CBSがMiles Davisに目を付けたのは50年代初め前後からのバードによる抜擢後直ぐだったようで、ライブでの評判も良く、特に55年のNewportジャズ祭でよくある「取り敢えずビッグネームの皆さんに集まって貰いました」という、All Star Jam Sessionの演奏をリードしたことが大評判になりました。先ず、アノDuke EllingtonがMCを若々しい声で引き受けてくれて、Zoot Sims、Gerry Mulligan、Thelonious Monk、Percy Heathといった人気ジャズメンの面子紹介をしてくれました。そんな大物たちを向こうに回してMilesが半時間くらいの出番の機会を得たんですが、その様子はここに音声動画としてアップされています。その時やった「’Round Midnight」(この動画の9分半頃から)他3曲の演奏が、CBSの幹部になっていたGeorge Avakianの兄貴に注目されて、Milesの引き抜きが真剣に検討され始めと言います。
作曲者のモンクとの顔合わせなので・・・
このジャズ祭の半年前に録音された名盤「Bags Groove」の録音はクリスマス・セッションとして有名で、Milesが自分が吹く裏での伴奏をしないでくれ(Lay out)と大先輩のMonkに断る様子が、そのままテイク中に残されていました。しかし、半年後のこのジャズ祭でのMonkは、以前のゴタゴタが頭をよぎったのか、独特の持ち味を抑え気味にしながらも、Milesの伴奏をずっとし続けているのが聴けて、これはこれで面白いですね。
Gil Evansの編曲が気に入って・・・
「’Round Midnight」の演奏は、その後Milesのオハコになりますが、それは皆さんご存知の斬新なアレンジの賜物です。その前年に出会った編曲者のGil Evansがピアノで弾いて見せた、サックスのオブリガードと前テーマ終りのブリッジが目立つ、斬新なイントロにMilesは惹き込まれました。彼は、そのアレンジを完全な耳コピで覚えてしまい、自己のクインテットの面子に教え込みましたが、このジャズ祭では打ち合わせ無しの「All Star Jam session」ですから、そんな凝ったことはしていません。