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「Autumn Leaves/ Keith Jarrett」と「 Nardis/ Bill Evans」:その入りの妙味


  • Coltraneの「Impressions」、「My Favorite Things」に限らず、多くのジャズメンが一本立ちしてからずっと、まるでトレード・マークででもあるかのように、同じ曲を繰り返して採り上げるのは珍しいことではありません。ギグの主催者側が「皆さんがこれを聞きたいから来ているんですから、是非ともこれはセット・リストに入れてください。」と提案する場合もあるので、Mal Waldronのように「またLeft Aloneですか。おんなじ曲ばかりやりたくないんだけどなぁ・・・」とゴネる人もいます。でも、多くの場合は「ジャズに名曲無し、あるのは名演のみ。」と心得て、希望通りにやる場合がほとんどです。一方では、自分から同じ曲を何度も、何度も演奏したい、と言ってそれを続けるジャズメンも沢山います。
  • その例が「Autumn Leaves/ Keith Jarrett」であり、「 Nardis/ Bill Evans」もそうです。そのどれもに枚挙の暇がない程に多くのヴァージョンがあります。しかし、それ等は決してダレることなど無く、やはり上記「名演アリ」の格言の言う所に納得せざるを得ません。そしてこの二つの名演には、イントロでの「掴み」において、共通するアプローチがあり、その夫々が「この人でなければ、コレは出来ない。」と納得させるものがあるので、それに触れてみたいと思います。ここでは、「Autumn Leaves/ Keith Jarrett」だと、NYCは「Blue Note」での26分強のライブ録音と、「 Nardis/ Bill Evans」では、「Maintenance Shop」での14分近い演奏(日本でもDVD化されていて、多くの人がご存じの音源)とを例にとってメモしますので、一度お聴きになっておく事をお勧めします。
    Jarrettの方は・・・
  • 以前にも書きましたが、「Blue Note」ライブはこのトリオの3日間の演奏を右掲の6枚物ボックスにして出した名演ライブであり、かつヒット作です。このJarrettのギグは、「ライブで聴けた人は、ホントに幸運だったよなぁ。」と誰もが羨ましがるギグだったようです。Nelsonが数年前にNYCに行った時には、Toots ThielmansとMcCoy Tynerのギグをやっていました。「コレは、聴いて置きたい!」と電話予約を入れましたが、あっさりと蹴られてしまいました。有名なクラブでは、良いギグは公表後間を置かずに満席になるようです。そこで例の、「早めに行っておいてバーのカウンターに座り込む」手を使いました。それで、カブリ付きではないものの、十分以上に楽しめました。「Blue Note」はいわゆるヴィレッジ界隈にある観光名所化したクラブで、近隣にはヴィレヴァンあり、スモールズありで、バードランド等がひしめく52丁目の「Swing Street」と共に、NYCで時間が余ったら、飛び込みで行っても、超一流のモダンジャズが楽しめる区域です。この第3巻収録分の演奏は、いずれも出来が良くて、トリオの全員が燃えていた日です。前の曲が終わって、手ぬぐいで汗を拭って、Jarrettがメンバーを見回してアイ・コンタクトを取り終わると、ゆっくりとしたテンポのソロで、


    何やら弾き始めます。判る人には判りますが、枯葉のメロディの断片をなぞりながらのソロで、正にJarrettが幻視したイメージをピアノの鍵盤に委ねた感がある、素晴らしいイントロです。闇夜の中からボンヤリと物影が立ち現れるようなソロが進んで行き、テンポも段々と速くなってきます。ソロに熱が入り始めて、何と4分半頃!になって初めて、断片ではなく、


    完全な旋律としてテーマが提示されて「枯葉」の演奏が進んで行きます。ついでに言えば、このボックスの「君恋」でも同じ手法が採られており、Peacockのベースが見事の絡み付きを披露していますから、それも聴く価値があります。
    Evansの方は・・・
  • 一方の「 Nardis/ Bill Evans」も同様で、長ーーいイントロがピアノ・ソロで奏でられて、その後前テーマ提示に移っています。しかし、ここではEvans本人がMCをしているからでしょうか、


    「今からやるのは、MilesやCannonballとやっていた頃のMilesの曲で・・・Nardisです。」等と能書きを言います。(この曲は、実はEvansの作曲だという説が根強くあるんですが、プロですからその辺のことは微塵も匂わせない曲の紹介をしています。)他のヴァージョンでは、上記「Autumn Leaves/ Keith Jarrett」と同様に、何も言わずにそのままソロに入って行くものが殆どです。そしてJarrettと同じように、


    ここでも玄妙なピアノソロを弾き始めます。「こうかなぁ・・・」、いや「こうじゃないかなぁ・・・」と音群を探っていく展開が堪りません。しかしこのヴァージョンでは、お客さんに曲名を言ってあるので、「これは、何という曲なんだろうか・・・」とはなりません。今弾かれているフレーズがどういう風に「Nardis」に繋がって行くんだろうかという展開で、段々とテンポを速めて行きながら事が進みます。そしてここでも、何と4分半ば!になってやっと、前テーマ提示になり、


    聴衆が、「オォっ・・・ようやく本チャンの演奏になるんだね。」と納得の拍手を贈っています。
    とここで・・・
  • まだまだ言いたいことがあるので、それは続きの「2」に回します。

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