「Dear Old Stockholm/ Miles Davis」 :ユモレスクの引用
誰もが音楽の授業で聞かされた記憶がある「ユモレスク」 という曲は、彼のドヴォルザーク がボヘミアの哀愁たっぷりの小品として作曲した、世に言われる所の「奇想曲」 の一例です。耳馴染みが良い旋律なので、学校の運動会や下校の合図なんかに、わが国でもよく使われています。
この「Dear Old Stockholm」の名演と言えば、昔から決定版は50年録音の「The Sound/ Stan Getz」 を嚆矢としますが、今回引用絡みもあって採り上げるのは、それより2年遅れで、1952年録音の「Miles Davis Vol.1, 2」 盤の第一巻に入っている御大、Miles Davisの名演です。3管セクステット の演奏で、フロントは御大、Jay Jay、McLeanという豪華な面子です。。
BNらしく練り上げが充分で・・・
このトラックの動画 をお聴きになれば気付かれるように、ハードバップへの移行期 という表現がピッタリの演奏で、Prestige専属期の合間にBlue Noteレーベルでやった録音です。ご存じのように、Prestigeはジャズメンへの指導などせずに、好きにやらせる流儀(ギャラやスタジオ代をケチる会社だという噂もあり)ですが、BNは録音すると決めたら企画の擦り合わせも含めたスタジオ練習 を、Alfred Lion社長も参加して行って展開を練り上げた演奏だけを録音する流儀なので、濃い演奏揃い になっています。先ずはイントロですが、 続いて出て来る本テーマ旋律の素晴らしさを予感させる作りで、やはり練習を何回かやった事の成果 が現れています。その素晴らしいイントロでノリをセットしてから、 スムーズに主旋律に流れ込むという仕掛けです。
リーダーである御大の専売特許である、余計なことは言わずに要点だけを歌い上げる んだというような、実に見事なアドリブに続いて、御大のショバなんだからとリキが入っていて、むしろ息せき切っての切迫感 さえあるMcLeanのアルトによるアドリブ も見事です。
多分何回かのリハで、皆が良いと言った引用かも・・・
そしてJayJayのトロンボーンが短いアドリブをすると、ここでキレイに締めに持って行こうとする御大が、嵌め手 ではありますが人口に膾炙した、古謡 に近いような親しみがあるドヴォルザークの奇想曲 を引用してきます。引用の練達者だったBirdに私淑したMilesですから、 前後のつながりに無理がない、見事な引用でエンディングに持って行った、ハードバップ黎明期の名演の一つ でしょう。