スピーカーの間の空間
- よく知られていることですが、スピーカをある間隔で設置した時の、その間及び周辺の空間に物を置く、置かないというのは、結構聞こえる音に響きます。今般の改装でも、この空間にちょっとアナログのジャケットでも飾ってみるかと試しに並べてみたら、音が格段に劣化して驚きましたので、その辺をメモしておきます。
2メートルの空間
- 最初に、スピーカーを2メートル強の間隔で設置した時は、まだ両方の間には何にも置かれておらず、壁面露出の状態です。その後、配線などを行う途中で、ここには吸音パネルを置く予定でした。ところで少し前の話ですが、整体の考え方に従って、ベッドの下敷きクッションを同サイズの畳を作ってもらって交換したことがあります。それで要らなくなった畳2枚分のフォームは、場所ふさぎなので、いずれ粗大ゴミに出す積もりでした。ちょうど良い機会だと思って、それを適当な枠にはめ込んで、吸音パネルとして、この空間に設置してみたのです。「ダメモト」というやつですが、案に相違して、これが、まぁ、抜群の効果があったのです。スピーカーからの音離れが良くなったというのでしょうか。行きつけの生地屋さんから30メートルもの生成りの反物を、「改装に使えるだろう」と買って来てありましたので、その布地でパネルをきれいに外装してあります。中がフォームで、外装が布なので、うまく全音域にわたる吸音の役目を果たしています。
アナログのジャケット
- このパネルの外装は生成りの布で、ちょっと色気がありません。そこで、すこし遊んでみるかと、アナログ盤を4枚並べてみました。手持ちの中から色目が良さそうな、Bill Evans、Billy Holiday、John ColtraneそしてMarion Brownの盤を選んで、その布地の前に並べてみたのです。ジャケットなら目も和みますし、この程度の厚みでは、低音の吸収には無関係です。でも、高音の方はどうかなと思ってやってみたのです。
「アッ、こりゃぁ、ダメだ」
- 見事に、ダメでした。たった4枚程度のビニール・コートの厚紙があるだけで、中高音がヒリ付くのです。まぁ、長く聞く気にならない音です。このビニール・コート紙が、前後の壁間での中高音の反射。吸収等によくない影響を与えているのでしょう。「そうかぁ、なるほどなぁ。」と、今更ながらにこの空間処理の重要性に驚いたのです。そこで、ふと、一関ベィシーの菅原さんがどこかに書かれていた逸話を思い出しました。
そう言やぁ、菅原さんも、、、
- 何か力を入れたい催しがあって、菅原さんは音の調整もバッチリ、「さぁ、いつでも来い」と準備万端怠りなかったそうです。そしてお客さんもしっかりと来て、物事は順調に進行するんですが、しかし菅原さんは気持ちが晴れません。「音が違う」のです。来ているお客さんは盛り上がっていますから、誰も気付かないようだけど、菅原さんにとっては、「マッズイなぁ」という音だったようです。催しが終わって皆が帰り、菅原さんは後片付けを始めましたが、「何だったんだろうなぁ。」といういぶかりは去りません。そして、「もしや、、、」と思って、催し案内のラシャ紙をはがした時に、「アッ」と思わず声が洩れました。ナント、音が元に戻ったのです。その吊るしは、前夜に苦心して書き上げたラシャ紙で、両スピーカーの間に貼ってあったのです。ただの紙一枚ですが、それが悪さをしていたのです。菅原さんは、思わずへたり込んで、大きなため息をつかれたとのことです(「ジャズ喫茶ベイシーの選択」所収)。「げに恐ろしきは、オーディオかな。」という玄妙なるお話ですが、Nelsonも我が聴き部屋で、それを追体験してしまいました。
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