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スリット・ドラム(Lokole):音色(1)

  • ジャズに限らず、ミュージシャンは自分の楽器の音色を大事にします。音楽には、音階、コード、リズムなど、ある程度客観的に描写できる要素があるにしても、その楽器の音、つまり音色が聴く人に訴えかけるのです。サックス奏者が気に入ったリードを苦労して何本か用意し、ピアニストが機種や調律師に注文をつけるのも、それがキモだからです。たまたま手元に舞い込んだアフリカの打楽器、ロコレを叩いているうちに、音色についてメモする気になりました。先ずは、ロコレのことから、、、
    手元にあるものを叩く
  • リンガラ・ポップスが好きで、演奏グループを持っている友人が、現地キンシャサでスリット・ドラム(Lokole)の新品を注文したらしく、年季が入ったのと一緒に我が家に託送してきました。Lokoleまだ他に寄る所があるので、帰国までの一時預かりを頼まれたのです。写真でわかるように、クリの木のような堅木をくり抜いた素朴そうな楽器です。共鳴孔の真ん中にスリットが入っていて、その部分を叩くと意外と大きな音がするのは、その唇の大きさと共鳴胴の体積との比率がうまく考えられているからでしょう。
  • その唇は、下の拡大写真でも判りにくいのですが、両方の長さと分厚さが変えてあり、音程がはっきりと違っています。これを叩くと、二つの音程の違いをうまく使って、楽しいリズムが作れます。彼は原理主義者なので、現地で使われているスティック用の木を2,3本同梱してきており、そのうちの一本には、正に現地で使っているらしいボロ布まで巻いてあります。確かにこの布によるダンプは不可欠であり、裸木では深い音がしません(^o^)。その唇は片持ち梁になっていて、その厚さを胴から唇の先にかけて微妙に薄くなるように削ってあり、これが「トウゥーーィーン」という絶妙な揺れをもたらして、「わぁーーー、もろアフリカやんけ。」という感興をもたらします。見ての通りにチョウナ(釿)のような刃物によってハツった仕上げなのですが、何百年もの間に確立された削り方、各部の大きさや厚さの変化等によって、結構表現力がある打楽器になっています。
    手元にあるものを叩く
  • Lokole先日の世界遺産番組で、ナイルの源流点としてのルゥヴェンゾリ山探検が放映されていましたが、ポーター達が夕食後に火の回りで宴をしており、適当な水筒を叩いてリズムを出していました。先年、タッシリナジェールのツアーで砂漠でキャンプした時にも、ガイドらがカラのポリタンクを叩いて、うまいビートを出していました。打楽器奏者が、意表を突くようなものを叩いて良い音を出すのは、ジャズにも良くあることで、シンパルを叩いていると思ったら、そのポールにスティックを当て、ついには床まで叩いて、最後にリーダーの足元まで行って、その靴を叩く所で怒られる、、、なんていうのも、良くある余興でした。何も無ければ、手を叩くどころか、服をはたいても音を出すのが打楽器奏者のサガでしょう。
    打楽器の奥深さ
  • 打楽器奏者さんは、他の楽器よりも見かけと仕組みが簡単なので、チンドン屋の親戚のように軽く思われがちですが、その演奏技術は実に奥が深いようです。どの楽器もそうなんですが、打ちチョウチャクする時の強度もキモの一つで、付帯音、倍音が強く効いてくるので、打音が目に見えて複雑化します。そこにチョウチャクの速さ、間隔、反復、時に音階も加わるので、ツトム・ヤマシタ(Stomu Yamash'ta)や、Max Roach(名盤「Drums Unlimited」「M'Boom」あり)等の卓越した奏者の手にかかると、打楽器だけで交響曲並みのスケールが生まれます。
    ロコレだって、、、
  • ロコレは、そんなに複雑そうな打楽器ではありませんが、その音色は実に魅力的です。。Nelsonは打楽器奏者ではないのでうまくできませんが、打音の強弱や連打の間隔によって、さらにはロコレの胴から唇に至るどの辺を叩くかで、音色が微妙に変わります。友人は現地の名人イチャリ氏に教えを請うたものの、最初の1か月はリズムに合わせて踊ることだけを続けるというシゴキを経てから、やっと叩き方を習ったといいます。日本料理の板前修行でも、最初は「追い回し」で、掃除や食器洗いなどを何年かやらされて、包丁なんか握らせて貰えないというのと同じなのでしょう。プロの奏者なら、様々な面白い音色をこのロコレから出すコツを知っているに違いありません。打楽器ですから、フロント楽器のサポートに回りつつ、その演奏全体にアフリカ音楽として欠かすことができない色合いをもたらすに違いありません。
  • 、、、たまたま手元に舞い込んだアフリカの民族打楽器、ロコレで遊んでいたら、その音色について考えてしまった次第です。

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