NEC A-10X
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NEC A-10Xは、「リザーブ電源方式」という形式を売り物にして出たプリメインアンプです。手元の領収書が1990年の日付ですから、80年代末に発売されていたものと思います。このA-10は、シリーズ物として6、7機種出た人気シリーズで、電源という、なかなか宣伝文句にならない点を強調した地味ながら、正攻法が功を奏したシリ−ズでした。強力な電源を謳うだけあって、さすがにどっしりとした、実質本位の音がするので、ジャズ・ファンにとっても強い味方でした。A-10Xはそのシリーズの、恐らくは最終モデルだった、と思います。同時に、「M1000」とか記憶する弟分のパワーアンプも発売されており、A-10Xを横半分に割ったようなサイズで、数万円の値付けがされていました。
BTL駆動で320W
- A-10Xは、両チャンネル出力が60W程度と控え目な設定ですが、電源が強いと豪語するだけあって、BTL駆動にすると出力が320Wもあり、M100で0も100W以上が絞り出せました。両者共に、マルチ・アンプ用に使うには絶好、というもので、結構人気が出ました。「A-10X」、「M1000」共に、現在でもネットで話題になることが多い往年の名器です。その後、NECがピュア・オーディオから撤退したので、この製品も直ぐにディスコンとなりました。熱烈なファンがおり、また素性の良いアンプだったので、社内ヴェンチャーの「Authentic」という会社が、このシリーズを引きつぎました。そして、基本的な設計思想はそのままに、御影石ベースにするなどの手を加えて、4,50万円クラスのアンプとして何年か売っていましたが、これも、もう現行品は無さそうです。「A-10X」の詳細を知りたい方は、別にメモしましたので、そちらをどうぞ。
スパルタンな設計
- 別記したように、宣伝がし難そうな並の仕様と数値で、むしろ、まったくアマチュアの発想をプロが取り入れたような凝り方を特徴としています。既存メーカーからは、「まぁ、後発メーカーで、始めたばっかだから、リキ入ってるのは判るけど、あれじゃぁ元は取れないヨ」と言われたそうで、実際もそれに近かったようです。そのアマチュア風な凝りかたとは、例えば以下のようなことです
- トランスを初めとして、機器配置が完全なツィン・モノラル構成になっていました。
- 電源が強化されているので、3オームでの定格運転が可能で、昔使ったテクニクス20F20の4並列2オームを駆動しても、ビクともしませんでした。
- ヴォリューム配線が長くなるのを嫌って、前面パネルから直結シャフトから裏板の入力端子直近に可変抵抗を置いて調整しているのも、好もしい配慮でした
- スピーカー出力には、通常、保護リレーが直列に入るので、音質への悪影響を気にする向きがありますが、本機ではDCサーボの工夫により、これを取り去っています。
- 面白いことに、電源ケーブルがアンプの底の電源トランス直下から引き出してありました
- 一個600グラムもあるインシュレータが足になっており、それを上下ひっくり返して取り付けると、平面接地と一点接地が切り換え可能でした。Nelsonは、一点接地にして、下にデュポン・コーリアン敷きで使っていました。
いやぁ、重い !
- 30キロを超えますから、兎に角、やたら重いアンプです。幸いにしてギックリ腰にはなっていませんが、これを動かしたい時は、先ず気を引き締めて、「ウーーーンッ」と唸らなければなりません。実際にこれをやおら持ち上げると、顔が真っ赤になるくらいのものです。年は取りたくないものです。これを買った頃から、Nelsonはオーディオ機器の重量を確かめてから買うことにしましたが、このアンプ位が体力の限界です。取り落とせば、足骨の骨折は先ず必至です。部屋の模様替えに伴う機器の移動が、自分一人で出来ないようでは、カミサンに思いっきり馬鹿にされるのがオチです。実際にも経験したし、ネットでも書き込みがあるのが、ヴォリュームの不調というクレームです。近くの地区販売拠点に持っていくと、アルプスの部品を取り替えてくれました。また、前面パネルが二重になっており、時々、各ツマミが止めネジの緩みでガタ付く症状も、よく出たようでした。
今は、、、
- Altec 6041の駆動用に使っています。6041は、300Bシングルでも充分に大音響が出せる高能率スピーカーですが、如何せん低音がゆるめです。NEC A-10Xは、よく「ゴリゴリ」と評されるように、締まった、無骨な、飾り気の少ない音を出しますから、Altec 6041をキリリと締めて鳴らすのも、面白かろう、ということです。ゆったりした真空管の音が悪いと言っているわけではありませんから、抗議のメールなんか出さないで下さい。
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