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オクターヴ奏法 (Octave Unison)

  • この奏法ではギターがよく話に出ますが、下記のようにピアノでもやります。
    ギターのオクターヴ奏法
  • ギターのオクターヴ奏法といえば、何といってもWes Montgomeryです。彼はピックを使わないことと、オクターヴ奏法との2刀流なので、オクターヴ奏法に独特の音色が伴い、それがこの人のウリです。先に例にあげたFull House: from 'Full House/ Wes Montgomery'もそうですが、Four on Six: from 'Smokin' at the Half Note Vol. 2/ Wynton Kelly'なんてのも、リーダーそっちのけで、スゴイ熱演を聞かせてくれます。また、A Day in the Life: from 'A Day in the Life/ Wes Montgomery'でも、言ってみればポップス系の演奏なのに、フレーズは正にジャズというしかない演奏です。彼の後、この奏法を試す人はいても、これで名をなした人はWes Montgomeryだけです。
    Stanley Jordanは、、、
  • 数年前に、Stanley Jordanという「驚異の新人」が現れました。この人は何かとっても器用な人で、ユニゾンではなくて、二つの違う旋律が同時に聞こえてくるような弾き方で、世界をビックリさせました。でも数枚作品を出すと、何故か話題にも上らなくなりました。いつも言われることですが、ジャズという音楽を聞かせるのであって、ギターの奏法自体を聞かせるのが目的ではありませんから、彼はジャズメンとしては未だ一本立ちとは言い難いようです。ジャズは、厳しい世界ですね。
    ピアノのオクターヴ奏法
  • ピアノにもオクターヴ奏法があり、「両手ユニゾン」なんていいます。これの代表格がPhineas Newbornです。例えば、A World of Piano/ Phineas Newborn等は聞き逃せません。この人のものでNelsonが一番好きなのが、サイドメン盤のReflections/ form 'We Three/ Roy Haynes'です。両手弾き、というのはクラシック等では、普通の奏法ですが、ジャズでもたまにやる人がいるのです。特にこのPhineas Newbornのようにテーマだけでなく、アドリブ全部をこれでやられると、何か手品のような気がします。そして音が分厚くなるうえに、訴求力があって、実に効果的な演出となります。といっても、手妻を見せられた時のオドロキに止まらず、音の深みに打たれる感があるのが、重要な所です。実はピアノでブロック・コードといわれる奏法にも、オクターヴ・ユニゾンの2音が使われてるようですが、同時に和音も弾くので、オクターヴ奏法には入れないようです。
    あの「クレオパトラの夢」でも、、、
  • Bud Powellの有名な演奏、あのCleoptra's Dream: from 'The Scene Changes, The Amazing Bud Powell Vol 5'でも、オクターヴ・ユニゾンをやっています。この演奏は全体を通じて、シングル・トーンと、両手ユニゾンが入り混じっていますが、音が分厚くなる部分はオクターヴ・ユニゾンと思って間違いありません。シングル・トーンは切れが良く、細身に聞こえますが、ユニゾンは少し分厚く、何か方向性を感じさせます。よーく聞いてみてください。そして一部でどうやらブロックコードも使われています。ブロック・コードはユニゾンよりも更に分厚めで、ハーモニーが聞こえる点が違いです。そして大事なことは、「この演奏が素晴らしいこと」がまず先に来るのであり、その次に「こういう演奏の技法として、シングル・トーン、両手ユニゾン、ブロック・コード等がある」ということが来るのだということです。我々市井のジャズファンにとっては、先ずその演奏が好きか、嫌いかがあるのであり、そうして好きだとなったその後に、技法の話などが付随してくるのだと考えています。技法が先にあるのじゃぁないでしょう。だから、乱暴に言えば、技法のことなんか知らなくって、全く差し支えはないのです。でもその演奏が好きだから、使われている技法のことも知りたいという方のために言えば、例えば上記のような技法のこともある、ということです。
    その他のオクターヴ奏法
  • 基本的に管楽器では、重音は吹きませんから、一人ユニゾンは出来ません。一つ例外を挙げるとすれば、Roland Kirkです。この人は、マルチリード奏者ですが、普通の奏者ではなく、同時マルチリード奏者とでもいうべき人です。テナー、クラリネット、ソプラノ等に似た古楽器を全部口にくわえて、全部を同時に吹けます。例えば、Domino: from 'Domino/ Roland Kirk'がその好例です。この人が更に困るのは、循環呼吸が出来るので、これを際限なく、とは言いませんが、とても長ーーく吹き続けることが出来ます。モノホンのブルースに根ざした黒っぽいというか、汗臭い演奏をこれで聴くと、ハマル人ははまってしまいます。後はベースがたまにやる位で、その他の楽器では余りやらないということにしておきましょう。
    オクターヴ奏法の不思議
  • この奏法を含めて、重音を聞かせることの狙いは音を分厚くすることだと思います。しかし、通常の重音と違い、完全に共鳴するオクターヴ違いの音を同時に出すオクターヴ奏法では、音が一つに聞こえる点が大きく違います。人間が楽器を演奏する場合、実際には微妙にオクターブがずれたり、発音のタイミングも違いますから、完全共鳴にはなりません。それでもやはりオクターヴ奏法では、通常の重音よりも音は纏まって聞こえます。この辺は、不協和音で有名な(^^;)Booker Littleの呟きでも触れましたから、そちらも御覧下さい。このように同じ重音でも、オクターヴ奏法は求心力があり、分厚いながらもある強い方向性を感じさせるという特徴があるように思います。

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