「コンプリート・ジャズ・コミック・コレクション」
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「コンプリート・ジャズ・コミック・コレクション」は、コミックの名門 双葉社が1992年に刊行したもので、「Super Jazz Comic Vol.1」と副題が付いており、正にジャズファンの必携の書です。200ページ強で、定価1300円でした。
編集意図
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山形出身で早大漫研卒のフリー漫画家、ラズウェル細木さんは、Silver、ParlanそしてSheppが好きという方らしいが、それ以上詳しい事は知りません。その人が、好きなジャズをネタに、コミックに仕上げたということでしょう。巻頭言にいわく、「ジャズマニアが主人公である、このような漫画が単行本一冊分もたまったことは作者自身もオドロキである。ただし、事実は小説よりも奇なり、とはよくいったもので、漫画よりも奇なるコレクターの方々がこの世にはまだまだ多数実在する。そうした人を残らず描ききるまで、このジャンルは永遠に不滅である。よってラズウェルも不滅である。」
構成
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先ず冒頭に「ラズウェルズ・コレクション − 私の愛聴盤」というジャケ・解説付きのリストがあるのが、面白い。コミック本の出だしとしては、実に爽快。リスト自体は110枚に及び、最初が「Quartet, Quintet, Sextet/ Lou Donaldson」であり、最後が「エックス・バー・トリオ/ クリヤ・マコト」であるから、「大体の事は分かってください」とも読めます。この後に本編、即ち26話のジャズ・コミックが続きます。これが全く、「自分のことが漫画になっている」と読者に思わせる話ばかりで、「少なくとも一つ位は憶えがある話題でしょう、そこのアナタ。」 題材はコレクション関連で、例えば「廃盤狂騒曲、またはエサ箱の前の懲りない面々」といった題で想像が付きますが、そこのヒネリ具合が腕の見せ所ということです。「油断大敵」というお話では、金が足らずに欲しい盤を歌謡曲のエサ箱に隠したが、後刻代金を工面して舞い戻ってみると、見事に抜かれてしまっていた、という失敗談であり、正に別項の「妙なツッコミは止めてくれぃ」を地で行くお話です。そして終わりに、キーワード事典なる不思議なものがまたまた付いています。兎に角、恐らくは日本最初のジャズ・コレクターもののコミックということで、機会があれば必ず読まれるべきものです。
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