一関ベィシー五訪記
- 外人のジャズファンがいたとして、「日本にはジャズ喫茶ってものがあるそうだけど、一度行って見たいなぁ。」と聞かれて、自信を持って推薦できるのは、今では「一関ベィシー」くらいになってしまいました。まぁ、行ってみて必ず開店しているとは限らない(^^;ので覚悟が要りますが、選曲、音、雰囲気等々に加えて、風格というか、「正しいジャズ喫茶」とは如何なるものかが、良ーーく判る店です。その「一関ベィシー」に数回は行っていますが、今般の北海道車中泊旅行の行き帰りにも、寄ってみました。行きは空振りでしたが、帰りは店が開いていて、たっぷりと聴けました、、、というか、改めてこの店の氏(うじ)・素性(すじょう)の正しさを実感しました。ということで、たしか5回目くらいなんで、「五訪記」です
かかったのは、、、
- 店内に居た間に聴けた盤で、印象深かったのは、「Modern Art/ Art Pepper」、「Kansas City Suite/ Count Basie」、「Kansas City 7/ Count Basie」、「The Broadway Bits/ Marty Paich」くらいですか。その昔行った頃は、こっちも前のめりの時期でしたから、後で「普通は、アノ店ではリクェストは受けないんだョ」とか言われましたが、「Speak, Brother, Speak/ Max Roach」等をリクェストして、快くかけて貰いました。この盤は、各楽器が数分にわたってソロを取るので、音の楽しみには向いています。今は、向こうもこっちも年端も行かない若者ではなくなったので、おとなしく聴かせてくれる盤を聴いています。あぁ、「My Favorite Things/ John Coltrane」もかかっていました。これは、Atlantic盤ですから、元来音はあまり良くなく、今回も余り感心しませんでした。
「Modern Art/ Art Pepper」
- 立ち上がって、盤を確かめることはしませんでしたが、手持ち盤よりもズーーッと音が良いんで、オリちゃんかも知れません(^^; Art Pepperの柔らかい音、最低音、そしてフル・トーンがそれぞれにしっかり出ていて、唸りましたねぇ。
「Kansas City Suite/ Count Basie」
- Rouletteレーベルの60年代の好盤です。御大のピアノはともかくも、「各ソロイストの音が、良くはじけるなぁ、、、」と感じ入っていたら、フル・バンドの音で椅子を転げ落ちそうになりました。かなりの音量でありながらも、各パートがきれいに出ていて、「混変調って、どこの話」という見事な音出しです。それでいて、リズム・ギターの音がしっかりと聴き取れましたからねぇ。カミサンが、「ビッグ・バンドって、何だか余りなじめなかったけど、こういうのを聴くと、もう少し聴きたくなるよねぇ、、、」とのたまわっていたのも、むべなるかな
「Kansas City 7/ Count Basie」
- 我が家にもある盤なのに、かなりというか、、、正直言ってまったく違う盤のような見事な音です。こういう音で聴けば、確かにこの盤ももっと深く理解できるなぁと思い知りました。
肝心の音は
- ご存知のように、この店は上記リンクに付記して置いたようにアナログ主体です。上記のフル・バンドの咆哮は、塩化ヴィニール盤の細い溝を針がこすって出した音なのです。その証拠に、エコーといって、1,2周次の音がボヤーッと漏れ聴こえてくるのが、トラック間で確認できますし、第一、針音がします。そういう今となっては原始的ともいえる仕掛けなのに、この信じられないほどの明瞭さ、分離、立ち上がり・立ち下がりで聴こえてくるのですから、いまだにアナログを大事にする人の気持ちは、判ります。根性無しのNelsonは、CD主体に転向してしまっていますが、「イカンなぁーー」と思い知らされました。もっとも、重箱の隅つつきは可能です。5,60Hz以下は余り褒められた再生ではなく、みぞおちに来る程度で、もも、ふくらはぎに来る超低音は出ていません。またツイターが075ですから、芯はあるものの、12kHzくらいから上は出ていないので、かそけき雰囲気を付加することは出来ていません。シュアのカートリッジも、中高音の分離に限界があります。
熱くって、分厚い音
- しかし、、、しかし、それは問題ではないのです。そのような超低音や、超高音がチャンと出る今様のシステムでは、この店のような熱くって、分厚い音は出ず、それでは正しいジャズにはならんのです。ですから、この店の音は正しいのです。信じられないのが、この音を送り出しているJBLのプリ、デヴァイダー、パワーです。デヴァイダーは別ですが、プリもパワーも数十年も前に発売された製品で、例えばコンデンサーなども容量抜けがしている等、性能劣化がある筈です。更に、上記リンクにある菅原さんの本を読まれた方はお分かりのように、試行錯誤はありましたが、この店の電線は普通の電線です。金銀財宝(^^;を使ったり、被覆材を凝ったり、ねじり合わせたものではないというのです。RCAプラグも、余り特殊なものではないそうです。パワーアンプから優に数米は引き回されたスピーカー・ケーブルも、特殊ではないそうです。その直流抵抗、容量を考えると、今様ケーブルのマニアなら卒倒するほどの悪環境です。それなのに、この音なのです。オーディオは、出している音が、勝負ですから、菅原さんが正しいのに決まっています。色々と理屈をこねても、感動できない音ではダメです。菅原さんは、コチコチの古いもの好きではありません。新しいものは結構試して居られて、その上で「捨てるものは捨てる。大事にするものは大事にする。」という主義のようです。その見切りが、勝負なのでしょう。今のオーディオ界が、如何に間違った方向に行っているかが、この店に来ればよく判ります。
一度はこの店の音を
- まぁ、、、色々書けば長くなります。ジャズを良い音で聴きたい人は、一度はこの店の音を聴かれるべきでしょう。そして、いくつかの要諦を学ばれるのが早道ではないでしょうか。
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