アルコ弾き (Bowing)
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ベースのアルコ弾きは、好き嫌いがあります。「ベースはピチカートじゃなきゃァ」という人が多く、まぁお気持ちは判らないでもないですが、でもここは「アルコ弾き (Bowing)」のセクションです。それから当たり前の事ですが、これはベースに限る事ではなく、ジャズでもヴァイオリン(電化含み)、チェロ等でもやることです。
Yesterdays: from 'Bass on Top/ Paul Chambers'
- 既に書いたように、初めてアルコ弾きに接したのが、Yesterdays: from 'Bass on Top/ Paul Chambers'です。この演奏はピアノがHank Jones、ギターがKenny Burrellと脇も良いので、超有名です。そうでありながら、毀誉褒貶も結構激しい方です。先ず、「何とも、このペーソス溢れる曲にふさわしい、よく唄うアルコだ」と賛美する人が居り、他方で、「こんな鋸の目立てみたいな音が聴けるかぁ。」とケチを付ける人が居ります。両方とも故無しとしないので、まぁ、そうなんでしょう。でもこの演奏は、有名なことは有名なんです。ギターが「ボローン」とやってから後は、全編アルコ弾きです。まぁ、素晴らしい音色とまでは言いませんが、一寸ギザギザが目立つというか、高音が少し混じるだけなんですから、「鋸の目立て」とまで言わなくても良いのにと思います。
アルコ弾きの特徴
- アルコ弾きの魅力は、何といってもその雄大な音です。通常は、胴が大きく共鳴しますし、トレモロや、グリッサンドなんかも出来ます。ピチカートだと、こうは行きません。近年のようにオン・マイクで録音すると、弓の松脂が飛んでいるのが見えるような、実に弦らしい音が聴けます。次に、難点です。アルコをやる人が皆工夫しているのは分かりますが、「リズミカルかどうか」ということになると、どうしても否定的になってしまいます。旋律をやるのに、文句はありませんが、シンコペーションを付けても、どうしても引きずる感じが残ります。これをリズミカルに聞かせる人は居ますから、やはり何かコツがあるのでしょう。元来、フレット無しの楽器ですから、音程もなかなか難しいようです。
何故かハミングが付き物
- アルコ弾きで書き落とせないのが、ハミングとの共存です。古くはSlam Stewartが居ますし、モダン期で有名なのがJoshua Fit de Battle of Jericho: from 'Hawkins Alive At the Village Gate/ Coleman Hawkins'等で知られているMajor Holleyのアルコ弾きです。この人たちは、ベースのアドリブになると弓を取り出して、アルコでアドリブすると共に、同音か、オクターヴ違いのユニゾンでハミングするのです。ユニゾンというのは、それでなくとも求心力があり、しかも音も分厚くなります。ベースの弦と男性ハミングの音色が巧く絡むからなんでしょうか、実に面白い効果が生じて、大人気となった手法です。この演奏はベースの轟音ピチカート一発で始まった後、テナーが唄いまくり、ピアノが綺麗なソロを聴かせた後、5分19秒辺りからユニゾン・ハミングが始まり、7分31秒まで堂々2分余りの独特のアドリブです。ライブなので、聴衆が大いに沸いています。
我等のオマさんだって、、、
- アルコ弾きでハミングとくると、実は日本でも忘れてはならない名録音があります。Play Fiddle, Play: from 'Blue City/ 鈴木勲'がそれです。鈴木さんは、Art Blakeyからバンドへの参加を請われたりしたヴェテランですが、実に粘っこい、いいベースを弾く方です。ここでの鈴木さんは、チェロとベースを使い分けて、素晴らしい演奏を聞かせています。この親しみやすい曲で、のっけから2分47秒まで日本初録音のユニゾン・ハミングをやっています。鈴木さんが、NY時代、Kenny Burrellのクラブに出ていた頃に、Slam Stewartも又この店に出ていて、よくこのユニゾン・ハミングをやっていたそうです。TBMなんで録音が良くって、チェロの胴鳴りが物凄い、という盤です。発売されるや否や、ジャズ喫茶の人気盤になってしまいました。下宿じゃァ出せない大音響で、恐らくはハイエンドのオーディオでこの盤を聴いてしまうと、「ジャズ喫茶万歳」となったのもむべなるかなです。
古野、中山両氏も、、、
- アルコ弾きでは、古野さんの「Hello」も忘れる訳にはいきません。この曲では、ピチカートもやりますが、テーマは数回聴いたライブで、いつもアルコでやっていたと記憶します。また、北の大地の中山さんも、アルコで主題歌をやっています。中山さんの場合は、札幌交響楽団の主席コントラバス奏者に師事してのアルコですから、筋金入りです。
弓の出し入れ
- なお、蛇足ながら、ピチカートでソロをしているときに、思い付いて急にアルコをやろうとしても、弓を取りに行くと演奏が途切れます。このため、胴の横に袋を付けて置いて、サッと弓を取り出すという工夫があります。これは、Percy Heathのアイディアなんだそうです。
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