セカンド・リフって・・・
ジャズの楽しさの一つに、雰囲気を更に盛り上げるために挿入される手管に「セカンド・リフ」があります、というお話です。
リフとは
ジャズでは、断片的な音列 で、時に繰り返すことの多い旋律をリフと言います。Riffと綴りますが、繰り返しという意味からなのか、リフレイン、Refrainの略 だとも言われています。スィングの頃に主として白人系のジャズでアレンジ主体のジャズがあった反動でしょうか、Kansas City 近辺でよくやられたスタイルのジャズが注目され、その代表格はCount Basie です。短めのリフを何度か繰り返すことが特徴的であり、それを軸に色んな変化、見せ場が出てくるので、何とも興奮させられるジャズです。バードの頃には、楽曲のテーマ自体をリフと呼ぶようにもなり ました。現在では、まぁ、冒頭に書いた、短めの合奏フレーズ 、というところで落ち着いているのでしょうか。
セカンド・リフ
そしてその応用として、「セカンド・リフ」といわれる技法も確立されました。演奏の途中で、追加として入ってくるリフで、第2テーマ の役目もします。単に誰かのアドリブをヨイショする景気付けのリフには、バックで合奏して盛り立てていく「バック・リフ」 というのもあり、あの名盤「Walkin'」 でもアルトのソロを鼓舞する管のバック・リフ(8:30から)が眼を惹きました。 ねっ、何か元気が出てくる感じでしょう。
でも、ココで採り上げている「セカンド・リフ」はそういうのと違って、第2テーマ のような感じで出て来るわけです。近年はレコーディング時に使われる機会が減りましたが、ライブでは今も尚ツカミの手段 として多用されています。50年代頃の盤を聴いているとセカンドリフは良く出てきますので、「おぉ、そうそう、セカンド・リフはやっぱ良い ね」と目尻が下がるわけです。このセクションで今後挙げていく実例で判るように、「Art Balkey and His Jazz Messengers」 バンドがある時期にセカンドリフを繰り返して使い、御大が続々と呼び込んで来た音楽監督のHorace Silver、Benny Golson、Bobby Timmons 等が皆、このセカンド・リフが好きだったこともあって、このバンドが一世を風靡したのだと言われています。
例えば「Dat Dere」だと、、、
そこで、そのセカンド・リフですが、実際の例を簡単に紹介します。ここでは、直ぐ思い出した「Dat Dere/ This here Is Bobby Timmons」 を例にして、話を進めます。
先ずは、この動画 を呼び出してみてください。これは5分半くらいの演奏 であり、イントロ抜きで示すと、こんな感じでした。 往年のジャズ喫茶ではコレが鳴り始めると、皆が首を振り始めるは・・・水割りが大分入っている奴などは手拍子を打ち始めるは・・・と大いに盛り上がったものでした。
コレが頭の片隅にあるとして、その末尾の、演奏の流れからすれば「そろそろ後テーマが出てくる なぁ・・・」という感じになる4分過ぎ に、本テーマに負けず劣らず、キャッチィで、実に人なつっこいセカンド・リフが出てきます。 ツー・ビートの行進曲風のリフ です。本テーマと同様にシンコペーショントが効いていながら、本テーマとは対照的な「ダッ、ダッ、ダッ、ダッ、、、」 という行進曲風のリフは実に印象的です。
つまり、、、
こういう風に挿入する「セカンド・リフ」で何より大事 なのは、本テーマの旋律、リズム等を生かしながらも、ちょっとオーディエンスの気分を変える 効果もあるリフであることでしょう。そして、こうしたセカンド・リフが終わり、それに続く後テーマがあるので、メデタシ、メデタシ と解決に雪崩れ込んで行きます。こんな風にクラブ中が盛り上がって、それから次の曲に行ったり・・・あるいは皆が一寸舞台から降りてブレイクしたり・・・するという仕掛けです。こうして舞台と客席との一体感は醸成されると、「よぉ、皆で、もう一杯やるかぁ・・・」 等とドリンクの注文が来ることもあって、ライブハウスの御商売が繁盛する という御利益があります。
「古いね」か、「良いじゃン」か
どうも話が「大昔のジャズ」のことになってしまったようです。しかし、「良いジャズを楽しんでもらおう」という50−60年代のジャズメンの心意気 が伝わるのが、Nelsonには嬉しいのです。つまり「一粒で、2度おいしい」 という、これも古ーいお菓子のキャッチフレーズですが、オマケ として楽しめ、しかも曲の雰囲気が更に盛り上がる仕掛けだと思います。
「そういやぁ、あの大好きな演奏にもこんな感じの仕掛けがあったよなぁ・・・」とご自分の所蔵棚をゴソゴソやってみる 気になって貰えれば、望外の幸せです。