jack DeJohnette名義の動画(2022/01/02にアップ)で存在するのを見つけました。この動画は、面白いことに演奏の合間に上記したような各ジャズメンのインタビューが日本語字幕付きで挟み込んであって、1時間強の長尺になっています。4曲の演奏中に見せる各人の動作と一緒に見ると、このジャズメン達の素顔が窺い知れるという興味深い動画でした。
インタビューも・・・
- それに加えて、26分余の「Impressions」の動画には別ヴァージョンがあり、上掲した「A Tribute to John Coltrane (2) 'A Tenor Supreme'」の全6曲の演奏と、その場で演奏をした5人のインタビューとを纏めてある83分ものの動画(2021/04/27にアップ)もあることが判りました。こっちも、インタビューは和訳付きであり、皆が自分とトレーンとの出会いについて、正に熱く語っているのが聞けました。それを見て判ったんですが、「Impressions」での前テーマの後半部や、繋ぎリフは、この4人が好きな「トレーンのアドリブ・フレーズ」の幾つかを、上手くワン・コーラスに組み合わせたものだ、と言う事のようですね。
「Impressions」のアップ主
- 上記の動画を元に、色々とメモしていますが、コレのアップ主であるNorbert Gerardさんのチャンネルには、涎が出るような動画が満載で、どれもが1時間もの長時間ギグをそれなりの画質と音質で楽しめます。今はテレビを一寸いじると簡単にYoutubeを見れる時代で、動画も精細な画質のが多くなって来てるので、スマホやPCで見た動画を自宅の居間の50インチくらいのTVで動画をも一度見ると、格別の満足感があります。上記動画では、放映用の画像に止まらずに、インタビュー迄入っているのが堪りません。そう考えると、世界中のそういう画像が簡単に集まるどこかの呼び屋さんか何かが、小遣い稼ぎにアップされてるんでしょうか。兎に角、生きが良いジャズメンの演奏ぶりが満載です。
画像と音声
- 個人的な経験ですが、長距離ドライブ時の無聊を慰めるには、ジャズの動画を車載ナビなんかで楽しむのは便利なんですが、ぜひ動画ではなく、もうひと手間かけて音声に変換しておいて(個人的に orz)楽しむのが吉です。今は、ナビでもいじれば簡単にYoutubeを楽しめますが、画像だとどうしても目が行き勝ちです。試して見て直ぐに、「こりゃ、マズイわ!」と気付いて止めました。でもその経験から言いますが、画像再生は安全運転上マズイです。乗用車でも安全上の配慮から、デフォルトだと運転時にはTVの画像が出ません。ご自分の怪我だけでなく、他人様の怪我にも関わることですから、運転中は是非とも音声だけに止める見識をお持ちください。
- 今回もまた、メモが長くなってしまったので、次回に続きをメモする積りです。
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