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「お馬のフィラデルフィアン」

  • こんなことを始める気になったのは、右掲の「Benny Golson and the Philadelphians」をいつものように聴いていた時です。御存じだと思いますが、これはUnted ArtisitsレーベルがPhiladelphia生まれのジャズメンたちだけで録音したものです。一応は、Benny Golsonがリーダー格ですが、1958年当時頭角を現し始めた若手5人だけで、素晴らしいクインテットが組めることに気付いた制作者の慧眼には脱帽します。
  • いつも通りに口癖のセリフ、「良ぇなぁ・・・ホンマ、良ぇわぁ・・・」等と口走っていて、フト、同郷ジャズメンだからこそこんなに息が良く合うのかな、と気付きました。例の実篤さんの、「仲良きことは・・・」という色紙の世界です。それで、「そんな仲良きジャズメンは世の中に一杯居る筈だから、色々と集めたら楽しいセクションになりはしないか?・・・」と思い付いたのでした。
  • もう少し付け加えておくとすると、ジャズ喫茶にこの盤が出回るようになってしばらくすると、この盤が好きだという人が増え、リクェストも到来します。そういうファンがマスターに、「ホラ、あの・・・お馬さんの・・・フィラデルフィア何チャラとかいうの・・・アレ、お願いします。」等と頼んだに違いありません。そんなこんなで、誰言うと無しにこの盤は「お馬のフィラデルフィアン」と呼ばれるようになったのです。それは何故かと言う理由は、この盤のジャケットにあります。

    当時ジャズ喫茶に入荷したのは当然ながら、右掲下の方のアナログ盤の方であり、そのジャケットのド真ん中には上掲拡大図のように、クインテット編成だということで競争馬5頭が駈ける姿が使ってあります。この当時のジャズ喫茶では、知らない盤がかかると皆がカウンターの所に掲示してあるジャケットを見に行ったものです。だから、この盤は「競馬のシーンがある盤」として、お客さんの記憶残ったわけです。
  • choiceNelsonが最初にこの盤をこのサイトに掲載したのは、中々見付からなかったCDをやっと輸入盤で見つけた時でした。その頃、この国ではオリジナル状態を異常なまでに尊重する風潮が猖獗していましたから、それに配慮して「今では、余計なフランス録音の数曲無しで、オリジナルのジャケットを使った物が出ている筈」と書きました。しかし、20年近くたった現在でも、この盤のCDには追加の5トラックが付いたままです。ジャケットの方は、お馬さんモノと文字だけのモノとの二通りがあるようで、やはりお馬さんの方の人気は根強いと思えます。
  • この盤のNYC録音は11月17日で、Art Blakey's Jazz Messengersの伝説の訪欧ツアーへの出発直前であり、この2日後にはオランダでのライブ盤があります。このツアーでのピアニストはRay Bryantではなく、Bobby Timmonsでした。その彼の大ヒット曲「Moanin'」は欧州でも大受けで、伝説のクラブ・サンジェルマンの会場にいたピアニストのHazel Scottが興奮のあまり卒倒し(そうになっ)たほどの出来でした。Blakeyはその盛り上がりを大層喜んで、その快挙(^^;にちなんでそれ以降は、タイトルを「Moanin' with Hazel」とするようGolsonに命じた、という逸話があります。
  • ですから、この盤の前半の米国録音のトラックでは、ピアノはRay Bryantであり、後半のフランス録音ではBobby Timmonsと違うわけです。そして偶然の一致か、それともCD版の制作者がそこでもう一捻りしたのか、そのBobby Timmonsも奇しくもPhillyっ子なのですから、「Benny Golson and the Philadelphians」という看板は、これらの追加トラックがあってもウソ偽りではないこととになります。
  • さらに言えば、上記でリンクしたYoutubeの動画でも、このクインテットの面子はMorgan、Golson、Timmons、Merritの4人全員がPhillyっ子で、御大Art BlakeyだけがPittsburgh出身です。かてて加えて、ご存じの方が多いでしょうが、そのPittsburghは、Phillyと並ぶPennsylvania州のもう一方の大都市です。つまりは州レベルで見ると、このクインテットは全員が同じ、Pennsylvania州の出身だったのです。
  • Nelsonは、そんなこととはちっとも知らず、このメモを書き始めてからそのことに気付いたのです。何ともはや「出来過ぎの・・・」話じゃぁ無いですか。メデタシ、メデタシ。
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