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カデンツァ (Cadenza)

  • カデンツァはイタリア語で、クラシックで本来はコード進行の原型を指し、後に演奏終末部の即興演奏を指すようになった音楽用語です。本来は演奏者が考えて、カデンツァを付けるんですが、作曲家自身がそこも書いちゃうケースが多くあります(意味無いじゃン)。即興と個性が命のジャズでは、その内容はすべからく演奏者の意に任されます。ですから、別の言い方がありそうなもんですが、ジャズでもクラシックの用語をそのまま使っているようです。
    John Coltraneの場合
  • 先に紹介したI Want to Talk about You: from 'Live at Birdland'盤では、演奏全体は8分余りで、普通の意味のジャズの演奏は4分50秒くらいで終了します。つまり、後テーマも出て、演奏が解決されてというか、着地しているのです。そこからが、この人の本領発揮というか、悪く言えば固執なのかもしれませんが、演奏の終わる直前の7分50秒まで、延々と一人で吹き続けます。そして、演奏の実際の終わりはMcCoy Tynerが若干のサポート・フレーズを数秒付けて、再度の締めです。つまり、本来は演奏終末部の即興演奏である筈のカデンツァが、全演奏の半分近い長さなのです。ここまで無伴奏ソロに入れ込まれると、「カルテットで演奏したいんじゃなくって、一人で演奏したいのか」と勘ぐりたくなるほどの異常に長いカデンツァです。無論、それも含めた演奏全体が耳を傾けさせる魅力に満ちていますから、誰も文句は言わないのですが、常軌を逸していることは明らかでしょう。他にも、同曲のストックホルム録音でも、演奏全体が9分半余りで、カルテットとしての演奏が4分50秒くらいで終了した後、4分以上も(^o^)延々と一人で吹き続けます。この人のこの曲の演奏は10トラック近く録音があり、いずれにおいてもカデンツァがありますから、比較するのも一興です。
    無伴奏アドリブとの違い
  • それなら、カデンツァというよりも、無伴奏のアドリブじゃないのという声が聞こえてきそうですネ。「無伴奏アドリブ」の方が広い用語で、それが演奏終末にある場合にのみ、特に「カデンツァ」と呼ぶようです。例えばMisterioso/ Thelonious Monk盤でJohnny Griffinが「Let's Cool One」を含めて何回か聴かせるのは、無伴奏アドリブであり、カデンツァではありません。(クラシックでも、途中に入るのはカデンツァとは言わず、「アインガング」と言って区別しています。) この盤でJohnny Griffinは、自分のアドリブの途中で興に乗ってきたんでしょう、メンバーに声をかけて、結構長い無伴奏アドリブに入ります。これは、この人が熱血漢と呼ばれるのが納得できる、素晴らしく熱い無伴奏アドリブです。でも、これはカデンツァとは呼びません。
    みんなやっている
  • ここまでJohn Coltraneを例にとって来ましたが、別に彼の専売特許ではなく、多くのジャズメンが色々なカデンツァをやっています。そのうち「Those Groovy Cadenza」というセクションを立ち上げるかも知れません。取り敢えず「カデンツァ」と言って、直ぐに思い浮かぶのは以下のようなものです
    カデンツァの楽しさ
  • 先ずは、大名盤中の大名演A Night in Tunisia: from 'A Night at Birdland/ Art Blakey'の締めにClifford Brownがやったものです。この演奏は8分半頃に一応の中締めとなります。そして、その後の8分40秒頃から9分過ぎまで、Clifford Brownが何とも素晴らしいカデンツァを披露します。バックからArt Blakeyが「Blow Your Horn!!」と声をかけてあおっていますネ。20秒程度の短いものですが、本来のカデンツァはこの程度にサッとやるもんです。この曲はArt Blakeyのオハコで、大体がこの進行で演奏されます。有名な61年の来日時も、ド派手なカデンツァで大向こう受けしたのを記憶されておられるでしょうか。1月2日の公演はTBSが収録しており、後に「A Day with Art Blakey 1961(M & I MYCJ30149)」2枚組として発売されていますが、末尾に恒例ということで10分ものの「A Night in Tunisia」が入っています。手筈どおりに進行して、7分から後テーマに入ります。ウブな方は「これで終わるな」と誤解(^^;しますが、それからが大変なんです。(「太陽が一杯」のエンディング・クレジットが出たので、そのまま帰っちゃってドンデン返しを見なかった友人が居ましたねぇ(^^;) Lee Morganが7分半から9分まで、華麗なカデンツァを聴かせます。得意のハーフ・バルブのしゃくり音も交えるので、会場は大喜びでした。もう一つ例を挙げると、What's New: from 'Sonny, Sweets and Jaws/ Sonny Stitt'も粋なものです。このバラードをキレイに吹いて演奏は締めに入りますが、そこでSonny Stittが素晴らしいカデンツァをやります。別れた恋人に未練タップリに「どうしてるの」と聞くという恋歌「What's New」の心情に迫る、小憎らしいバラード・プレイに唸ってしまいます。更には、Eric DolphyStormy Weather: from 'Mingus/ Charles Mingus'で聴かせる素晴らしいカデンツァも絶品です
    結構、難しいらしい
  • ここで、一つ問題があります。それは、カデンツァ後の解決というか、着地です。上記のように自由にやるので、決まった長さはありませんし、通常のエンディングの設定は使えません。ですから、アイ・コンタクトや身振りで、ご当人が「そろそろ、締めだョ」という気分を伝えます。すると、他のメンバーが大団円の準備をします。そしてコーラスの最終部分に近づくと、うまく着地するようなサポートを入れます。ここで息が合っていれば良いんですが、まぁ、人間関係とか、体調とか色んなことがありますから、うまく行かないことも、ママあります。グジャグジャなまま、小節を食ったりしながら無理やり終わってしまう例も、録音されています。ライブでも、ドラムスが、「ドシャン、ドシャン、、、」と無駄に叩いて、大きな音で脅かしておいて、ごまかすという手も良く使われますネ。それくらいに、レギュラー・メンバーであってもいつもきれいに終わるわけではないという、難しさがあるようです。
  • 他にもカデンツァ話は一杯ありますが、話が長くなり過ぎますので、取り敢えずはこれくらいで、、、

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