アフリカの香り
- ジャズがアフリカと深く繋がっていることを、時にグイッと突きつけてくれる演奏がいくつかあるというお話です。
- 昔、「ルーツ」というアフリカ系米国人の祖先を辿るベストセラーがありました。ジャズの原形はアフリカ系米国人の音楽にありますが、しかし今やそれに止まらない多様な要素が付加されてきているようです。その意味で、ジャズは今正にWorld Musicであるわけですが、それでも色んなジャズを色んな機会に聴いていると、あらためてアフリカとジャズとの密接な関係に思いを致さざるをえない演奏に出会います。そう思わせる理由がジャズメンによるのか、曲によるのか、はたまた別の理由であるのかは分かりませんが、例えば以下のように非常にアフリカ臭い演奏があります。
- The African beatにおけるPrayer(Art Blakey, Solomon Ilori)
筆頭は、やはりこれですかねぇ。標題通りの「お祈り」をSolomon Iloriが唱えた後に、集団による打楽器演奏となります。お祈り自体がアフリカ語(そんなのないョ(^^;)なので全く分からないものの、何となく有り難味のある調子であり、かなりの人がそのように聞いていると言います。微笑ましいというか、有り難いお経で、という感じです。打楽器演奏も、リズムの供宴というよりも、心なしか普段着の演奏と聞こえます。つまり全体として、「ハレ」ではなく、「褻(ケ、普段の意)」の音楽と聞こえます。そして、なるほどこれが後にジャズになっていくんだなぁ、と得心できます。
- We InsistにおけるAll Africa(Max Roach, Abbey Lincoln, Olatunji他)
有名なメッセージ盤であるWe Insistの中のAll Africaは最初に聞いた時から強烈な印象を受けた演奏です。Abbey Lincolnがアフリカの全部族(即ち、All Africa)の呼称を英語でCallし、それをアフリカ語(^^;)でOlatunjiがResponseすると言う形式ですが、その読み上げが実に何とも感動を呼びます。イメージとしては、オリンピックの開会式場のようなところで部族名が読み上げられると、その部族の先頭の人が、現地語で「ここに居るぞ」と挙手すると言うような感じで、それがDahomei, Zulu, Bantu, Masai等々と延々と続いて、アフリカのある意味での偉大さがひしひしと伝わってきます。この手の演奏におけるAbbey Lincolnの「意志を持った声」とでも言うべきものには、抗えない魅力(と威厳)があります。
- Horace Silver Trio and Spotlight on Drums: Art Blakey and SabuにおけるMessage from Kenya
これは、ピアノトリオ盤に唐突に挿入されたArt BlakeyとSabuのデュオで、打楽器のみによる演奏ですが、アフリカらしい雰囲気が横溢しています。上記1のThe African beatと同様に、最初に詩が朗読されます。やはりアフリカ語(^^;)で内容は分かりません。狩猟に出掛けた若者が皆のなかで一番獲物が多かったので、その喜びを歌にすると共に、娘達にアピールしようとしている歌詞なのだそうです。ジャズ喫茶では、歌詞の冒頭で、「踊りもメッチャンコ」と聞こえる部分があって、必ずクスリと微笑みが洩れたものだ、と思い出します。
- African pianoにおけるDollar Brand
南ア出身のDollar Brand の処女作ですが、ブッといピアノで、スィングすることを別に重視しない独特の奏法で、心に残ります。
- The Complete 1961 Village Vanguard RecordingsにおけるSpiritual(John Coltrane)
アフリカ、というのとも違う筈なんですが、何故かNelsonの中ではアフリカと繋がった聞こえる曲及び演奏です。
- African High Life/Solomon Ilori(Blue Note BST 84136)
持っていないのでよく判りませんが、おそらくアフリカっぽい盤のはずです。
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