JBL L200 Studio Master (3)
- JBLの「L200 Studio Master」(その3)は、同社のプロ用機器との関係について整理しておきます。これ以前のメモは、ここにあります
先ずは、「Professional Series」の話から、、、
- 「Paragon」や「Olympus」で一世を風靡したJBLは、1970年代に入って、AltecやTannoyの牙城であったプロ用モニターの市場に満を持して参入しました。時あたかも、業界がこぞって、高耐入力化・低ひずみ化・広帯域化・高指向性化を目指し始めていたので、技術力に自信があった同社は、格好の参入機会と考えたのだと思われます。手始めに「Olympus」そのものと言える「C50SM/S7」を発売したのですが、結構手ごたえがあったようです。これは、「Olympus」で使用したC50キャビネット入りのS7システムを、モニター風の箱に移し変えただけのものです。搭載ユニット(LE15A+ LE85+ HL91)も、後に展開するプロ用のものではなく、民生用のLE15A等を、型番も含めて、そのまま使っていました。さらに、キャビネットは、後に採用するバスレフ式ではなく、「Olympus」で採用していた密閉式を踏襲していました。この「C50SM/S7」の世評が悪く無かったんでしょうか、同社は直ぐに本格的な第一号機である「4320」を市場に投入しました。これが、後に名機とまで呼ばれるほどの支持を獲得し、一躍市場を席巻したのです。
「4320」と「4325」
- 右掲のカタログ写真では、この両者の写真は共通の表示となっていて、そのとおりに外観もユニット構成もほぼ同じです。グレーのシボ塗装のものと、ウォールナット仕上げのものの両者が、写真では並んでいます。「4320」は、その原型であるOlympusと同じく、ウーファーが38センチ口径の「2215B(LE15A相当)」、ドライバーが1インチ・スロートの「2420(LE85相当)」、そしてホーン・レンズが「2307(HL91相当)」です。LE85は、LE175と違って磁気回路が強力であり、そのままでもツイーターの必要性を特に感じないので、このシステムの2ウェイという選択は妥当でした。ただし、上記したように箱がそれまでのような密閉ではなく、バスレフになっていました。数年の間に進歩した技術の裏づけを得て、プロ用としての低域の大音量再生に威力を発揮したようです。このモデルは、全体のバランスが良かったせいもあったのでしょう、世界中で標準モニターに採用されるようになったのです。
- そして、その「4320」に若干の変更を加えた「4325」は、一年遅れで発売されました。ただし「4320」はディスコンとならず、両者は並行して発売されていたようなので、JBLは用途による使い分けを勧めていたようです。先代の「4320」が好評だったことを踏まえて、「4325」を発売するに当り、これに民生用の意匠をまとわせた「L200 Studio Master」を同時に新発売した、という流れのようです。これで、話が最初に戻るわけですが、このメモで採り上げている「L200」の誕生の影には、プロフェッショナル・モニターの展開があったわけです。
- この「4325」では、機器構成は「4320」とほぼ同じで手を付けず、クロスオーバー周波数だけを800から1200ヘルツに上げています。これは、800から1200ヘルツ近辺の音についてもう少し量感を与えるためであったとモノの本には書かれています。ウーファーが38センチでは、その辺を出すのには無理がありますが、後記する工夫も相まって、無理に出す苦しさよりも、音に加わる厚みの方を重視したのでしょう。そして、この「4325」の箱だけを家具仕上げのものにしたのが、本稿の主題である「L200 Studio Master」なのです。
- 次に、このシステムを構成する機器について、具体的に述べていきます
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