「Equinox/ Dwight West」再々訪(1):承前
- 「John Coltrane」のアトランティック期の掉尾を飾る名盤となった「Coltrane's Sound」盤に収録された「Equinox」は彼の曲だと直ぐ分る体臭が特徴的な曲です。多分数回にわたるだろうメモを始めるにあたって、今回のメモは、後にDwight Westがヴォーカライズしたトラックのメモを始める前に、先ずはトレーンの原録音についてメモします。「再々訪」としたのは、以前にもココにメモしたことがあるからです。
- 標題になった「Equinox」とは四季を分ける用語ですが、冬至や夏至と異なり、昼夜(nox)がほぼ同じ(Equi)長さになる春分と秋分とを指す言葉です。春分は「Vernal Equinox」、秋分は「Autumnal Equinox」と区別されますが、後者の秋分の日はトレーンの誕生日でもあります。このYoutubeの動画でも聴けるように、単純なブルースなんでしょうが、トレーン臭が横溢した曲想ですから、ファンならのめり込む曲の一つです。
- 時まさにマイルス御大の元から飛び立たんとしていた、今を去ること60年近く昔、1960年のアトランティック録音です。この曲はMcCoyやElvin等のメンバーにとってスタジオで初見した曲ではなく、その年の春には既にNYCの「Jazz Gallery」で演奏していました。また、夏には故郷であるフィリーの「Showboat」でのギグでもやっており、この都合2回ほどのギグでの演奏は私家録音のテープが残っています。そして、秋には西海岸のモンタレージャズ祭に出演して、ここでもこの曲を演奏していて、これもまたテープが残っています。
- 10月下旬、トレーンのグループは今も愛聴されて止まない「My Favorite Things」等を数日間、スタジオにこもって録音しました。色んな曲を、何度もテイクを繰り返しながら自分達の路線を確認して行った様子が、彼のDiscographyに残るテイク数の多さを見ても良く判ります。この時に、以前のライブ録音での出来が気に入らなかった「Equinox」についても探求が進められて、練りに練った上でのこの時の録音で仕上がりとしたようで、後に「Coltrane's Sound」として発売されたLPで、このスタジオ録音のヴァージョンがマスター・テイクとして発売されました。
(同じ手法のデザインによるスティット盤)
- 「The Night Has A Thousand Eyes(夜は千の眼を持つ)」を冒頭曲とするこの盤は、名社長、Nesuhi Ertegunが画家のMarvin Israel(両人共にユダヤ系)を起用して、「ジャズメンのポートレートにパレット・ナイフで絵の具を乗せる」と言うデザインでも話題になりました。このデザインでは「Stitt Plays Bird」盤も有名です。この盤での「Equinox」は多くの人の印象に強く残ったと見えて、後に同社の創立60周年記念を記念したジャズのコンピ・ボックス5枚組「Hommage a Nesuhi」にも収録されています。
(「Hommage a Nesuhi」)
- 以上が、名曲「Equinox」が世に出た時の様子のメモです。今年の「Coltrane Day」(7月17日)には、一関ベイシーに限らず色んな所で彼の業績を偲ぶ催しが行われて、中にはちゃんとこの「Equinox」のLPをかけて聴かせた所もあったに違いありません。
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