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「そのレコード、オレが買う」

  • そのレコード、オレが買う 「そのレコード、オレが買う」(リットー・ミュージック、2009年、1800円)は、「レコード番長」を自称されるヴェテランDJの須永辰緒さんが、商売のネタであるアナログ盤を気前よく買いまくる様子を、実に爽快に、しかしどこか自虐的にメモされたものが、中々面白いってんで本にまとめて出されたものです。CDはほとんど買わずにアナログ一点張りで、7インチのEPも結構多いという、市井のジャズファンとは一味違う、その買いっぷりは、「レコード番長のガチンコ買い物日記」という副題そのもので、なかなか爽快です。
    半端じゃぁないその買いっぷり
  • 別に他人の懐の心配をする気はありませんが、須永さんは毎月少なくとも数万円、多い時には十数万円の猟盤をされているようで、実に豪快ですがお支払いの苦労も並々ではなさそうです。我々市井のジャズファンと違って、DJというお商売柄からすれば、その大半が業務上の仕入れであるにしても、日記体で綴られたその猟盤ぶりには、敬服いたします。もう20年くらいは、DJとしての経歴があることを考えると、今でもそれだけの猟盤を続けておられるのは、お仕事を超えた盤鬼としての熱い情熱がなせる業だと思えます。
    DJさんって
  • Nelsonは、寡聞にしてDJなる方のお仕事振りを現場で拝見したことがありませんが、仄聞するところ、クラブなどでその店、そのイベントあるいは自分のテーマに合わせて、ほとんどの場合はダンサブルであることを念頭に置いて選曲したものを、そのお店のPAに乗せてお客さん達に聴かせるお仕事のようです。そして、その音源は、多くの場合アナログのLPや、EPであるようで、無論、我々のように片面全部聴きなんて悠長なことはせずに、狙いの1トラックを聴かせているものと思われます。多分レア・グル―ヴというジャンルで、別にスクラッチをして聴かせるというものでもないのでしょう。須永さんの場合は、そこに禁じ手ながらジャズ盤を紛れ込ませることを常とされていて、それがいつの間にか根強い支持を得るに至っているようです。
    いつも数十万円の取り置きがあるってのは
  • 須永さんの猟盤も、エサ箱をかき回すことと、ネット買いであることに変わりはなく、我々とそう違うわけではなさそうですが、やはりご商売なんで買う量と言うか、金額が半端ではないようです。毎日買われた盤のジャケ写が数枚づつ掲載されて行きますが、いわゆる「良い盤」が殆どながら、そこにラテン気味の乗れるトラックが入っている盤が加わるという感じでしょうか。全国をDJして回っておられるので、行かれる先々で小ぶりなショップと馴染みになっておられて、帰りの飛行機までの間に取り置き分を回収し、さらにエサ箱もチェック、、、という様子が楽しそうです。おそらく、DJさんというのは定番のノリの良い曲に加えて、その場にいる7,8割方の人が存在は知らなかったけど、聴かせてもらったらなかなか良いじゃんというトラックを、そのセットで何曲聴かせるかというのが勝負なようです。そして、毎日の猟盤を通じてゲットしておいた、そういうキラー・チューンが入った決め盤を、いつも仕事中は手放さないバッグに、ゴッテリと秘めてあるようです。
    Face Recordsで買った「Jazz Quintet 60」
  • 宇田川町のFaceで手に入れた「Jazz Quintet 60」には思い入れがあるようで、Face店主の武井があて書きというか、「あて買い」(^o^)で仕入れて、まんまと売りつけに成功した経緯、30万という値付けに3日悩んだとか、色々と面白い話がテンコ盛りで、楽しめました。(この盤は、サワノさんが復刻して、LPは絶版ながら、CDならまだありそうですが、オリちゃんだと30万もするんですね。)ガイド本などでは見かけないけど、秘かに手放さずにいて、まぁ、年に1,2回は聴いている辺鄙な、恥ずかし盤を須永さんも買っているのを見ると、心が安らかになるというか、ニンマリするというか、、、「やはり好きな方は、こういうのを手元に置いてるんだなぁ、、、」と納得。今は面影もない「レコファン下北沢店」の昔日の充実ぶりも書かれておられますが、Nelsonもよく通い、我が先輩も「あそこ、トニーと同じくらい、面白いよねぇ」と絶賛されていたことを思い出します。

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