一関ベイシー八訪記
- 10月上旬に北海道一人旅をした帰りに、またまたベイシーに寄ってきました。前夜遅くに青森港にフェリーで着いて、直近の道の駅である「浅虫温泉」の5階建てと言う稀有な仕立ての駅舎傍に潜り込んで、バタンQ。翌朝目を覚ますや否や、タオルと着替え片手に5階の展望風呂で心地良く朝風呂を楽しみました。そのまま東北道に乗って、ブラブラと南下しつつ情報を集めると、「栗駒山の紅葉」が見頃みたいだからそこを目指すことにして、「その前にするべきことを、しておこうと言うことで・・・」
- まぁ、ベイシーは聞く人毎に定休日情報が異なる店で、「定休日は、あって無いようなものだ。」と言う世評です。でも矢張り、外れは引きたくないのでこの店に寄れそうな機会があると、事前に電話で確認する癖が付きました。菅原さんも慣れたもので、即「やってるよぉ・・・」という返事をしてくれるんですが、その声を聞くか聞かないうちに、電話の背後から轟音が飛んで来る、というのがまた嬉しい店です。
(看板を横目に、入り口の扉を開け・・・る前から、我が家ではとてもこの大音量は無理に決まっている「ベイシー楽団の快調な音」が聴こえて来て・・・もう8回目にならんとする一関ベイシー入店です。)
相変わらず居心地は良い
- 今回寄った日は祝日だったので、稼ぎ時だから休みにはしないだろうと、バクチは承知で一関「ベイシー」さんに突っ込んで行くと、予測が当たってました。1時間半くらい座っていて、相変わらずの美音に耳を傾けた時のセットリストは以下の通りで、コルトレーンは一枚も掛けないという、まぁ、休日版の選曲でした。
- Basie, One More Time/ Count Basie (Roulette YW 7832か)
入り口の外にまで聴こえていた、別名「Pen of Quincy Jones」盤の鳴る中を入店して、独り身でも気軽に座っても文句を言われないSP前左側の席は残念ながら満席です。お嬢が指さす、手前の壁際にある野口久光棚の前に座ると、先ずは目を閉じてしばし店の雰囲気に変わりないことを確認・・・近年になって、時々気になる中高音から高音にかけてのキャン付きを今日も感じます。まぁ、Nelsonの耳の劣化なのだと思いますが、ひょっとすると人気盤故の掛け過ぎと言うか、過度の摩耗があるのかも知れません。
- Now He Sings, Now He Sobs/ Chick Corea
ほぼ処女作と言っても良い、この盤の発売時にリアルタイムで聴いて、新人類の登壇だと思いながらも、この人の方向性は間違っていない事は直感的に判りました。良く言われるが如く、処女作にはジャズメンの全ての思いが込められているわけで、「処女作に戻る」と言うに足る里程標の典型的な例でしょう。この人の大ファンながら、リーダー作がゴマンとあるのに、これ一枚しか持たずにひたすら聴き込んでいる人がいると言います。ガチャ耳のせいもあってハイハットと針音の区別が付きにくいんですが、トムトムの音がいつも通りにブッ飛んでくるのは、375+075という必殺のコンビだからに違いありません。
- Live in Stockholm 1960 : Miles Davis and Sonny Stitt (Dragon/ DIW)
この盤は、今ではこの時期に相前後してフロントを務めていたColtrane(春の訪欧)の入ったギグと合冊した、右掲の4枚組物CDが簡単に手に入りますが、アナログだと二人別々の盤で出ていたのだと思われます。Stittの方(秋の訪欧)が御大より2コも上なのに(あるいは、「だから」なのか)どうも気合、というか雰囲気が合わず、Stitt自体も良さが出せていない気がします。そして例えそうであっても、これだけの手練れ揃いですから、演奏は一級品です。この時期からでしょうか、バンドの締めテーマがメッチャ元気になれる「The Theme」になり、一しきり盛り上がってから姿を消すと言う仕立てになりましたのは。Stittはテナーとアルトの持ち替えだと聴こえます。
- Down Home/ Zoot Sims
これが掛かった途端に、椅子の背もたれに寄りかかり直して、肩の力がスーッと抜ける寛ぎ盤です。
- Count Basie Jam (Pablo)
1時間余りしか経たないのに、また御大の盤を掛けるのが休日仕様なんでしょうね。
- 大昔は、コーヒー一杯で4,5時間は粘ったものでしたが、この頃は昔の数倍の値付けなのは当然としても、1時間そこそこで退散することが多くなりました。今日は休日で入りも良いからでしょうか、Coltraneは一枚も掛から無かったのが心残りだと思いつつ、明日の栗駒山の紅葉渉猟に向けて、車を駆りました。
- 菅原さんは、そのサイドの最後の曲までには会話からそっと抜け出して、次の盤を棚から選び出すと空きターンテーブルにそっと乗せ、(多分、針先をリード溝の真上においてから)JBL SE400プリのヴォリュームに手を掛けます。前の盤の最後の溝の音を客に聴かせること無く無音にしてから、横のターンテーブルのアームを次の盤面に静かに降ろし、最初の導入溝の音を僅かに聴かせながらも、盤によっては最大音量から始まるのを的確に再生してから・・・辺りを見回して状況が落ち着いているのを確認しておいて、ジャケットをレジ近くの展示ラックにそっと置きます。その間、一言も発せず、動作に何の躊躇いも無く、すべきことを事も無げにこなす・・・ジャズ喫茶のマスターはこうあるべきだ、とでも言うべき身のこなしは、いつものことながら客を和ませます。
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