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Technics EAS20F20
  • Technics EAS20F20 Technics 8PW-1Technics 左図に示すEAS20F20は、Technicsがユニット生産を止める直前、1980年代末から90年代初めまで作られた20センチフルレンジです。Technicsには、20センチ・ユニットに名器が多く、同軸構成の8PX-1、そしてダブルコーンの8PW-1、通称ゲンコツ(右図参照)がありました。ゲンコツというのは、ダブルコーンの真ん中に黒い球を設置して、高音を程よく拡散していたので付けられたアダナです。Technicsはその後も、5HH17や、10TH1000といったツイターの逸品を製作していましたが、上記したようにユニット生産の最終期に出たのが EAS20シリーズです。同シリーズはフルレンジなので「EAS20F」という型番を付けられており、更に10,20,100と3つの系列に分かれていて、それぞれに10センチから20センチまで数種のユニットがラインアップされていました。いずれもコーン紙の真ん中にアルミドームが直結されていて、これが強烈な高音を放射します。「10」を標準とすると、「20」はマグネットを強化した低音重視型、「100」は同じマグネットでむしろ大入力に堪える設計という商品構成でした。そして、その中のEAS20F20を何と8本も買った馬鹿がいたのです。
    EAS20F20
  • Tehnics EAS20F20この20F20フルレンジの諸元は次の通りです。当時の自作派仲間では、20センチではフォステクスの「208シグマ」と並んで、20F20が最強力なユニットとされていました。この時期、フォステクスと張り合って出した製品で、大メーカーであることを生かして、当時製作可能な最大サイズ、1.4キロのマグネットを20センチユニットにつけた暴挙に、賞賛とあざけりが相半ばしたものです。
    • 磁束及び重量:13,000Gauss、290,000Maxwell、4kg
    • 最低共振周波数:32Hz (Qoは0.17)
    • 等価質量(Mo):13.6gr
    • 能率及びインピーダンス: 95dB、8オーム
    • 最大入力: 70W

  • 身分不相応に強力な磁気回路を持つユニットの例に洩れず、中高音は暴れ放題という感じですが、Nelsonはこれをウーファーとして使うので、高音の遮断さえしっかりやれば暴れは難点にはならず、むしろ元気な低音となります。実際には、数百Hzでクロスしましたが、やはりかなり急に切らないと中高音が洩れます。しかし、モルトプレーンというウレタンに似たエッジは柔らかく、コーンを殆ど束縛しないようで、実に深々とした低音が楽しめました。テストCDをかけると、25Hz位からレスポンスがあり、家鳴り鳴動させてはカミサンや子供達に「また始めたな」と白い眼で見られたのも、懐かしい思い出です。
    仮想同軸8本使い
  • Tehnics EAS20F20 このEAS20F20を90リットルの箱に2本づつ入れて、片側2台、左右合計で4台作って、仮想同軸構成にしたシステムを数年間使いました。左掲のカタログでも判るように、メーカーでも「片側4台のトーンゾイレ構成」という使い方を使用例に挙げていました。何かのことでテクニクスのサービスに電話をしたら、実際に製作に関与している技術者が対応してくれ、EAS20F20を8本使う時の要領などを聞いたところ、テクニクスのスピーカー部門最後の踏ん張りでこれを作ったことを嬉しそうに話してくれました。そして、「片側4本、実に良いですヨ」と言ってましたから、工場でも試作・試聴はしたのかもしれません。片側上下2台の間に挟んだJBL 2426ドライバー + 2370ホーンで中高音、ヤマハ0506ツイターで超高音を受け持たせた全体の仕上がりは、弊社比(^^;ですが、抜群でした。長岡式の計算で上下の箱のfoを、44Hzと32Hzとに振り分けたのも功を奏しました。この時期、デバイダーはパッシブの12dB/Octのものを自作で組んでおり、マルチ・アンプ・ドライブの魅力に圧倒された時期でした。モノの本を見て双信やビタQのコンデンサー、銅箔スチコン、スケルトン抵抗等、部品交換も楽しんだものです。オシロと発振器を中古で買い込み、しっかりと遮断特性を確認するなど、音楽よりも音を聴くのを楽しんだ面も否定できません。色々とその後のコヤシになることを経験した気がします。3体に分かれているので、それぞれの箱は40キロ程度に納まりました。ですから、立て込みも容易で、左右の間隔や内振り角度などの調整も楽でした。
    4本並列で、100dB超の高能率、38センチ相当のコーン面積
  • Nelsonの場合も、95dBと高能率なこの8オームのユニットを、4本並列した2オーム使いです。2本並列でほぼ3dBは能率が上がりますから、全体の能率は軽く100dBは超えていた筈です。20センチ4本で38センチ相当のコーン面積がありながら、等価質量は60g以下(13.6 x 4= 55)です。JBLの名器、130Aウーファーで70g、後の136A、4343/44等で使われた2235等では倍の重さ、約150gですから、先ず普通では実現不可能な、軽快な動作です。ユニットのfoが、もともと32Hzと低いので、実によく低音が出たものです。右下の図は、別途4発密接設置を試みた時のバッフルで、これはとても持ち上がらないくらいの重さがありました。Tehnics EAS20F20
    エッジがボロボロ
  • ある時、システムの点検をしていて、EAS20F20のエッジに割れを見つけてビックリしました。元々は黒いエッジが、灰色に見えるほどに劣化しており、全てのエッジが大なり小なり破損していることが判りました。これが話に聞く「合成エッジの劣化か」と気付き、早速エッジ交換の方法について調べました。そして、エッジの補修は「それなりに出来はするものの、どうも本来の特性には戻らないらしい」と判ったので、泣く泣くこの8本のユニットは廃棄することにした訳です。製造中止後3年は経った今でも、アキバではこれを販売していますが、「在庫中もエッジの劣化はある筈だ」と、もう一度8本も買い直す気にはなれなかったのです。それに、正直な所、直ぐに、次の、全く別のシステムを作る気になっていましたが(^^;)。

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