(2):「Classic Quartet」 John Coltraneの「The Complete 1961 Village Vanguard Recordings」
- 「The Complete 1961 Village Vanguard Recordings」の4枚組ボックスに関するメモの続きで、(2)「Classic Quartet」です。メモの前編は、(1):現代モダンジャズの原点です。
「John Cotrane's Classic Quartet」
- John Cotraneがリーダーを務めるテナー・カルテットは、ピアノがRed Garlan、McCoy TynerそしてAlice Coltraneである場合が多く、各々による録音が残っていますが、その中でも「Classic」という呼称が付けられているのは、John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)による60年代前半のカルテットでしょう。この時期には「トラ」として、Reggie Workmanや、Roy Haynes等が準メンバーとして入ることもありましたが、大体はこの4人でやっていました。「Classic」という呼称は、正統的なとか、古典的なとか言うのが普通の用法ですが、この場合の「Classic Quartet」は「決定版」という意味で使われています。
決定版カルテット
- このカルテットの演奏を聴くと直ぐに判りますが、たった4人でやっている演奏なのに、(誇張した言い方になりますが)まるでオーケストラの演奏を聴いているかのような、重層的な音群の分厚さに圧倒されます。単に4人で演奏しているだけとはとても思えない、音と音との重なりが時期を追うに従って複雑になり、息が合った同士による精妙なやり取りには、いつも唸らされます。NelsonがColtraneを聴き始めるきっかけになったのは、62年に発売された「John Coltrane Quartet」(Impulse MCAD5883)でした。そして「Crescent」(Impulse A66)、「A Love Supreme」(Impulse GRD155)と一気にのめりこんで行ったのは、新入社員となって気が張っていた頃だと思います
「Jazz Greats」の揃い踏み
- Coltraneの黄金カルテットの面子を見ただけで、John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Elvin Jones(ds)と誰もがジャズの偉人と認める人が3人も居ますし、Jimmy Garrison(b)だって自分のリーダー作を何枚も持つビッグ・ネームの一人です。McCoy Tynerと、Elvin Jonesの二人は、御大がClassic QuartetにPharoah SandersやArchie Sheppを加えた時にはそうでもなかったのですが、何を思った(トチ狂った?)のか、1965年頃からAlice Coltrane(、もといAlice McLeod)をピアノに、更にはRashied Aliをドラムスに加え始めたのには、我慢の緒が切れたのです。この二人の参加が常態化し始めると、McCoyとElvinは遂に御大を見限って退団し、その後は自己名義で数々の名盤を発表しました。
McCoyとElvinがColtraneと袂を分かつ
- McCoy Tynerの場合は、トレーン直系のジャズの伝道者として、分厚く、力強い音の洪水で聴く者を圧倒するピアノ・トリオでの活動を基本として、管楽器を入れた小編成に加えて、ビッグ・バンドによるジャズでも、かなり耳目を集める活動を繰り広げました。Elvin Jonesも、持ち前のポリ・リズム系のドラミングを発展させると共に、御大のジャズのもう一方の伝道者として、多くのファンを唸らせました。確か、Sonny Stittがらみのことだったと記憶しますが、捜査の手が及んで切羽詰ったヤク中さんが、彼のトランクにやばいブツを隠して逃げたか何かで、滞日中に検挙されてしまい、2,3年日本に居ることになってしまったことがあります。
Elvin導師と日本におけるトレーン・ジャズの勃興
- 幸いにして、その時期に日本のジャズメンたちが、トレーン流のジャズの演奏法についてエルヴィンに教えを直に請うことができたので、70年代前後に日本でもトレーン流を消化したジャズメンが雨後のタケノコのように輩出したのは有名な話です。
(長くなるので一旦ここで切って、(3):「ColtraneとDolphy」では、John ColtraneとEric Dolphyの語り口の違いについて、円生と志ん生とのそれに似ているという珍説を披露します。
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