モダン・サックスの巨人です。上記「Sonny Rollins and the Contemporary Leaders」までくらいは、何の迷いもなく天性の豪放な音で、「Thematic Improvisation」と呼ばれる美しく、爽快なアドリブを聞かせていた。この時期に残した演奏だけでも、ジャズの殿堂入りの資格が十分にある。速いものも良いが、バラードにおける絶唱、例えば上記「Saxophone Colossus」の「君は恋を、、」などは、テナーでは他に比肩する人が居ない名演中の名演である。まだ初心者だったNelsonは、「バラード→恋歌→静かな曲→抑揚のない演奏」という根拠のない勘違いをしていたので、この演奏には心打たれて、バラード演奏の底深さを認識し、正に不明を恥じたことを思い出す。
その後の「On Impulse」や「Now's the Time」あたりの時期が、オーネットやコルトレーン等の出現との関係かとも思われるwood shedding(木陰での休息)期に当り、リアルタイムで聴いた際には、若干の「どこへ行きたいの」感が残った。しかし、その後に未発表トラックがいくつも発掘されて行き、"何だ、それはレコード会社の戦略で、ご本人はしっかりしてたんだ。」と判明した。この頃のツルツル頭で、頂点にのみ髪の毛を残したモヒカン刈りは、印象的であった。