(Home - Hear Me Talkin' to Ya / BACK)

James CarterとChet Baker
--ついでにStanley JordanとWes Montgomery--
  • James CarterとChet Bakerとを、たまたま間をおかずに聞いて感じた事を一つ。(タイトルだけで中身が分かった方も居るかも知れませんね)
    James Carter
  • James Carterは、「元気でよろしい」に尽きるのでしょうか。マルチ・リードでありながら、どの楽器も掌中に納め、実に朗々と、楽器の持つ最大性能を発揮してくれて、正に爽快この上ありません。それがジャズの良い所なんですが、スキーク気味の異音、奇音が混じってもアドリブの流れの中では良くある事として、不自然さはありません。このデジタル時代ですから、楽器の音は限界まで正確に捉えられており、キーのタップ音まで交えて、正にリードを楽器、じゃなかったガッキと咥えて咆哮するさまは、Young Lion-若獅子-以外の何者でもありません。辛口に言えば、吹きたい盛りで吹きに吹いているけど、もう少しタメも必要であり、もっと吹ける所をグッと抑えて、余力を秘めながらの演奏の方が、味が出るのになぁとは思いますが、今はこれで良いでしょう。演奏の中身も、若さ溢れる曲解釈で将来が期待されます。
    Stanley JordanとWes Montgomery
  • かなり前になりますが、ギターにStanley Jordanと言う新人が現れたときも、James Carterの出現に似た驚きがありました。Wes Montgomeryがやっていた事なんかは朝飯前で、確かユニゾンでは無く、二つの違うメロディをギター一本で出していた記憶があります。それは、それは凄いことでした。過去形にしたのは、一旦その興奮が去った後残ったのが、「それで ?」ということだったからです。残念ながら、技法がそうであるとして、それはそれで凄いことだけど、それで君は何を言いたいの、となって今のところ、それでどうも終わってしまっています。つまり、ジャズは楽器を使う訳なんだけど、楽器は道具にしか過ぎず、その楽器をどう唄わせるか、ということが肝心要(かなめ)の事だ、ということが再確認されたに過ぎなかったようです。Wes Montgomeryには、言うまでもなく、歌心があったし、ジャズではそれが何よりも大事なわけです。逆説的に言えば、楽器の技量はそこそこでも良い、「心の歌」が聴きたいんだ、ということでしょう
    Chet Baker
  • Chet Bakerは、余り「吹かない」人です。というか、吹く必要があるときは吹きますが、必要でないときは吹かない人です。これは、彼へのインタビューでも、「ボクは、演奏に必要な最低限の息しか、マウスピースに吹き込まないようにしている。演奏の展開を考えつつ、出したい音になるだけの空気を楽器に吹き込むんだ」と繰り返し語っている事でも分かります。ジャズメン達も、「Chetはかなりリリカルだ。素晴らしいメロディ・スタイルを持っている。ビートとリズムも良いンだけどね。彼の方法は非常に洗練されている。つまりMozartなんだよ。どれか一音でも抜けると、全体のメロディが死んでしまう。」(Phil Markowitz) このようにChetは、正に楽器から必要十分な音を出して演奏を構成する事に意を払っています。これを手抜きや節約や下手とみる人は、どこかでジャズを取り違えています。
    バナナの叩き売りじゃぁあるまいし、、、
  • 当たり前の事ですが、出てきた、仕上がりの演奏が如何に感動をもたらすか、ということが重要なのです。バナナの叩き売りじゃぁあるまいし、一曲で何百個の音符を吹いたかなんてちっとも自慢にはなりません。実際にもChetの吹奏技術は優れたものであり、この人の急速調でバリバリ吹く演奏を聴けば、その速さでも詩情を失っていない事に感嘆されるでしょう。Chetは、何が必要か、をじっくり考えて構成し、必要であれば必要なだけ吹くが、必要でない音は不要であり、出さないという流儀を貫き通しました。一方別の見方をすれば、「何故それほどまでに、最低限の音符で演奏を構成しようとするのか」という問いかけもあるはずです。これを言うと逆に(CotraneやTynerは)、「何故それほどまでに、多くの(あるいは過剰な)音符で演奏を構成しようとするのか」という問いかけもあるはずです。これは、深ーい問題で、ここでは答えを書ききれません。一言言うとすれば、NelsonはChetも、そして音使いではその対極にあるCotraneやTynerの両方とも、聴いていて感動する事に偽りはありません。Chetの演奏は、別の言い方では、「間を大事にする」ということで、この点でChetはMiles DavisやThelonious Monkと同じ志向を持っていたのです。
    ということで、、、
  • James Carterが、あるいはStanley Jordanが今後どういう展開を見せるかは分かりません。未だ未だ先のある人たちですし、助言する人もいることでしょうから。ただし、聴く側から言えば、「別に俺達は楽器の音を聞きたいんじゃないよ」ということになってしまいます。これだけの技量を持った人たちですから、それを最大限に活用して、あたらしいジャズの「歌心」を聞かせてもらいたいものです。
    蛇足
  • とは言え、オーディオにも色気のあるNelsonとしては、James Carterの音を巧く再生する事には努力しています。NelsonのJBL製4-inch throat Driverの376が正に咆哮してくれると、日頃のストレスも吹っ飛んでしまいますから。

(Home - Hear Me Talkin' to Ya / BACK)
アクセスカウンター