70年代に彗星のように現れて、その器量で世間を圧倒したトランペッター。この人が出演中と知らずに、たまたま出張中のミュンヘンでライヴに出くわしたことがありました。誰がやっているかも知らずに、そのクラブに足を踏み入れたら、その音の大きさ、音出しの融通無碍さには、イヤ驚きました。その内様子が呑み込めてきて、このペットは「あの象のジャケットの人」なんだと判りました。演奏の途中で、ラリッているのか、ムチャクチャ乗りだし来て、例えは悪いが「次は、人をブッ殺すのか」と思えるほどで、何を次にやり出すか分からないスリルがありました。その上で、やる音楽がキリッと屹立する潔さだったので、ジャズの醍醐味に震えたことがあります。こういうジャズは無条件に好きで、こういうスリルこそジャズの本質、「オドロキの音(Sound of Fury)」ではないでしょうか。