- 「Four Women」は、Nina Simoneのオリジナルであり、かつ彼女の絶唱です。原詩は、ここにありますが、メンドウだという方のために拙訳をここに載せておきました。Billy Holidayの「奇妙な果実」を凌ぐ、それよりも完成された作品ではないかと、個人的には考えております。Afro-Americanの女性の悲しさ、逞しさを描ききった傑作です。正に、Nina Simoneという女性歌手の生き方をそのまま歌にしたように、ピッタリの歌を絶唱しているのです。右掲の左の盤がこの曲のオリジナル盤ですが、ジャケットには「一度聴けば忘れられない曲になる筈」との惹句が、大きく書かれています。大手のPhilipsの発売ですが、米国の一部の州では「黒人に不当な苦痛を与える」として放送禁止になったようです。Nelson以外の方が、この曲について何か言うのを見ることは殆ど無いのですが、世の中にはこういう良い曲でありながら、人目に付かない良い曲があるものです。機会があったら、是非一度聞かれるべき歌です。Nelsonは、ジャズ喫茶で一度聞いて以来、何度聞いても震えが来るほどの感動を経験しています。コレもわが国では、それほど騒がれていない歌唱です。
- この歌は、肌の色が夫々異なるAunt Sara、Saffronia、Sweet thingそしてPeachesという4人のAfro-American女性について歌っています。最初の3人は、家政婦、混血そして娼婦であり、奴隷制度社会において非情な境遇にさいなまれた女性のようです。最後の1人は活動家のようであり、その3人の悲哀を跳ね返すかのように、社会を睨み返し、「どっこい生きて行きますよ」とめげない精神力を持った女性です。Nina Simoneは、曲の前半では可愛く、優しいけれども、あるいはその優しさゆえに辛い目に合ってしまう女性を、悲哀を込めて、切々と歌い上げます。そしてそれで終わらないのが、Nina SimoneのNina Simoneたる所です。最後の女性の話に移るや、声音をすっかり変えて、野太く、逞しく、芯の強い女性を表現します。ちょっとAbbey Lincoln風の抗議する女性の色合いもあり、また肝っ玉かぁさん、イメージとしてはJohn Steinbeck原作の社会派小説を見事に映画化したJohn Fordの名画「怒りの葡萄」に出て来るアノ母親(Jane Darwellが演じた)のように、虐げられても、踏みつけられても、挫けずに、しっかりと自分(と家族)を守り抜く女性を見事に表現しています。歌曲的に言っても、最初はひっそりと始まり、段々と熱を帯びてきて、最後は絶叫に近い明確なメッセージにまで盛り上げていく、非常にドラマチックな構成が印象的です。そしてこれはNelsonの勘違いかも知れませんが、そのドラマを通底した諦念のようなものが伝わって来るのが、不思議なのです。もう少しNina Simoneについてお知りになりたい方は、ここも御覧下さい。
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