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殿山泰司もの
殿山泰司さんは、大正4年の東京生まれで、確かおでんの
「お多幸」
さんの長男さんではなかったかと記憶します。演劇を志して、築地劇団に入団、その後出征されています。そう言えば、横浜野毛の名物ジャズ喫茶
「チグサ」
の店主吉田さんと、大陸で同じ小隊に配属となったそうです。軍規厳しい中で行軍していると、吉田さんが
「タイガー・ラグ」
を口笛で吹いてくれた、とどこかに書いておられました。復員後暫く経った50年には、近代映画協会の設立に参加して名脇役として活躍され、89年に73歳で亡くなられています。近代映画協会の役者さんですから、一応新藤(兼人)組ということで、音羽信子さん等との共演も多い方でした。
「日本のどこにでもある街のジイサマ」
という役がこれほどピッタリとくる人は少なく、またそういう役柄に徹しておられました。どんなセリフを言わせても、「コイツ、本気で言うとるなぁ」と感じさせるので感服したものです。そういうタイちゃんなんですが、ジャズとミステリィとが大変お好きでした。イヤ、そう言うと
「ちゃうがな、もっと好きなんが有るがな」
と言うはずですが、それは下掲の書物リストを見ればお分かりでしょう。何とも屈託の無い、ホンネで語るエッセィは、
「馬鹿ッ、死ね」
と自分を叱咤したり、「ヒヒヒヒ、、、」という
韜晦
に満ちています。字面だけを読んで「下品」と言う人が居られるのでしょうが、Nelsonなどは一級品だ、と思います。アノ、髪の毛の殆ど無いお顔で、黒メガネ、ジーパンの尻ポケットにミステリィの文庫本というスタイルを、もう一度見てみたいものです。
ほぼアヴァンギャルド専門
タイちゃんの好きなジャズは、アヴァンギャルド中心です。自著に「あなぁきぃ、、、」と付題されているように、常識ぶったことはお嫌いで、山下洋輔トリオの格闘ジャズなどを
「ハフハフと」
気持ち良く聴いて、「何や、えぇ気持ちになれた」と楽しまれていたようです。出されたスパゲッティ・ナポリタンが旨くないと、
「セシル・テイラーでもかけろ」
なんてわめくジイサマなんてのも、他にそうは居ないでしょうね。そういう直感的な物言いが、厭味なく聞こえるのは、正に人徳のなせる所でしょう。
どういうものを書いておられるか
単行本に限定して拾い上げてみると、次のような本が出ているようです。
殿山泰司のしゃべくり105日(上掲、
講談社
、200ページ強、1000円)
殿山泰司のミステリ & ジャズ日記
三文役者あなあきい伝
三文役者のニッポン日記
三文役者の無責任放言録
JAMJAM日記
にっぽん・あなあきい伝
日本女地図 : 自然は、肉体にどんな影響を与えるのか
バカな役者め!!
三文役者のニッポンひとり旅
「殿山泰司のしゃべくり105日」
これは、夕刊フジに「三文役者いろ艶ぴつ」と題して連載されたコラムを単行本化したものです。撮影の現場での様子、その間に読んだミステリィ、そしてジャズ・ライブの話が、タイちゃん独特の文体で語られており、何とも寛げるんです。出てくるジャズの対象は以下のようなところです。
近藤等則
山下トリオ
セロニアス・モンク
リッチー・コール
国安くるみ
加古隆
渋谷毅
ドン・チェリー
ポール・ホワイトマン
豊住芳三郎
梅津和時
ペーター・ブロッツマン
翠川敬基
こういう生き方
タイちゃんは、当然、一大看板の役者になるということとは無縁で、しかも本人も興味が無いという生き方をされました。正にそのこと自体が、何かジャズという音楽と共通する所がある、と感じています。宜しければ、これも図書館で借りて読まれては思います。
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