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うるさいドラムスと、唄うドラムス
  • 当たり前のことかもしれませんが、世の中には同じドラムスでも、うるさいだけのと、まるで唄っているようなのとがあるというお話です。
    ドラムス
  • 技法のことは良く知りませんが、ドラムスは綴りのとおりにまさに複数なのであって、金属のシンバル系、筒に張った皮をひっぱたくトムトム系、足でペタルを踏んで太鼓を打つBドラ、叩く道具としてのスティックとブラッシュからなっています。その上、この人たちはどんな物でも叩いて音を出すのが好きだし、それが商売です。カウベルや、名前も分からない楽器というか「物品」(^^;を叩いて、独自の効果を狙うこともあります。上記のような通常の「ドラム・セット」以外のものには、何かそれなりの区別のようなものがあるらしく、それ以外の物を主に叩く人は、パーカッションと呼ばれます。さらにコンガなんてのもありますし、一人のドラマーでこれら全部を叩いてしまう人も居ます。またBドラは、ロックの人が始めたのでしょうか、皮を片側しか張らなかったり、中に毛布などを詰めてダンプする使い方があります。ジャズの人でも一部でそうする人がおり、それをまた聞く側が「何だロックのドラムなんか使いやがって」等と揶揄したりします。
    大音量
  • ドラムスは、他の楽器よりも普通に叩いても音量が大きいようであり、音が他の楽器にかぶってしまうので、スタジオ録音等では片隅に押し込められてしまいます。Nelsonのような聴き専門の人は、「大体、人が正確にリズムを打つなんて、人間性に反しているよなぁ。」なんて暢気なことを時に言いますが、現実にはリズムも正確に叩けないような人は、ドラマー以前の問題です。それが出来た上で、色々と叩くと、どうしても大音量になるようです。邪魔にならない、つまりうるさくないドラムスは珍しがられる位で、Shelly Manne等はその代表です。実に軽くリズムをキープし、絶妙にスイングするのですが、音自体は他の楽器の邪魔になってはいません。音を出しているタイミングの問題なんでしょう。そういう例外は別にして、兎に角大音量の楽器です。一時期の渡辺文夫さんの直近に陣取ってライブを2時間聞くと、クラブを出てからも耳がワンワン言っていましたからねぇ。
    うるさくないドラムス
  • ドラムスが大音量であるとしても、メリハリが利いて、押し引きが明確であれば、うるさいとは感じません。Elvin Jonesも手数多く叩きますが、うるさいという人は居ないでしょう。Art Blakeyが、スネアの連続擦り打ちであるロールをナイアガラの滝のように結構な音量でやる「Niagara Roll」も、決してうるさくはありません。渡辺文夫、森山威男などもわが国では叩く方に入るんでしょうが、よく聴けばうるさいのではありません。ただドラムの演奏をThunder(雷鳴)とよく形容するように、ココ一番で大きな音が出るのは確かですが、、、
    唄うドラムス
  • ドラムスで唄う人の代表が、Max Roachです。ジャズ史上でも最も有名な唄うアドリブは、Saxophone Colossus/ Sonny Rollins (Prestige)におけるRoachの演奏です。この盤では特に、全編で唄っています。めりはりの良いリズムのStrode Rodeなんかは全曲、アドリブでないところでも唄いっぱなしです。また、売りのMoritatでも5分30秒からのフォー・バース・チェンジ、6分30秒からのドラム・ソロが聞きものです。有名な「ツチャー、ツチャー」という得意のフレーズは、Max/ Max Roach (Argo)の冒頭曲Cruckle Hutの4分8秒から始まるフォー・バース・チェンジの2廻り目、4分34秒辺りやその他の盤でも披露してくれています。新人類の方でも、例はいくつもあります。例えばAt the Blue Note/ Keith Jarrett (ECM)第4巻、4曲目、I Fall in Love too easily + The Fire withinの後半におけるJack DeJohnetteのマレットによるアドリブは、正に唄っています。この人は元ピアニストだからなのかもしれませんが、、Standards Vol. 1/ Keith Jarrett (ECM)の5曲目、God Bless the Childでも、そのままテーマ・メロディに聞こえるドラム・ソロを、8分過ぎから聴かせてくれていましたねぇ。このような唄うドラムスは、当然予め考えられているものではなく、日頃から色んな試行を重ねており、しかもたまたま演奏がそういう表現を必要としている場面になったときに、巧まずして生まれてくるものです。こういうことができるためには、日頃からセットの各要素、そして各部分の音程を良く把握していて、しかも間の取り方を十分に心得ていて、何度かの試行があって初めてできる事なのです。
    会話するドラムス
  • ドラムスで会話する、というのもあります。RiversideからでたSonny RollinsのFreedom Suite(後にShadow Waltzという名前で再発売)という盤があります。この盤自体が、ピアノレス・トリオ盤なのですが、ここでMax RoachとOscar Pettifordが、まるで会話するように話しているのです。数分間にわたるドラムソロと考えてもいいのですが、兎に角会話しているかのようなゆったりとした、しかし至芸といえるデュオです。
    うるさいドラムス
  • これは例をあげると差しさわりがあるので上げませんが、つまり叩きすぎで、メリハリが無い演奏です。例えばアドリブがドラムスの番になったとして、無論自分の番だから何やったって良い訳ですが、テーマの曲想、直前にメンバーがやった演奏等を念頭に置いているとはとても思えない、独りよがりの、言ってみれば「欲求不満をドラムスにぶつけてるだけじゃン」と言うものです。それでもリズム的に面白いとか、「ヒャァ、あんな曲芸みたいな音出るんだぁ」とかいう驚きがあればまだ救われるんですが、ただひたすら時間を音で埋め尽くしている、というのは願い下げです。
    ただし、、、
  • 上記のようにウルサイと感じるのは、Nelsonのような古い人だけかもしれません。だって、夏のジャズフェスでよく見かける光景ですが、ただ叩くだけのドラムソロで、ドラマーが顔を真っ赤にして頑張ると、拍手大喝采となるんですから。多くの方は、兎に角でかい音を聞きたいのかもしれません。「馬っ鹿もん、顔を真っ赤にするだけなら、猿でも出来らぁ。ジャズをやれ、ジャズを。」などと毒付きたくなります。まぁ、全力で叩いてくれているのでご苦労さんと言う気はしますが、音楽的に優れているとはとても思えません。

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