Real Gone Jazz社のアンソロジー(2)
- 英国のReal Gone Jazz社が300種以上も出しているパブリック・ドメイン音源を使ったボックス物に関するメモの続きです。同社やこのアンソロジーの全体的な話は、すでに(1)にメモしました。今回も、「The Prestige All Stars Seven Classic Albums」を例にとって話を進めます。
- 前回も触れましたが、このアンソロジーのシリーズでは一貫してジャケットは集合写真しかありません。コレは前記したように、音源はパブリック・ドメインで著作権保護の対象ではなくなったのですが、こういうアンソロジーとして商業的に市販する物に個別のジャケットを掲載するには、それなりの手続きが要るので、その手間を省いたということでしょう。ここでは、7枚のLPがバラ撒かれていて、良く見ればどういうLPだかが何となくというか・・・判る人には判る程度に写っている形で、一枚の集合写真に仕上げられています。これが売り物として親切だとは思えませんが、見場良く掲載するとしたら、「その手間賃が別途要るから、売値千円では収まらなくなるので、我慢しなよぉ・・・」ということでしょうね。見れば判るように7枚分の音源がこのアンソロジーには収録されていて、その内容の表示は2段階でなされています。
アルバム名と参加ジャズメン
- 上記の写真がこのアンソロジーに収録された7枚のアルバム名と参加ジャズメンの一覧で、前回示したこのシリーズの全リストと共に、リーフレットになってプラケに入れてありますが、それぞれのライナーノート等はありません。コレは前回も書いたように、ライナーを転載するには筆者と交渉する等で、一手間余計に要るので、ネグったということでしょう。プラケの外側にジャケットの集合写真、中にこの上掲の写真があれば、何が入っているかは自明だと言う考え方です。このアンソロジーのシリーズでは、ダブルのプラケを採用しているので、最大で4枚のCDが入ります。この時期のPrestigeの30cmサイズのLPは、短いと30分くらいしか音は入っていないので、CD一枚にはほぼ2枚分のLPが入る勘定です。このボックスではCD4枚でLP7枚分を入れているから、気楽の金ちゃんということになります。その7枚は、上掲の通り「All Night Long」、「After Hours」、「Interplay for 2 Trumpets」、「Olio」、「Earthy」、「All Day Long」、「Vary Saxy」です。すべてが50年代末の録音と表示されていて、今日現在で録音日から50数年が経っているので、著作権保護がかからないわけです。
収録曲名
- このアンソロジーの4枚のCDに収録されている曲は、全部で32曲あり、それらはプラケの表4と言えば良いのか、裏に記載されているだけです。ジャムセッションですから、曲によって演奏に参加するジャズメンが入れ替わりそうなものですが、そういう細かいことまでは判りません。それも、この曲名リストと、中にあるリーフレットとを比較するだけの根気がある人だけが出来る事で、ふつうのCDだとそういうこと全部が一か所で一覧できるものですから、この辺は手抜きです。ジャムセッションですから、同一楽器が複数本出てくるので見分けがつきませんし、まして、「Interplay for 2 Trumpets」のようにトランペットが2本、「Vary Saxy」のようにテナー・サックスが4本出て来て、入り乱れてソロを取り合っていても、当然のことながら、ソロの順序などは判らないのです。また、2番目のCDで「After Hours - 1957 Cont.」と表示されていますが、これは一枚目のCDに入り切らなかった残りから、2枚目が始まるということです。つまり、元盤を聴いている積りでも、CDが満杯になれば容赦なく次のCDに移るのです。「そんな些末なことを・・・」と仰いますな。大名盤の「Waltz for Debbie/ Bill Evans」を採り上げるまでもなく、制作者は各曲の流れを重視して各曲の収録順を練りに練っているのです。全体を通して、あるいはせめてA面、B面・・・と各面毎くらいは続けて聴けないと、オリジナルの雰囲気は壊れるのです・・・ということで、そういう辺りのことを気にする方は、この手の廉価版ボックスものには手を出さない方が良いでしょう。
以前に紹介したものも・・・
- このアンソロジーは、「Prestige All Stars」と銘打っていますが、有り体に言えば「ジャム・セッション」です。例えば、「All Night Long」と「All Day Long」盤は、標題が似通っていることからも判るように、Kenny Burrellに色んなジャズメンが絡むジャム・セッションで、このサイトでも以前取り扱いました。それは「Twofer」という一時期どこのレーベルもやった、LP見開き2枚組の再発シリーズについてメモした時のことです。
(何とも懐かしい、「マグリットさん御免ね」ジャケット(^o^) その中で、Prestigeものを30枚ほど採り上げた時に、「All Day Long and All Night Long/ Kenny Burrell」という2枚組見開きジャケットを紹介したことがあります(上掲)。
このアンソロジー中の7枚の中にも、Nelsonが持っていない盤があります。そういう音源を一度は手元で聴いておこう・・・という人のためにも、こういう廉価版のアンソロジーは便利です。何と言ってもこのアンソロジーは、CD4枚組物なのに千円札一枚で手に入るんですからね。
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