(Home - Those Groovy Cats - Toot Thielmans / BACK)
Jazz Harmonica
|
- ハーモニカなら、オレも吹けるヨ、という方は多いでしょう。小学校で習った馴染みのある楽器です。プロが使うハーモニカには2種類あり、単音中心のものと、和音中心のものです。
誕生
- 1922年4月29日に、ベルギーのブラッセルで生まれたJean Baptiste Thielemansは、もう80歳になろうか、という老骨である。実家が、カフェをやっていたせいで流しの芸人の出入りが多く、3歳の時にはアコーディオンで遊び始めていた。3歳の年齢・体躯で、アコーディオンをどんな風に抱えこめていたのかは、想像を絶するが、そのころは、いわゆるシャンソンを弾いていたと言う。その後、ギターを手に入れ、また現在売り物の楽器であるハーモニカを手にしたのは、ずっと後の17歳の時であった。
Django Reinhardt
- ジャズを聞き始めたのはこの頃であり、友達が置き忘れたギターを手にとってDjango Reinhardtの演奏を真似ていたと言う。そしてそのギターが彼の最初の評判を作り上げた楽器となる。ジプシーのギタリストで、ジャズギターの先駆者となったDjango Reinhardtに大いに影響を受けたと本人は言っており、そのとおりにジャズがメインの活動分野となった。終戦に伴って配置された駐留米軍の基地にあるクラブにおいてジャズを演奏し、また習熟していったTootsの経歴は、日本に限らず、欧州でも通常のものであったようだ。成長したTootsは、ブラッセル大学に入学し、数学を専攻したが、やはりジャズとの縁は切れなかった。1946年には、Edit PiafのLa Vie en Roseの録音で伴奏をしたり、Charles Trenetにも付き合ったことがある。
米国への移住
- 1947年、25歳の時に、一度渡米しており、NYの52番街のクラブに入りこんだらしい。そこにはエイジェントも顔を出しており、その縁もあってか1949年のパリ・ジャズ祭でCharlie Parkerと競演したという記録がある。長期の米国滞在を希望したTootsは、在住査証の申請を出して、その許可が出るのを待つ。50年には、Benny Goodman Sextetに参加して、欧州ツアーに同行したり、Roy EldridgeやZoot Simsの欧州公演にも参加した。そのまま翌年、Tootsは正式の査証を得て、米国に移住してしまう。1953年から59年にかけて、TootsはGeorge Shearing Quintetのメンバーになり、丁度人気が沸騰した独特の演奏スタイルを確立したこのバンドの、絶大なる人気を支える重要なメンバーとなった。このバンドでの彼の役割は、ギター、ハーモニカそして時折の口笛であった。
Whistle and Guitar
- その後、1961年になって生涯のヒット曲であり、持ち歌となる口笛とギター(Whistle and Guitar)により演奏される自作曲「Bluesette」が世に出て、注目を浴びる。この演奏スタイルがまた独特で、ギターを弾いていても当然口は使わない訳で、子供の頃から好きだった口笛をユニゾンでかぶせてみたら、皆が「それ、カッコ良いよ」ということで始めたスタイルという。つま弾くギターの音域と、口癖の口笛の音域が巧くユニゾンとして調和するので、一気に評判となり、Bluesetteのリクェストが殺到したらしい。
Quincy Jones
- Tootsは、Quincy Jonesに惚れ込まれ、映画音楽にも手を伸ばしていた彼によって、色んなスタジオ仕事にも起用されることが多かった。無論、それはTootsの類希なヴァーサタイルさと、そういう場でもジャズらしさが仄見える点などが買われてのことと思われる。そして、またTootsとQuincy Jonesは、そういうポップス系の仕事の他に、ジャズとしか言いようの無い盤も何枚か出している。
何ともいえない「軽み」
- こういう経歴のせいか、この人のジャズには「黒っぽさ」、「汗臭さ」、「重苦しさ」が感じられない。やはり、ベルギーという欧州の大国に囲まれた小国に生まれたという国民性なのか、それとも生来の個性なのか、兎に角「軽み」が付いて回る。それでいて、「精神の自由さ」というジャズのもっとも大事な要素をしっかり持っているので、どんなにジャズ臭くない曲を料理しても、しっかりジャズしているのには、舌を巻く。
ポップスの世界
- Tootsは、必ずしもジャズ一筋の稼業ではなく、ポップスの世界でも彼の音楽性が高く評価されたのに応じて、スタジオ仕事を結構やってきた。それに付いて彼は、「別に急ぐわけじゃないし、実に快適だったよ。例えば、最初にOld Spice(香料)の仕事をした時なんか、曲を作って録音するのに、たった2時間だよ。それで、ニューヨークのアパートの1年間の家賃が出ちゃったんだからマイッタよ。」しかし、「ジャズは僕の心の拠り所だ。ジャズは、正に、生きることなんだ」と、ジャズへの思い入れを語る。
(Home - Those Groovy Cats - Toot Thielmans / BACK)