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「Blues Five Spot/ Thelonious Monk with Johnny Griffin」: 史上屈指の、テナー・ソロによるカデンツァ

  • 「Little Giant」こと、シカゴ生まれのJohnny GriffinはNYCに出て来てバップの洗礼を受けた頃、Elmo Hopeと仲が良かったようで、そのHopeはMonkそしてBudと3人でいつもつるんでいたいたそうです。その関係で付き合いもしていたGriffinですが組んでジャズを一緒にやることは余り無く、1958年頃になってMonのカルテットのフロントにトレーンの後釜として入り込んだのが最初だ、と言います。その頃ご隆盛のクラブ「Five Spot」でやったこのグループの演奏の代表格が右掲の「Misterioso」盤です。
  • その盤の2曲目が今回採り上げる「Blues Five Spot」で、これはMonkらしさがプンプン香るオリジナルでした。 多分、このクラブでコレを演奏する時に何度かやっていたのでしょうが、このライブでも3分過ぎに「行くぜ、行くぜ・・・」と怒鳴ってっておいてやった「カデンツァ」(無伴奏ソロ)が好きだと先週書きましたが、ネットで見ても米国を始め多くの国のジャズファンが、「史上屈指のテナー・ソロ」の一角にこのアドリブを上げているのは、前から知っていました。今回、Griffinのメモを書くために再確認していると、1990年のインタビュー記事や、、2008年の死去に伴う一連の訃報(Obituaries)記事を見つけました。色々と面白いことが書いてあるので、ついでに今後、紹介する積りです。その出発点として先ずは、この「Blues Five Spot」がどんなに素晴らしい演奏だったのか、を以下にメモしてみます。手持ちに無い方のために、この演奏の動画がココにあるので、リンクしておきます。
    この頃のGriffin
  • Elomo Hopeを通じて知り合った、Monkがやる独特のジャズが好きだったGriffinですが、実際に面子に加えられたのは1958年頃のFive Spotでのギグの頃で、この時の演奏は大手のRiversideの他、私家録音が数枚、59年頃までに作られています。その中でも5Spotでのライブ盤「Misterioso」は、面子がThelonious Monk (P)、Johnny Griffin (TS)、Ahmed Abdul-Malik (B)、Roy Haynes (D)で、全員の演奏がキッチリと収めてあります。Monkには余り大手での録音が無かった時期なんですが、制作も御大のOrrin Keepnews(Riverside)で、結構リキが入った仕上がりです。 この盤は良い演奏揃いで、確か今では何枚か組の完全版が非公式に出たと聞いています。そこで採り上げる「Blues Five Spot」は、このハコにMonkが献上したブルースですが、ピカ一の出来だと個人的には愛聴しています。
    中中良い展開で・・・
  • Monkが、彼しか書かないようなピョコピョコしたテーマの出だしを短くソロでやった後、Griffinも入ったカルテットが


    起承転結付きでのテーマ提示をほどやって演奏が始まります。ソロの一番手はGriffinが居座って、


    実に熱っぽい、良いソロを繰り広げて行くので、大盛り上がりです。そのソロも終わりかな・・・と思われますが左にあらずで・・・どうにも「アギャッ、アギャッ」くらいにしか聞こえない声を上げたかと思うと、更に吹き募って行き、


    これが「無伴奏でやるぜ。」と言う合図だったと判ります。皆が揃って「じゃぁ、任せるぞぉっ・・・」と手を休めると、1分ほどもカデンツァ気味に吹いて行きます。コレが盛り上がり、起承転結、熱っぽさが際立つとして「ジャズのテナー・ソロの白眉に入る。」と後世になって激賞されることになるカデンツァです。
  • そこでもGriffinは掴みの大事さを忘れずに、


    「Popye, the Sailorman」の一節を引用した後、Monkにソロを渡しています。


    お客さんは、Griffinが不意に一人吹きをしたので驚きますが、それが実に素晴らしいカデンツァであり、しかもユーモアたっぷりに「ポパイのテーマ」を引用して見せたので、大喜びの拍手を贈ります。
  • こういった展開は、何かGriffinの出しゃばり過ぎなんて感じに思われる方もいらっしゃるかもしれせんが、そこは人懐っこいGriffinと、日頃から無口で知られているMonkとい今回のギグの組み合わせが、結構辻褄が合っているのも面白くて良いですね。
  • Monkは少年時代に、クラシック・ピアノのコンペを総舐めにして小遣い稼ぎをしていたので、多くの主催者が出入り禁止にしたという逸話がありますが、そういった素地がありながらもジャズではキャラキャラ弾きでない、一風変わった奏法が目立ちますし、楽理的にはケモノ道通いをする人でした。その辺がたたったのかどうか、MilesやRollinsとのPrestige盤、そしてColtraneとのRiverside盤で、やっと本領を発揮出来るようになりました。その彼とGriffinとの共演は、これら3偉人との共演とは別の意味で、ジャズの良さと奥深さを教えてくれるので、聴き応えがあります。

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