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2006年12月某日 (2): 「古本漁りの魅惑」と猟盤

  • 先日来、「古本漁りの魅惑」(高橋輝次、東京書籍、2000年、1700円)というアンソロジー本を読んでいます。著者は、古書店巡りが好きなフリーライターで、長年拾い集めた古書趣味に関するエッセィ集にして上梓したものです。書き手は、上林暁、窪田般弥、安藤鶴夫といった古めのお方が、50人弱でしょうか、自身の古本趣味についてこもごも語っています。古書趣味については、以前にも書痴と盤鬼 -- 「エラリィ・クイーン談話室」からで触れたことがありますが、実に奥の深く、かつ時に狂気を誘うもののようです。そういう古書趣味の方の立ち居振る舞いは、NelsonのようなジャズCDの猟盤とどこか通底する所があるのに気付いた、、、というお話です。
    「積ん読」
  • 何人かのエッセィに出てくるのが、「買ったのは良いんだけど、読まずじまいの積ん読状態です」という述懐です。ちなみに、「積ん読」とは、新本であれ、古本であれ、食指が動いて買ってみたものの、読まずに部屋の一隅に積み重ねてある状態を指す筈です。幾ばくかの金銭、時には空腹を癒すべきラーメン代などと引き換えに買ったんですから、その本の内容というか、主題、著者、装丁等々に並々ならぬ興味を抱いたのでしょうに。恐らくは、店頭でちょっと拾い読みをして、相応の当たりが付いても居り、直ぐにではないにしても、兎に角買って読む気になった筈です。しかし結果的には、それ程読書欲を刺激していたわけでもなかったんでしょうか、何故かしばらく放置してあるということのようです。ありがちなことですが、猟盤のほうでも、こういうことはあるんでしょうか。
    猟盤の方は、、、
  • Nelsonに限らず、殆どの方は音楽ソフトを買って来ると、そのCDを数日中には一度は聴く筈です。だって、聴いてみなきゃぁ、どんな演奏かが皆目わかりません。ですから、先ずは聴くわけで、何年も積ん読ということは、あり得ないに近いことでしょう。本の場合は、店頭の拾い読みである程度内容の推察が付きますが、音楽ソフトは外見を眺めただけでは、内容はわからないものです。お気に入りのグループの音楽だから、期待はしているといっても、ジャケットに表示されたトラックがどんな音で鳴るのかは、聴いて見なければ判りません。かくして、書店巡りではありがちな「積ん読」という現象は、音楽ソフトに関してはほとんど無い現象と言えるでしょう。
    「立ち読み」
  • 本の場合、一般的に立ち読みが容易です。ビニールで密封した例のジャンルをお好みの方のことはさておくことにして、新刊書店、古書店を問わず、店内で販売されている本は、ほぼ全部が「パラ、パラ読み」程度なら、何の遠慮もなく可能です。「美麗初版本、箱入り」で、古書店主の背後のガラス戸棚に大事そうに別置してあるものでも、「それ、ちょっとどんな保存状態ですか」と聞いて、「これは、仇やおろそかには見せられません」なんていう偏屈親父も、今は少ない筈です。いずれにせよ、紙モノの特徴として一覧性、通覧性がありますから、ものの1,2分の「パラ、パラ」で、購入の是非を判断する程度できます。それに引き換え、音楽ソフトには、そういう便利さがありません。
    「立ち聴き」
  • 他人の話を「立ち聞き」するのは無作法ですが、CD等の店頭での「立ち聴き」で購買欲をそそられることは、たまにありますねぇ。俗に「押し売り」とも言いますが、新譜で好評のものを更に売り込みたい場合は当然のことながら、余計に仕入れたけど、どうも売れ行きが悪くって、「少し押し込もうか」という場合もある筈です。店頭で猟盤をしていて、フト気付くと、ストライク・ゾーンの演奏が聴こえてきて、レジの方を見ると「只今かかっている盤」とかいって、ジャケットを展示しているなんてケースが間々あります。大型店では、そういう盤を数枚、ナカミチの連奏再生機に装着してあって、随時聴ける状態にしてある店もあります。買う気になった新品、中古の盤を手にして、「ちょっと聴けますか。」と頼んだにしても、一枚全部はおろか、まぁ、ワン・トラック、それもA面の出だしを聴くくらいが関の山でしょう。音楽ソフトの場合は、その程度の「立ち聴き」で購入の是非を決めねばなりません。
    当るも八卦
  • 、、、と書いて来てみると、何とも猟盤趣味はバクチのようなものだという気がします。つまりは、「当るも八卦」というわけです。それに比して、ある程度内容の察しが付く古書趣味なんて、ガチガチの本命買いで、外れっこないじゃァ無いですか。というのは言い過ぎでも、少なくとも、古書趣味の方が成功確率がずっと高いのは確かでしょう、、、とすると、レコ屋さんてぇのは無責任な商売で、買う人が気に入らない可能性が十分にある商品を売りつけている、実に太ぇ野郎だということになってしまいそうです。そして裏を返せば、Nelsonを含む猟盤趣味の方は、実に鷹揚なもので、「あぁ、コレはハズレね。」くらいで済ませてしまいます。「こんなロクでもないものを売りやがって、この詐欺師め。」とレコ屋に怒鳴り込んだりません。まぁ、太っ腹な大人物というか、はっきり言って「大バカ」だということなんでしょうか。

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