「Impressions/ A Tenor Supreme」における「繋ぎリフ」(2)
- 「繋ぎリフ」についてのメモで欠かせないとNelsonが思う「A Tenor Supreme」と言うグループによる「Impressions」の演奏について、前回は概要をメモして置きましたが、今回はその具体的な展開についてメモします。前回のメモをまだご覧になっていない方は、ここでそれをお読みになってからの方が読み易い筈です。なお、26分余もある演奏の動画は、ここにあります。
イントロは・・・
- 演奏はイントロ無しに、
譜面通りに分厚いソリで始まり、約1分あります。ご存じのようにこの曲「Impressions」は、名盤「Kind of Blue」の「So What」に曲想を得て、少しテンポを速めにしたものです。テーマの後半部は、
どうやらこの面子の誰かが、本テーマをフェイクして譜面に書き上げたものと思えるものです。動画の画面を見ると判りますが、4人の名テナー全員が集中して譜面を読み込みつつ運指をしています。これだけの手練れ達ですから、「Impressions」など暗譜でやれる筈です。それなのにこんなに譜面を睨んで吹奏するってことは、現場渡しの初見譜面でのソリだからだ、と推察できます。しかしリズムセクションのバッキングが見事で、この演奏でエライことが起きそうだと期待させます。
ソロ回しは・・・
- テーマ提示から途切れることなく、各人のソロとなり、初っ端は揃い踏みの左端に立つMichael Breckerで、
イヤ何ともはや、豪快な上に、馬鹿テクがバリバリの素晴らしいソロが、4分50秒くらい迄ありますから、多分5コーラスでしょうか。いやぁ、アイデアに途切れが無く、
しかもいわゆるトレーン流の常用イディオムがこれでもか・・・とばかりに出まくりです。これを聴くと、フロント陣が面前に置いているテーマの譜面は矢張り、ここでのまとめ役らしいDave Liebmanが書いたか、彼に頼まれてMichael Breckerが直前に、チョコチョコっと書き下ろしたものでは無いかと思います。
ソロの渡しは・・・
- 5コーラスも全力疾走に近いアドリブをやっているのに、汗ばんでさえいないのがご立派なMichael Breckerが、ヒッチャキにアドリブを頑張るその真横で、フロントの残り3人が譜面を指さしながら話し合っていますね。3人によるその後の展開の再確認が終わって直ぐに、予定の尺を消化したBreckerが、「オイッ、俺のアドリブ、この辺で終わるかんなぁ・・・」ってなもんで、解決気味なフレーズをちゃんと出します。すると直ぐ右横に立つDave Liebmanのアドリブが始まるのかと思いきや、
そうでは無くて始まったのはフロント4人揃ってのソリです。聴く限りでは、Nelsonいう所の「繋ぎリフ」としてソリ(ソロの複数形で、多人数でやる合奏のこと)をやる展開なんだぁ・・・と判ってきます。ですから先ほどの話し合いは、そのアドリブ渡しの流れの確認だったようです。そのリフは、前テーマ後半のフェイク旋律を使ったものと聴こえますが、リフにしては結構長くっ5分少し前迄というから、タップリ1コーラス分もあります。4人揃っての合奏ではありますが、音がかなり分厚くて、ハモリが少し入っているのかなぁ・・・と聴こえますね。前テーマもそうでしたが、これだけの名人上手が4人集まってのソリなんで、素晴らしく迫力に満ち満ちていますなぁ。
2番手のソロは・・・
- 4本のテナーによる繋ぎリフは5分18秒辺で終わりますが、Dave Liebmanはそのままでテナーを吹くのを止めません。
これがつまりは、彼が2番手のソロイストとしてこれからアドリブをやるんだと言うことを示している訳です。この人のアドリブも中々良いんですが、他の3人に比べるとマイクが絞られ過ぎなのか、ド迫力という程の派手さには欠けます。でも音が大きいだけが大事なのではなく、肝要なのは吹くフレーズの見事さであり、耳を傾けるとけっこう良いアドリブを聴かせているのです。そして8分56秒辺で、そのアドリブも解決気味となって・・・
一寸トラブルが・・・
- ここまでの流れで行くとLiebmanのアドリブが終りです。でも、フロントに動きは無いのです。コレはつまりさっきBreckerの終わりにあったような「繋ぎリフ」には入らないと見えます。現に、画面にはピアノが捉えられていて、そのまま推移してアドリブを取ります。ここで判るのですが、この演奏での割り付けではテナーが4本もあるので、それを一気に聴かせるのは芸が無いんで、テナーのソロは2+2で、2本づつやらせるというアレンジにしていたようです。でもそこの理解が急ごしらえの余興故に、全員で統一して居らずにモタツキが起きたようでした。上記したように8分56秒にハサミが入っての無音状態が残ってしまっています。
画像の方でも、カメラマンの仕切りがおかしくなり、繋ぎリフならフロント全員が大写しするし、ピアノの出番なら、サッとピアノの大写しになる筈です。画面を見ると判りますし、音圧グラフ(8:56)で見ると一層はっきりしますが、ここで無音時間が数分の一秒あります。まぁ、肩の凝らない夏のジャズフェスでの余興の「Impressions」なのですから、有り勝ちなことだと受け取るしかないでしょう。 そのままピアノのアドリブがあり、
一寸ベースもピチカートを聴かせた後、ここで予定通りのヘッド・アレンジに戻って行きます。
ピアノとベースが・・・
- ここで予定通りに繋ぎリフで、
4本のテナーによるソリがあります。そして後半分の2つのテナー・ソロが始まる訳で、つまり3人目のテナーのアドリブが・・・とまで書いた所で、指がまた疲れて来たので次回回しです。スンマセン。
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