(Home - Hear Me Talkin' to Ya / BACK)

レコードも、ライブも
  • レコードか、ライブかについてもう少し考えてみた、と言うお話です。
    レコードを聴く
  • レコードの聴き方は色々あります。一人、友達と、ジャズ喫茶で、ラジオで、と言うのが主なところとして、聴き方にも神経を集中して聴く、何となく聴く、他の事をしながらの「ながら聴き」等と色々です。レコードを聴くと言うのと、ビデオで映像と共に聴くというのは少し違います。菅○さんの最近の言でも引用したように、レコードは繰り返し聴きが容易、というか繰り返し聴くものです。そして菅○さんも言うように、聴きながら色んなことを考えてしまう、聴いている演奏のこと、気になっていること、たまたま目に入った情景の事、等々です。ジャズに限らず、芸術はどれも「精神の運動」(夷斎先生ー石川淳)を活発にしてくれるものです。リモコンを操作して音が流れ出し始めると、その後は自由な時間です。大抵はやはりその演奏のことを考えているわけですが、ジャケットをひっくり返したり、ライナーを読んでみたり、目を瞑ってみたり、となります。友人に教えてもらって試してみると良いので時々やりますが、完全に灯りを消してしまって、正に音楽と自分と二人っきり、という聴き方も結構インパクトがあります。異常な大音量で聴く、というのも面白いものです。一人聴きにはこう言う自由があり、どっぷりとジャズに漬かれます。まぁ、余りそればかりと言うのも極端で、人と一緒に聞くこともするべきですが、、、
    ライブで聴く
  • ライブは、大ホール、ライブハウス、屋外のジャズフェスティバルなどがあります。演奏者がいるのは当然(^^;)としても、自分以外の他人と一緒に聴く事になります。シーンとしているとか、ハチャメチャに盛り上がっているとか、掛け声が掛かるとかするので、どうしてもそういう周りの状況が演奏の聞こえ方に色を付けてしまいます。更に、御自身が乗りやすい性格で周りが騒然となるともう立ち上がっちゃうのか、結構真面目な性格で余計な手拍子などが入ると舌打ちしちゃうほうなのか等も関係してきます。中には、PAの真ン前に席があるので突き刺す音に耳がガンガンいって参った、なんてこともあるでしょう。一般的に、ライブは乗らなきゃ損、という傾向が強くて、じっくり聴いたらどうということはないだろう演奏でも、周囲が盛り上がるのが常です。
    ライブでのジャズメンの振る舞い
  • 上記はライブの会場の様子ですが、演奏をするジャズメンの振る舞いに直接に接する事になるのが、何といってもライブの魅力です。ジャズの場合「ヴィジュアル系」というのはそれ程決め手ではないでしょうが、ジャズメンの容貌、演奏時の体の動き、掛け声、アイ・コンタクト等は、なるほどこいつらはこんな風に演奏を展開していくのか、と感じさせます。特に、フリーの山下さんのグループなどは、正直言ってレコードでは殆ど聴きませんが、ライブは印象が強烈で、一体どうなるのかと思っていると急に一致した動きになって、グループの中で「どうだ、参ったか。」、「何の、何の。」、「何にぃまだやるのか、ヨシ、これでどうだ。」「ひゃーっ、参った。」というようなことがあって大団円となるのが面白くて堪りません。もっと真面目に書けば、Bill Evansが体の動きもひそやかに、丁寧に鍵盤から音を拾い上げ、次第次第にピアノに上半身を傾けて、頭(こうべ)を垂れて行く様子と、彼の音楽とに何か共通した印象をお持ちの方も多い筈です。ただし、「その国について偏見を抱く最もいい方法はその国を旅行する事だ」という逆説的なテーゼがあるように、ライブでジャズメンを判った積もりになることの危険性は心得ておくべきです。ライブで見た振る舞いは、その時の姿であることに間違い無くても、いつもそういう姿であるとは限らないんですから。
    特徴的な振る舞い
  • 実体験あるいは映像を通じて記憶にあるジャズメンの、他と際立った特徴的な振る舞いには、例えば以下のようなものがあります。
    • Louis Armstrong (目をむく、ヤッヒャーと歯を丸出しにして笑う)
    • Art Blakey (ソロイストを「Blow your horn!」等と叱咤する)
    • John Coltrane (営々と一時間位はアドリブを続ける)
    • Miles Davis (床に向かって吹く)
    • Paul Desmond (出番でないときは、ピアノにもたれかかる)
    • Bill Evans (ピアノに傾倒、もとい、傾頭する)
    • Eroll Garner (良いフレーズを出したらウィンクする)
    • Dizzy Gillespie (失礼とは思うが、ウシガエルのように頬が膨らむ)
    • Benny Golson (乗ってくると頭の天辺から汗を噴出して顔中が汗まみれになる)
    • Dexter Gordon (なんとも動作がゆったりとしていて、時間の流れが遅くなった気がする)
    • Milt Jackson (アレッ、違っているかな、と首をかしげながら凄いアドリブを繰り広げる)
    • Keith Jarrett (唸る、足で床を蹴る)
    • Elvin Jones (佳境に入ると、エッ、エッとうめきながら涎までたれてくる)
    • Thelonious Monk (帽子をかぶっている事が多く、また他人のアドリブ中に手踊りをする)
    • Oscar Peterson (ピアノなんて誰でも簡単にバリバリ弾けるんじゃないか、と錯覚させる)
    • Sonny Rollins (象の鼻のようにサックスを振り回す)
    • 板橋 文夫 (中腰、肘うち、地団太、コブシ弾きで泣きのフレーズを繰り出す)
    • 今田 勝 (指先で軽く、チョンチョンとしか弾いていないようでいて、良いフレーズが出る)
    • 田村 翼 (いっつもグラサンかけてる)
    • 日野 皓正 (お辞儀付き揺れ吹き、というかバッタ吹きをする)
    • 渡辺 貞夫 (高音の吹奏時に顔の上半分をしわくちゃにして左右に反り返る)
    • 等々ーーーー
    これらの振る舞いは、演奏に関係の深いものもありますが、全く関係の無いものもあります。関係の無い仕草であっても、演奏の印象には深く関わってきます。アノ音を出すときはあんな風に苦しげなんだとか、何だよォ完全に自己陶酔だなとか、だからどうなんだといわれても困りますが、でもそうなんだなぁと納得してしまいます。
    Ray Charlesには参った
  • 昔、Ray Charlesのライブ映画を見たことがあります。エレピを弾きながら歌っていて、David Fathead Newmanや、Hank Crawfordがバックバンドで頑張っているライブでした。ポップスかもしれませんが、相当にジャズっぽいそのライブで、エレピを前にした目の不自由なRay Charlesの動きを見ていて、思わず涙が出るほど感動しました。無論、それ程に演奏が素晴らしかったんですが、その何故か判らずに眼から水が溢れてきた切っ掛けは、Ray Charlesの身もだえでした。キーボードを探り、エロキューションたっぷりに恋の歌を声を絞り出して歌う、その時の何とも形容しがたいRay Charlesの身のよじり方に、不覚にも涙が出てきたわけです。眼が不自由で、Afro-americanで、色々と辛いことがあった筈のRay Charlesの気持ちが、弾奏と声に加えて、そのボディアクションがあった故にNelsonを撃ったんだ、と思っています。その意味で、後になって「Body Language」という言葉が市民権を得たときも、その事を直ぐに思い出しました。恐らくレコードだけでライブ映画を見ていなかったら、今ほどのRay Charlesファンにはなっていなかったはずと思っています。それ程に、実際の演奏者の動きを見ることが大きな意味をもつ場合もあることを、身に沁みて感じている次第です。
    人間としてのジャズメン
  • ジャズは、今のところ人間が演奏しますから、吹奏、弾奏,打奏などの演奏のほかにその人の仕草や掛け声等を含めた、人間としての全体の姿をライブでは目にすることが出来ます。益々気に入る、想像と全く違ってがっかり、へェーこんな面もあるんだという驚き、それらはレコードを聴いていては判りません。レコードを聴いてその人のことを色々と想像するのも楽しいものですが、眼前にその人を目にして「ミスタッチもあったけど、やっぱライブは良い。」と感じるのも楽しいものです。そういう色んなことを見聞きした上で、やはり自分はレコード聴きの方が落ち着けるとか、やっぱライブが一番とか、それはそれで好き好きです。でも食わず嫌いは損なような気がしますから、ライブの味も味わってください。

(Home - Hear Me Talkin' to Ya / BACK)