Bill Evansの相方:その変遷
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- Bill Evansを少しお聴きになっている方であればお判りでしょうが、例えばPortrait in Jazzでも、Montreux Jazz Festivalでも聴いてみると、Oscar PetersonやRed Garlandのトリオ演奏とは明確にアプローチが違っており、ピアノが全体を仕切っている感じが強くありません。この人の場合は、そういう普通のピアノトリオあるいはリズムセクションのピアノと異なり、ベースやドラムスとのやり取りが緊密です。無論、全体をリードしては居るんですが、むしろベースやドラムスにかなりのスペースと、それから言ってみれば「勝手を許し」ています。その意味で、相方がどういうジャズメンであるかが、仕上がった演奏に如実に現れてきます。
独立時の狙い
- これはMiles Davisのバンドから独立して、自分のトリオでの活動を始めようとした初期に、Scott LaFaroというベーシストと出合った事が大きく影響しているといわれ、Nelsonもまた同感です。というのも、このベーシストは、当時としては相当に斬新なアプローチをする人であり、そのベースと巡り会ってトリオを組んだためだと思われます。この時期、Bill EvansはMiles Davisとの活動で探り当てたことをトリオで模索し始めており、それがその後のKind of Blueを経由してOutな演奏展開や、Mode手法の消化の中で結実して、Come Rain or Come Shine --幻視者としてのBill Evans--にメモしたような独自の世界を確立していきます。その世界には、自分だけではなく、トリオのメンバーの参加、あるいは積極的な介入が必要だったんだ、と感じています。
Scott LaFaro
- このScott LaFaroは、第一の特徴として、Big Toneです。更に、豪腕でピチカートを弾きながら、強烈にスィングする事は、この人の残した他の盤も含めて、実証されています。御存知のようにBill Evansは、独特のシンコペーションを特長とする人ですから、Scott LaFaroは必ずしも他の人とやるときのような「ノリ」を見せませんが、それでも強靭にBill Evansをサポートしています。そして、Bill Evansのピアノに対して、他の盤では見られないほど執拗に、かなりAgressiveに対話を挑みます。正に「介入(Intervention)」に近いと感じていますが、それをBill Evansは許していたし、むしろ望んでいたと解釈しています。後に、このようなベースの弾き方をする人が、NHO Pedersenや、Miloslav Vitous、Eddie Gomez更にはGeorge Mrazと沢山出てきますが、そういう人たちが、Scott LaFaroのアプローチを取り入れると共に、またEvans - LaFaroの相互作用の素晴らしさに憧れたのだろうことは、想像に難くありません。
Chuck Israel
- 中期に付き合ったChuck Israelの場合には、上記した介入は控え目であり、ビートも弱くは無いにしても、群を抜いて強烈とは思えません。Riverside盤に聴かれるEvans - LaFaroの相互作用は、もう望むべくもありません。それは残念な事ですが、それ程にEvans - LaFaroのコンビが希有であったという事であり、そんなことが世の中にそうそう有る事ではない、とファンは思い知らされたのです。LaFaroを失って、Evans自身が、数か月も演奏意欲をなくしたんですから。決してChuck Israelを貶めているわけではなく、それほどにそういうことは希有だったんだ、と思います。
Eddie Gomez
- Eddie Gomezの場合は、Scott LaFaroに憧れて、あんな風なジャズをBill Evansとやれたら、と機会を狙っていた時期が長かったといわれています。Nelson世代では、あのMontreux盤が新発売になったときに、仲間と集まれば、「今度出てきた、アノEddie Gomezはどうよ」と言う話になった事を記憶しています。特に、当時出始めた超小型高性能のマイクを、胴のコマのところに取り付けて、弦の鳴り、胴の共鳴しか録れていなかった従来の録音の常識を覆して、弦を弾く指先と弦との激しい発弦音に、ビックリするとともに、それが何ともいえない、ある種の臨場感と、ジャズを聴いているという快感をもたらしてくれた事を思い出します。Scott LaFaroとの関連で言えば、Eddie Gomezも十分すぎるほどに後継ぎとして活躍しましたが、「ちょっち軽い」という噂はありました。結局、この人は10年以上も付き合ったわけですが、他に適当な人が居なかったにせよ、一寸後半期には「ダレた」と多くの人が感じたのは、贅沢なことでしょうか。
そして、Marc Johnson
- そして、Marc Johnsonです。いやぁ、聴けば聞くほど、この人とBill Evansとの相性は良い、と感じます。多くの方が、「Bill Evansもやっと、Scott LaFaroを超える相棒を持ったんだ」と感じられたのも、むべなるかなです。「行儀が良すぎて、Scott LaFaroに奔放さで及ばない」、という人が居ましたが、「でも、Marc JohnsonはBill Evansの心の中にまで入り込んでいる気がするし、そこまではScott LaFaroにゃ出来なかったじゃん」と言い返しましょう。
おまけで、Philly Joe Jones
- Bill Evansのドラムスの相方について、今、一寸纏まらないので、通り一遍の事しか書けませんが、取敢えずPhilly Joe Jonesのことだけ。どちらかと言うと、Bill EvansのピアノとPhilly Joe Jonesのドラムスとは合いにくいじゃないかと思えるんですが、必ずしもそうではないようです。その証拠に、Bill Evansはいつものメンバーが揃わないときにギグが入ると、必ずといって良いほどPhilly Joe Jonesを指名したそうです。多くの録音を聞いても、違和感は余りありませんし、Philly Joe Jonesが巧くサポートしたり、時に絶妙のフィルインを見せる事があります。しかし、Philly Joe Jonesの多くある他の人との名演奏、例えば耳タコのCool Struttin'やArt Pepper Meets the Rhythm Section等を聴いてみると、「こういうドラムスを叩く人がBill Evansと組んでもなぁ」、と感じます。ということはPhilly Joe JonesはBill Evansとやるときには、叩き過ぎず、十分に配慮しているという事なのでしょう。もう一つは、音楽の事ではないんですが、Bill EvansとPhilly Joe Jonesとは「悪癖」つながりだったらしく、つまり一緒にビータに出ても、補給の事を気にしないで良い(^^;)というメリットがあったようです。Bill Evansなら兎も角も、Philly Joe Jonesの外見であれば、向こうの方から寄って来て、ブツを売りこんでくれる訳です。見知らぬ街でそれらしい盛り場をうろついて探し回る必要が無い、という安心感が演奏にどう響くかと言うと、、、、経験が無いんでわかりません(^^;)
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