(Home - 「ジャズのスパイス」 BACK)

「Impressions/ A Tenor Supreme」における「繋ぎリフ」(3)


  • 「繋ぎリフ」についてのメモで欠かせないとNelsonが思う「A Tenor Supreme」と言うグループによる「Impressions」の演奏について、今回はその具体的な展開の後半分をアップします。前回のメモをまだご覧になっていない方は、ここと、ここでそれをお読みになってからの方が読み易い筈です。なお、26分余もある演奏の動画は、ここにあります。
    ピアノとベースが・・・
  • 中中のアドリブを聴かせた後、11分半頃に


    4本のテナーによるソリがあります。そして後半分のテナーソロが始まる訳で、3人目のテナーのアドリブとなります・・・とメモして、前回のメモは終わっており、今回はその続きとなります。
    2回目のフロント陣のアドリブは・・・
  • ・・・ということで、4=2+2と2分割された後半の2本テナーのアドリブは、並びから見ても、年恰好からしてもGeorge Garzoneです。この方は、NYCのSmallsで見て以来のご贔屓なんですが、音楽カレッジの教師もしているし、私的にスクールを持っていて若手を指導してもいるそうです。トレーン流に限らず、今風な力感溢れるテナーを聴かせるので人気があります。来日時の録音でも、森山Gとライブをやったモノが何枚かあります。この演奏でのアドリブでも彼の特色はしっかりと出ていて、


    サブトーン交じりのブハブハが目立つフレーズで見せる豪快さは見事なものですし、他のステージで聴かせるバラード物では、しんみりと聴かせるという歌心も持っています。その素晴らしいアドリブが15分ちょっと前まであって、続いて次のテナーに繋がって行く「渡し」となります。
    なかなかの渡し・・・
  • この約10秒くらいの渡しフレーズには、いわゆる


    「決めリフ」(ロックなどでの呼称。神リフ)の香りがあり、それまでのアドリブの総纏め感に満ちたフレーズになっていて、「役者やのぉ・・・」と唸らされてしまいます。George Garzoneクラスのテナー奏者であれば、「Impressions」はリクゥストに応えたのも含めて何百回と演奏して来た筈です。そこで蓄積し来たった、数ある引き出しからここで選んだ「渡し」は、アドリブの解決に至る迄のフレーズの運びが、しっかりと脳裏に組み立てられてていて、誰もが納得できるものになっています。そしてそのまま直ぐにまた、4テナー揃っての繋ぎリフに入ります。
    父子鷹・・・
  • 繋ぎリフを受けて、15分半くらいからは


    この中でも最も年若いだろうJoshua Redmanのアドリブの番です。Dewey RedmanあってのJoshua Redmanとよく言われますが、親父に負けない元気一杯のブロウで客席を沸かします。その若手を代表したようなアドリブが、「もうそろそろ、20分だろうよ。」と言う頃になって


    終わりとなります。ここ、19分55秒からはどうなるかというと・・・4人全員がアドリブを済ませ、舞台上でも繋ぎリフにはこれ以上は入らないように見えます。良く聴いていると、誰かのテナーが一本で吹き始めるのが聴こえて来ますね。画面をよく見ると、吹き始めたのはMichael Breckerです。しかも、どうやらその吹きっぷりからすると、アドリブみたいな節回しかと思えます。ふぅーーーん・・・とそのままもう少し聴いていると、数秒経った20分5秒辺でテナー奏者が代わって、今度はDave Liebmanが一人で吹き始めているじゃぁないですか・・・
    どうもこれは・・・
  • テナーが一人づつ数秒のアドリブを取るってことはぁ、ナルホド、・・・画面だともっとハッキリしますが、この場面は「バース・チェンジ」に相違ありませんし、まぁそれもありうる展開ではあります。しかしこの演奏は夏のジャズフェスの余興です。やはり型破りな展開が用意されて居て、実に壮観なバース・チェンジが、ナント数回ほど回されるんです。正に、4人のテナー全員での、「百家争鳴」となります。
  • アドリブ回しがどんどん進んで行った21分半頃、Michael Breckerがまたアドリブに入った所で、舞台回し役のDave Liebmanが身振りで、「バース・チェンジはここまでにするかんなぁ・・・」という合図をしているのが、画面で判ります。そういうことで21分53秒には、指示通りにバース・チェンジが終わります。でも・・・ここでもまたそのまま終わらないのが、余興の余興たる所以なんでしょうか・・・今度の出し物(orz)はダメ押しともいえる、4人のテナー全員が入り乱れてのソリです。「何にかい? やれることは全部やるってことかい?」
    阿鼻叫喚とはこのことだ
  • そんな、こんなで4人のテナー全員総がかりの全員カデンツァに突っ込んで行って、今度は正に「阿鼻叫喚」となります。皆が譜面を見ているようでもあり、そうでも無いとも見えますが、兎に角物凄いソリで、文字通りに「聴かされて・・・」しまいます。「イヤぁ、皆、乗ってるなぁ・・・」と感心していると、頃合いも良しと判断したDave Liebmanが、片手を高く上げて総員に注意喚起して、さしもの激越この上ないカデンツァも、22分25秒には大団円となります。演奏はそのまま軌道に戻っていき、後テーマの提示となり、「こんなに頑張ったのは、このトレーンの名曲があったればこそなんだよなぁ・・・」てな感じで、24分頃に総員討ち死にとなり・・・かけるんですが、
    俺を忘れるなよ・・・
  • そこで、


    「俺は、まだアドリブを取っていないぞぉ・・・」とばかりに、Jack DeJohnetteが一分半の手数沢山なドラムスを聴かせます。(動画で聞く限りですが、この人の姓の正しい発音は、「ディジョーット」のようです。)この所、この人のアドリブは「Keith Jarrett Standard 3」のくらいしか聞いていないNelsonは、Standard 3での元ピアニストらしいドラムス・アドリブではなく、それこそ叩きまくる感じのドラムスに、大いに刮目した次第です。
  • この後、お約束の総員点呼があって、会場からは余興とはとても思えない程にリキが入った各人の怪演に、惜しみない拍手が贈られます。「夏のジャズフェスで、ここ迄手抜き無しの怪演をするなんて、皆に正にトレーンに捧げるという気持ちがあったからなんだろうなぁ・・・」と思わせてくれました。
  • 話がクドくなりますが、これ程迄に演奏の詳細に触れたモノのついでに、世にゴ万とある「Tribute To John Coltrane」と銘打った出し物について、次回に少しメモする積りです。

(Home - 「ジャズのスパイス」 BACK)

アクセスカウンター