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Sonny Clark: Pianistとしての特徴
「人とその周辺」で触れたように、Sonny Clarkは東海岸生まれのピアノ奏者です。
Hampton Hawesとの付き合い
この人は、東海岸生まれですが、家庭の事情で一人立ちまでは西海岸で活動していました。結果的にはこの人のスタイルに西海岸は合わないことが分かるのですが、それでもそこでHampton Hawesに会ったことは大きな変化をこの人にもたらします。その事情は次のようだと言われています。当時西海岸で活躍していたアルトの巨人Frank Morganは、Sonny Clarkについて辛口な見方をしたようで、その頃のSonny Clarkはコードや、コンピング(伴奏、合いの手)等の知識がまだまだ不十分で、悪く言えばソロイストに過ぎない、と評価したようです。Buddy de Francoのバンドで人気になっているのに、ちょっと言い過ぎかなとも思えます。まぁ、彼ほどの名人上手から見れば、「まだまだ」という面があったのでしょう。しかし見所のある奴と思ったのか、MorganはHampton Hawesに修行を託し、「一緒に仕事をしてやってくれ」と頼んだそうです。そういう点では、Hampton Hawesはバンド歴も長く、他のメンバーの演奏を聴く、という姿勢を既に十分に会得していたようです。横で聞いたり、かわるがわる演奏して議論したりするうちに、たちまちのうちにSonny Clarkはジャズバンドでの演奏の基本、特に連携とサポートの仕方を会得してしまい、その耳の良さで周囲を唸らせてしまったそうです。
明快すぎず、粘りすぎず
Buddy de FrancoのバンドにKenny Drewの後任として参加したことや、上記Hampton Hawesとの付き合い、ということからして、Sonny Clarkのピアノが明快である事は容易に想像できます。小股の切れ上がった、という感じというか、カッチリしたKenny Drewの明快なタッチは魅力ですが、それはSonny Clarkにも、Hampton Hawesにも感じる要素です。そしてKenny Drewも、Hampton Hawesもその切れ味の良さが共通しています。しかし、極端に言うと、二人ともリズムが正確すぎて、スィング感が軽く、重みを感じないとも言えます。そこがSonny Clarkの場合、少し様子が異なっており、少し粘ります。湿っぽい、梅雨、日本人好み、という強引な事を言う人もいます。それには首を傾げますが、同じAfro-Americanでありながらも、ごく僅かのリズムの遅れと言うか、揺れはSonny Clarkと、Kenny Drew、Hampton Hawesとを区別する鍵のようです。無論この3人共に、Bud PowellのBe-Bopジャズピアノの影響を強く受けながらも、そこから厳しさを和らげたうえで、ジャズとして日常化したといえるHard Bopの典型的なピアニストの代表格に違いありません。特にSonny Clarkについては、上記の上に、Eroll GarnerやGeorge Shearing等の香りがするのも事実です。
演奏スタイル
先にEroll Garnerの香りの点に触れましたが、それよりもEroll Garnerとの違いの方が大きいことも書き落とせません。Eroll Garnerの特徴であるブロックーコードを、Sonny Clarkは演奏の高潮部の技法としてはあまり使いません。ブギウギの左手の勉強をした、とSonny Clark本人は言っていますが、それも売りのシングルトーンのアドリブに厚みをつけるためのものと思われ、絢爛豪華に両手でバリバリという弾き方ではありません。Ben Sidranがどこかで強調していましたが、米国ではSonny Clarkのようなニュアンスを伴った演奏はあまり評価されず、Oscar Peterson等のようにVirtuoso的に技術を駆使し、弾きまくって聴衆を圧倒する方が一般的な人気が出るのだそうです。つまり米国でも熱心なファンはSonny Clarkのよさを理解するが、大衆受けと言う事にはなっていないという現実があり、大衆が歓迎しなければ発売枚数も一定の線を超えられないという事のようです。別に人気ピアニストになって欲しくもありませんが、兎に角ピアニストに対する評価基準の違いです。日本でも、ジャズピアニストがいくら頑張っても、リチャード・クレイダーマン程の人気には到底届かないのは当然でしょう。対象が違うのです。一キロのビフテキを毎日食べる米国人と、「夏はやっぱり冷奴ですね」なんていう日本人の好みは違って当たり前です。
不思議な魅力のオリジナル
それに加えて書き落とすべきでないのは、Sonny Clark特有の何ともブルーな曲想のオリジナル群です。一寸書き出しても、Cool Struttin'、Blue Minor、Royal Flush、Minor Meeting、Something Special、Moelody for C、Dial S for Sonny、Nica、Junka等々があり、改めて聴きなおしてみると、当然ながらこの人の演奏スタイルと、自作曲の曲想の全き合致に気付かされます。
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