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「ジャズのスパイス」の狙い

  • ジャズって、何なんだろう」という話になると、デキシー、スィングと来てモダンジャズの時代になり、ツー・ファイブのバップを皮切りに、クール、モードなんてのが来て、今はトレーン流の4度進行とか、リズムの細分とか言った大きな流れがあります。そう言った流れの中で名曲、名演が目白押しで我々を楽しませてくれるのですが、そんなハレのジャズの大仰な面だけではなく、普段着ののジャズにも興味深く、また結構心撃たれる面もあります。観衆を睨みつける大仰な身振りも結構なんですが、何気ないジャズメンの小技に唸ってしまうことも多く、「こういうのがあるから、やっぱ、ジャズを聴き続けてしまうんだよなぁ・・・」と感じ入ることが良くあります。コルトレーン・チェンジ等を否定する気は毛頭ありませんが、そんな小難しいことはさて置いても、Nelsonのようなジャズファンは、アレコレの一寸した仕掛けもまた、ジャズを聴く時の楽しみになっています。
  • その辺のことは、エライ評論家さんたちが余り書かないことのようなので、少しメモして置きたくなりました。別に「神は細部に宿る」とまで言いつのる気などはありません。ジャズファンならどなたでも、意外にそう言った手練手管気味の、小技というのか・・・仕掛けにジャズの真骨頂を見出しておられる方は少なくない気がします。色々とネタを思いつく度に、我がアイポンにメモしていますが、この話は多分、100話くらいにまで行く気がしています。別セクションの「コレ好っきゃねん」百物語では曲毎に演奏全体の出来を見ていますが、そうじゃなくって演奏の一部というか、細部の話をするんだからと考えると、「ココ好っきゃねん」百物語という感じなのかも知れません。
  • そんな隔靴掻痒なことばかり言っていないで、先ずは卑近な例を挙げて説明を試みます。例えば今となっては昔懐かしい「At the Village Gate/ Herbie Mann」を初めて京都市内荒神口の「シャンクレール」で聴いた頃の話です。60年代のジャズ喫茶の定番で、これは一日に一回はかかる人気盤でした。、冒頭のヒット曲「Comin' Home Baby」が終わって、2曲目は名曲の「Summertime」です(本メモのアップ時点で聴ける動画は、これくらいが適当ですが、もしリンクが切れていたら、ご自分で代りの動画を探してください)。
  • この盤の特徴であるバイブとベースの絡まるハーモニーに、コンガがメリハリを付けて、御大がフルートでやるアドリブに熱が入ってきます。

    そのアドリブの「3分40秒辺から4分10秒辺りまで」の30秒くらいの間、

    フルートが伴奏のリズムに合わせながら、ほぼ単音のみを吹き続けます。

    もう半世紀ほど前(^^;の初心の頃のNelsonは、「コレは何なんだ。」といぶかったことを覚えています。アドリブと言えば、技術の限りを尽くしてアイデアを・・・というか自分の言いたいことを聴き手にぶつける・・・と一途に思い込んでいた初心者にとって、リズムが付いているとは言え、たった一つの音階を30秒以上も吹き続けるなんて論外ではないか、と思ったわけです。
  • しかし・・・しかしジャズ・フルートの名手と言われるHerbie Mannですから、現にその部分に至るまではフルートを駆使していました。幾つもキャッチィな曲芸的フレーズを披露して、満席の観客を大いに唸らせていたにもかかわらず、ここでは一転して「手抜き」の単音吹奏に堕してしまっているなんて・・・と思ったわけです。しかし演奏全体としては盛り上がりに変化は無く、現に観客は大いに沸いていて、ブーイングなどしていません。フルートはその後も6分前までアドリブを続け、バイブにアドリブを渡します。このライブ録音された「Summertime」は、シングルカットしたら売れに売れて、ビルボード誌でも注目された「Comin' Home Baby」に負けず劣らずの名演で、B面も潔く一曲に抑えた「It Ain't...」との3連発なんですから、LPとしての売れ行きも凄かったと言います。
  • そこでこの単音アドリブですが、確かに舞台中央に立って単音を吹くだけというのは芸が無さそうですが、実は良く聴けばその裏で伴奏陣が曲のコード進行に乗って絶妙なハーモニーを維持し続けています。Herbie Mannは、そのコードの変化に嵌まる単音を選んで吹いていますから、演奏全体がキレイにまとまっています。コレが、単音アドリブのなのです。まぁ、単音は極端に過ぎるとしても、Grant Greenが「Joshua Fit the Battle of Jericho」や、Michel Peturuccianiが「枯葉」でも、とてもフレーズとも言えない数音の単純なフレーズでこれをやっています。2分25秒から3分8秒辺までの単純な連符アドリブ・・・4分等の上手い単音アドリブに気付いたこともありますし、どの演奏だったか今は記憶にないのですが、Keith Jarrettにも良い例があった筈です。、
  • ・・・と言った、一見細かいことながら、でもその細部に神が宿るとまでは言いませんが、しかしそこにもジャズの真骨頂がありはしないか・・・という迷説を掲げたいのですが・・・サテ、ご賛同が得られるかどうか、しばらく続けさせてください
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