Those Groovy Yearsとスキーの大回転
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Those Groove Yearsの編集中に「ながら見」でスキーの中継をテレビで見ていると、色々感じることがあった、というお話です。
大回転競技を見て
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回転競技をテレビで見ていて、かなりの望遠レンズで遠写からある程度のところまでズームしていくと、スロープの起伏と旗のセッティングが、選手に色んなプレッシャーを懸け、スキー板と体を巧くひねりながら選手がその困難をしのいで行くのがよく分かります。何人かの挑戦を見ていくと見所が分かってくるので、こいつはアレをどうしのぐのかなぁ、と予期しながら見ていくことになります。選手には選手の意思があるんですが、滑降すべきコースは選手に一定の制約を課し、つまり選手とコースとの間に微妙な相互作用が生じます。これを見ていて、編集中のThose Groovy Yearsについて感じていたことが、不意に想起されました。接写で選手の姿だけを見ていると、コースが選手に課している制約が全体としては、あるいは流れとしては見ることができません。単に選手がストックさばきも鮮やかに旗門を次々とクリアしてるなぁ、と感じるだけです。ある旗門を抜けた後に急に体を反対側にひねるのが何故かは接写では分かりませんが、若干引いた画像だと、次の旗門への体勢移行だと分かるわけです。つまりある程度の距離を置いた画像だと、選手とコースの総体的な相互作用が素人目にもハッキリと見えるのです。ある人のディスコグラフィーだけを見ていては結果としてのその奏者の成長が見えますが、どうしてそうなって行ったのかは、必ずしも見えるわけではありません。その人のジャズの深化をもたらしたものが何であるのか、と考えて行くと周囲のジャズメンがどういう活動をしていたのかも知っておく必要があり、従ってThose Groove Yearsのような作業の意味と目的に確信が持てたのです。
無関係か、関連大いにありか
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Those Groove Yearsの編集中に、不思議なことに気付きました。例えば、John ColtraneのComplete Graz ConcertライブとHerbie Mannのお神楽(失礼)Live at the Village Gateとは相前後して録音されているんだなぁとか、Curtis FullerのBluesette録音の直後にBenny GolsonがGone with Golsonも入れていてコリャ当然だとか、Ornette Colemanの名盤Trio Live at the Golden Circleと、Earl Hinesの名盤Here Comesと、Bobby Hutchersonの名盤Happeningsという一見関係の無い盤が、前後一月も置かないで同時期に録音されているとか。これらはたまたまの事なのか、それともジャズ的には実は因果関係があるのか、どうなんでしょうか。
無関係なんじゃないかなぁ
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ジャズメンは他人の演奏なんかとは関係無しに、自分のジャズを独自に追い求めているんだなぁ、とも思える場合もあリます。最初のJohn ColtraneのComplete Graz ConcertライブとHerbie MannのLive at the Village Gateの例がそうです。前者は練習に練習を重ねて、頭がボーッとしてしまう位になった中で、指が勝手に動いて新しい奏法が生まれていった、なんて程の凄まじい精進があったと言われています。一方後者は、疲れた顔をした聴衆が自分のジャズで破顔一笑、憂さを忘れて談笑し合った帰りに楽屋に寄り、「アンタのジャズで明日も仕事をする元気が出たよ」と握手をして帰った、という冥利に尽きる経験をバネにして、誰もが気軽に楽しめるジャズを、と練り上げた結果の大ヒットです。この両者の演奏は、ある意味でかなりお互いにかけ離れた活動といえるでしょう。
関連が大いにありそうだなぁ
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Curtis FullerのBluesetteとBenny GolsonのGone with Golsonの例は、同一グループの活動ですから関連性があるのは当然です。しかし、このThose Groove Yearsの編集をするまでCurtis FullerとBenny Golsonの個別の活動はそれなりに頭に入っていましたが、リーダーが違うので「殆ど一緒」という認識は不覚にもありませんでした。所が実はこの2枚は、殆ど同時期の、PianoとBassだけが違って他の3人は全く同じという類似メンバーによる、同趣向の演奏であったわけです。そこまで関連が深いとは知りませんでした。更に、Ornette ColemanのTrio Live at the Golden Circleと、Earl HinesのHere Comesと、Bobby HutchersonのHappeningsの例について言うと、1番目と3番目にはかなり関連を感じます。2番目におけるRichard Davis/Elvin Joensの存在は、通常のピアノトリオ演奏にやはり新味を加えています。それでいながらも、Earl Hinesの圧倒的な凄さに対する二人の尊敬とチョッピリの遠慮が覗いて見えます。その意味で2番目の盤の演奏は1及び3という時代の流れの中で生まれるべくして生まれた、と見ることができます。このように見ると、やっぱりジャズの傾向、流れというものは有るんだなぁ、と感じます。
周りも見ないと
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自分がそうだから他人もそうだとは思いませんが、Miles DavisやSonny Rollinsと言う個人個人の演奏の流れなんてものは、ファンとして何年か聴いていれば自然に頭に刷り込まれて、これはアノ頃の演奏だろうなぁ、と見当がつきます。しかし、そのよく知っている筈の偉人達であっても、Milesがこれをやっていたときに、Rollinsは何をやっていたかとなると必ずしも、直ぐに頭の中の整理ができません。Milesがギグの最中に「Rollinsが今居てくれたらなぁ」と呟くのを聴いて、Hank Mobleyがクサッことは有名ですが、Rollinsが彼のバンドにいたのは5,6年も前の事です。しかしMilesは決して昔のRollinsに恋々と拘ってそうこぼしている筈が無く、その数年の間に随所で見聞きするその時々のRollinsの演奏を踏まえて、今一緒に演奏できたら面白い事が一杯できるのになぁ、と感じたからに違いありません。
演奏活動はギグが中心
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これはレコードか、ライブかでも書いたことですが、ジャズは演奏活動が中心にあり、録音活動はそのジャズメンの活動の一部しか反映していません。一人でジャズをやる人もいないわけではありませんが、バンドあるいはリズムセクションと一緒にジャズをやるのが普通ですから、そこには必ず相互作用があり、その中で刺激しあい、物を教わるということは、通常のギグにおいて起きている事です。日常の演奏活動が、ジャズの伝統や、進展と言うのがおかしければ変化あるいは深化をもたらすのだと思います。ココ一発の録音のために集中出来たので思いもよらない新境地が拓けたという場合が、時にあることを否定はしませんが、それも日頃の活動の積み重ねがあってのものの筈です。日頃の活動とは、練習またはライブのギグです。録音セッションは、ハレとケで分ければ、年に何度かしかない「ハレ」の機会に違いありません。
ディスコグラフィーは、一次元の線
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普通のディスコグラフィーは,一人の人の録音された演奏活動を時系列で追ったものであり、その人の成長、変化の過程が分かります。しかし、サイドメン迄記述した網羅的なディスコグラフィーをじっくりと読むのでない限り、その人がどういう相互作用を他のジャズメンとしたので、ある特定の録音物が残ったかという因果関係迄は読み取れません。また、誰それのギグが人気でジャズメンが皆聞きに来た、という話を聞きますが、ジャズメンが聴衆の一人となって、「Birdが今やってるビバップっていうのは凄いね」とか、「今のBill Evans(別にRon Carterでも良いんですが)の聴いた事も無いコード選択はスッゲーなぁ、あんな風にハモれるんなら、オレの曲ももう少し工夫すると面白くなりそうだなぁ、今度練習しようョ」なんて会話をしただろうことは想像に難くありません。このようにジャズメンも社会的な生き物でしかありえず、一定の環境の中で成長していくわけです。オイ、あんまり細かい話はするなょ、と言う声もありましょうが、ある演奏家が好きならその生きざまをとことん知りたい、という方は少なく無い筈です。
Those Groovy Yearsによる面(2次元)での把握の試み
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Those Groovy Yearsでは、関連する色んな盤の情報も書き込んであります。主として同楽器の奏者の録音や、その時期に発表された時代を象徴する話題作、ヒット盤です。一見それらの記述は介在物であり、邪魔な情報です。御用とお急ぎの方のために当該奏者あるいは楽器の盤だけをゴチックにしてありますから、それを拾い見すると、取り敢えずの用は足ります。しかし、もっと色々と考えてみたい人なら、表をじっくり前後を行きつ戻りつ眺めていると、何か所かで「オヤッ」と思えるところがある筈です。それがこの表編集の本来の狙いです。経緯というのは、タテ糸とヨコ糸というのが語源だと思いますが、それが絡み合った織物としてジャズを捉えることが大事なような気がします。Those Groovy Yearsによって、ジャズを織物としてみながらも、ある特定の糸がどのように織り込まれているのかを理解するToolにならないものか、と試みを続けてみます。
まだ「一丁上がり」の域には達していない
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とは言え、まだこれらの表は編集が不十分です。本当に必要な情報のみが記載され、重要な情報に抜けが無いというレベルには、まだ達していません。しかし、このようにジャズを面で捉えて、おぼろげであっても全体像、個々の事象の時間的な関連について知ると、もっとジャズが楽しめるのではないかと思って、もう少しこの編集の試みを続けてみる元気が、このスキー競技を見ていて出てきたのです。
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