Green Dolphin Street/ Eric Dolphy/ Quartet Featuring Lalo Schifrin?/ (3)
- この「Green Dolphin Street/ Eric Dolphy」に関するメモは前回の(1)、(2)、と(3)の続きですので、先にそっちをお読みくださると幸いです。
帰宅して手持ちを調べたら・・・
- 散歩中に聴いていた「Green Dolphin Street」に面白い引用があったのに端を発して、ほぼ同一内容の国内盤で「On Green Dolphin Street/ Eric Dolphy」(Venus TKCZ79043)というのがあり、そこでは実際に太鼓を叩いたMel Lewisが「西独でDolphyと録音した記憶がある。」と証言しているから、西独録音なんだ、ということで決着しました。
- つまり、「Lalo Schifrin他が参加した米国でのライブ録音」というクレジットはマチガイであり、この盤はVenus盤での上不さんの調査結果により西独録音だとするのが正しいようです。即ちこの盤は、トレーン・カルテットの訪欧楽旅中の録音で、Dolphyは本公演だけでは飽き足らずに、McCoy Tyner(p)、Reggie Workman(b)、Mel Lewis(ds)に付き合わせて、町中のスタジオになだれ込んでやった、深夜のジャムセッションのテープだ、と思われます。
しかし、それはそれとしても・・・
- そういうことを調べているうちに、シフリン盤は今でも広く販売されているので、チャンとした国内外の幾つかの通販サイト及び紹介サイトにおけるこの盤の記述は混乱しています。まぁ、そんな事は発掘モノでは有り勝ちだと言われていますので、コレもその例の一つでしょう。(実は、我がサイトにもいくつかのミスが残っていて、時々利用者さんからご指摘を頂いて、大慌てで修正することがあるので、決して他人ごとではないと自戒の念を新たにした次第です(orz)
Lone Hill Jazz盤のライナー
- この盤の灰色のジャケットと違って、中身の方は黒地に何とも読み取り困難な細かい赤文字で、3ページにわたって詳細なライナー解説があります。そこには、それまでクラシック畑に居たシフリンがアルゼンチンからNYCにやって来て、ドルフィーと出会ったとされています。当時、謂う所の「3rd Stream Music」があり、クラシックとジャズの融合に関心を持ったとあります。そして、「61年にフィラデルフィアで、二人がコンボで録音をした」のがこの盤だ、と書かれています。その話は通説どおりで、筋が通っているので、普通はそれを信じてしまう訳です。この盤を某ショップで保護したNelsonもその解説を読んで信じました。後にこの曲をDAPに入れた時にその盤の情報をID3タグに手打ちしたのが、今回の事の発端です。今となれば、我が不見識を恥じるのみであり、「シフリンとマッコイの区別も付かねぇのかよ!」と言う叱責は、甘んじて受けます。しかし、しかし・・・
例えばある通販サイトでは・・・
- 上記シフリン盤のライナー解説を信じ込んで、この盤を以下の通りに紹介しています。
「ドルフィーもシフリンも、ジャズへの異なるアプローチの間の壁を越えて、新たな境地を切り開こうとした。この録音でも二人は、68分にわたって、新しいサウンドとアイデアを提示しようと試みている。」という署名入りの紹介文が掲載されています。
そのサイトでは更に・・・
- 「ドルフィーとシフリンは、1961年のこの歴史的なセッションで、第一級の演奏を聴かせてくれている。」
として称賛しています。この稿を書いた筆者の出自に興味を持って調べると、米国のジャズメンだといいます。いやまぁ確かに、この盤を聴いただけで、ピアノがマッコイかシフリンかを自信を持って言い当てるのは困難な筈です。ましてこの盤のライナーには、録音時の状況が縷々記述されているのです。とは言え、「綸言、汗のごとし」と言われますが、ネットに一度でもアップしてしまったら後追いの修正は不可能です。(そのことをジャズの個人サイトをやっている我が身に引寄せると、同様に辛いものがあります。)
- その通販サイトには読者のレビューも載っており、以前に国内盤で出た「レフトアローン」盤じゃないかと言うコメントがありましたが。それは3年ほど後の録音だから違います、更にもう一人の読者は、「ハンコックとやったイリノイ・コンサート盤じゃないか?」とカナダ人がコメントしています。つまりその人は、ピアニストをハンコックと聴き間違った訳です。
・・・てなことですが・・・
- その他のサイトでも、女性ジャズ評論家がLone Hill盤のライナーをなぞった内容の解説を書かれています。Dolphyはこの録音時には訪欧中でしたから、コレは間違いでしょう。事ほど左様に、何とも出自がアイマイな盤であり、しかもどなたかが「バードの盤に負けないくらい音が悪い」と書かれているように録音が良くありません。しかし、演奏自体はスゴク良いから困ります。こういう非正規盤、というか長靴モノは、あっさりと「買わない、持たない、売っちゃう」と決めておくのが、ファンの正しい態度なのでしょうか?それとも、録音の由来ではなく、所収された演奏内容の是非で取捨すべきだと一粘りしてみるべきなのでしょうか?・・・「そこをどう考えるかが、物事の分かれ道だなぁ・・・」と考え込まされます。
- 「家路」の引用に端を発して、長々とメモしましたが、未発売の発掘録音にはこうしたことが起きがちなのでしょう。お目汚しではありましたでしょうが、敢えてメモをしてみた次第です。
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