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「オーディオ日曜大工:スピーカーシステムの設計」

  • 「オーディオ日曜大工:スピーカーシステムの設計」は、音楽の友社が刊行した自作志向の人向けの入門書です。同社では、長岡氏を著者にしたスピーカー自作本を20冊近く出していますが、これはその嚆矢に当たる本で、「実用オーディオ講座」の中の一冊です。刊行は昭和51年(^o^)と古く、今見ると、もう既に独立している愚息が落書きをして読めなくなったページもありますから、買ってから30年以上も、経つンでしょう。別のところにも書きましたが、落書きをしたご当人が小学校高学年の時に、この本を読んで一念発起し、フォステックスのFE203を使ったスリット・バスレフの箱を作ったんですから、今日(こんじつ)の感があります。この本が我が家では重用されたことは、間違いなさそうです。なんと今や考えられない、850円という価格です。
    構成
  • この本の主たる内容は、以下のとおりです。
    • ユニットとエンクロジュァ(空振り現象、バッフルとエンクロージュァ、ユニットの性質)
    • エンクロージュァの設計(設計の基本、密閉箱、バスレフ、ダンプト・バスレフ、スタガード・バスレフ、特殊なダクト、ドローン・コーン・システム、バックロードホーン、ASW、ユニットの複数使用、2ウェイ化の研究)
    • 設計実例集(市販ユニットを題材にした、上記各種エンクロージュァの設計手順、図面)
    • 設計と製作の手引き(フルレンジユニットの規格表と実測インピーダンス特性)、主なツイターの規格表、エージングについて、計算式一覧)

    巧い惹句(じゃっく)、丸め方
  • スピーカー工作は結構色んな方がやりますが、必ずしも数式が好きな方ばかりではないわけで、この本、というかこのシリーズ全体がそうですが、数式を最低限に抑えながらも間違ったことは言わないという至難の業を発揮しておられます。これは、長岡さんが正統な工学教育を受けた訳ではなく、シナリオ・ライターなどの仕事を経験された中で培われた文章作法だと思います。また、そういうマスコミ関係の仕事もされていたせいでもあるのでしょうか、人の注意を惹き付ける物言いが身上であり、また得意でした。例えば、「ダクトの共振周波数の求め方」等は、類書にもありますが、理屈がそうであるとして、長岡さんはそれを後生大事に鵜呑みにしてはならないことを、噛んで含めるように解説しています。数字に捉われるのではなく、全体とのバランスや有効数字の桁数の取り扱いにおいて、勘所を心得た丸め方が大事であり、設計例の詰め方において、それを実践的に示しています。その辺のところは、「長岡さんを悼む」にもメモしましたので、興味のある方はどうぞ御覧下さい。
    気に入ったのは
  • 質の高い設計例としては、スリット・バスレフ、スタガード・バスレフ、38センチバックロードホーンなどがあります。特にバックロードホーンの設計例は、この人らしい設計の詰め方・手順が存分に発揮されたもので、誇張して言えば、「一世を風靡した」ものです。機種は違いますが同じ狙いで自分なりの設計をして、自作した時に参考にしたのが、20センチ(FE203)を4発使ったJIS箱大システムは、例を見ない傑作だと思います。複数ユニット、直並列使用に置いて心がけるべきことが詳細に述べられています。また現実には大変重要になる、入手可能な木材と設計との調整(追い込みというか、妥協というか)の仕方と手順の判り易さは、この人ならではの世界です。
    この本の後、、
  • この本の後は、2連発のバックロード・ホーンや、例のスワン等の世界に入っていかれました。一部は聴いたことがありますが、Nelson個人としては、あまり奇態な外見の物を好まないので、遠慮しました。しかし、何と言っても長岡氏設計の高能率システムの元気溌剌とした音は、言い方を変えれば「暴れ放題」とも言えるほどで、他の方が足下にも及ばない独壇場でした。

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