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高能率スピーカー礼賛
--「今の音はなかったことにして頂いて」はマズイょ--


  • 一関のジャズ喫茶Basieの城主菅○さんが、その著書において、次のようなことを述べられたことが印象に残っています。
    ---能率の低いスピーカーは、ジャズの演奏の中で少し小さ目の音がアンプから送られてきても、動きが鈍いですから適当にごまかして、「今の音はなかったことにして頂いて」と怠けて、微細な音は出さないでいるんじゃないのか。---
    そりゃ菅○さんの言うことはもっともだ、そんな低能率のスピーカーは確かにケシカラン、とNelsonは賛成する、というのがこの話の要点です。
    Basieの再生音
  • ジャズ喫茶Basieの再生音は質の高いことが昔から有名で、Nelsonも何度か訪問して、感嘆させられた記憶があります。同氏は、そのスピーカーにJBLの15インチ口径ウーファー2220(同社創設当初からある名器130Aのプロ版)2発を密閉箱に入れておられ、その上が黒鷲のようなホーンを付けたドライヴァーの375で、高音が075です。現在の常識から言って、とんでもない高能率のスピーカーなのです。
    100デシベル
  • 38センチ口径の高能率ウーファー130A、2220A等は、そう名乗るだけあって能率が100デシベルを超えるものです。今風のスピーカーの名器であるティール、BWノーチラス、マグネパン等々が85デシベル近辺にあることを考えると、これは相当に能率が良いのです。(大雑把に計算すると、3デシベルで能率が倍半分ですから、このデシベル値はべき乗で効くので、2x2x2x2x2で32倍ということになります。つまり今様スピーカーに100ワット突っ込むのと同じ音量が3ワットで出る、という能率の良さなのです。) 今様のスピーカーを使う人は、大体1キロワットクラスのパワーアンプを使われますが、同じ音量を出すのに、高能率であれば30ワット位のどこにでもあるアンプで良い、ということになるのです(音質をさて置けば)。
    スピーカーは
  • 元来、スピーカーはエネルギー的には、あまり効率の良いものではありません。アンプからのパワーはヴォイスコイルの電流となり、それが磁場の中にあるので、思わず磁石のギャップの中で動いてしまい、それにコーン紙が繋がっているので空気を押したり引いたりすることになり、音として聞こえてしまうという仕組みです。
    エネルギー効率
  • 一寸調べてみると、2220Aのエネルギー効率は約8パーセントです。現在は、上記したように80デシベル半ばでも特に低能率だと特記されることはありませんが、その場合の効率は約0.2パーセントという低さです。数十倍も電力を無駄に使うのですから、菅○さんでなくても、悪態の一つもつきたくなります。
    2A3シングルの2ワットで十分
  • 一軒家で、家鳴り鳴動するくらい鳴らす人でも、能率100デシベルのスピーカーを使っていると、実際にスピーカーには10ワットも突っ込めば十分です。真空管で言うと、通常の音量なら2A3シングルの2ワット、頑張っても300Bシングルの7ワットもあれば、殆どの人が満足できます。トランジスターアンプでも、恐らく50ワットクラスであれば十分でしょう(再び、音質のことはさて置く)。それが能率85デシベルのスピーカーだと、KT88を酷使したプッシュプルで100ワット物、トランジスターなら数百ワット物がいることになるのです。
    ブックシェルフ型の台頭
  • 無論、こうなったのには理由があります。家具のようなスピーカーはもてあますので、書棚に入ろうかというブックシェルフ型が普及しました。世の中が多様になって、音楽だけが大きな地位を占めることが無理になったこともあったのでしょう。小さな箱でチャンと音を出すには、コーンがフラフラ動き易くし、しかも背圧に耐えるよう強くしなければならず、結果的に重くなり、能率が上がらないということです。つまり同じ音量を出すのに、色々と努力が必要となり、一部の部品は「動きたくない」と抵抗するに違いないわけです。このような動きの鈍いユニットに余り大きくない音が入ってきたとしたら、ユニットは動き難いですから、「何か動いてくれって言っているけどなぁ。どうしようかなぁ。オット、次の音がもう来ちゃったよまぁ、さっきのは無かったってことにしようや。」とサボルに違いない、というわけです。高能率スピーカーなら動きが軽いので、「ホイ来た」と音を出すのに、低能率の方はサボる事ばかり考えて、「実にケシカランではないか。」、と菅○さんのように怒る人がいても、筋違いとは言えないと感じました。

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