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ピアノとしての特徴
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- Michel Petruccianiは、多くの先達の影響を受けながらも、早熟であったこともあって、若い時期から自己のスタイルが確立し終えた人である。
(よく言われる)Bill Evansの香り
- Michel Petruccianiを聴き始めた頃は、Nelsonも新手のEvans派か、と思った。何よりも、その綺麗な音と、ロマンティックな演奏ぶりがそう思わせる。しかし、色々聴けば、特にタッチがかなり違い、それはMichelが10代の頃からそうだが、後期(20代後半か)になるに従ってその差が顕著になり、ある時点で「これはEvans派のジャズではなく、Petrucciani独自のものであり、彼は、ある一面ではEvansよりも彼方にいる。」と判る。それでは、いつ頃二人の関わりは生じたのか。調べてみると、8歳(1970)頃に兄のLouisがBill Evansのレコードを持ち帰ってきたことがあるようだ。兄はかなり興奮しており、ピアノをやっているMichelに「これを聴け」と押し付けた。というと、「それを聴いてMichelは大感激、以後は神のように、、、」、と想像されるかもしれないが、実はさにあらず。「このピアノはおかしい。こいつは演奏できないんだ。」という否定がMichelの最初の反応であった。しかし、「おまえは間違っている。この人は偉い人なんだ。」、という兄の説得に何かを感じたのか、もう少し聴くことにした。事実、8歳の時点であり、Michelはまだ例えば、ワルツのスィングのさせ方を知らなかった、という程度の時期である。その後暫く、繰り返して聞き直しているうちに、「なるほど、これはスゴイ。」という気分になった。その後は、コード、展開、テンポ等々を相当に研究し尽くした、と本人が言っている。でも、よくある兄弟間の意地の張り合いの色合いもあったにせよ、一聴した反応が先ずは否定であったということは、興味深い。ちなみに、そのレコードは、かのMontreux Liveだったらしい。
他のピアニストとの関係
- Michelがピアノに惹かれたのはDuke Ellingtonのピアノを聴いたからであり、上述のようにBill Evansとの関係も深い。他に、McCoy Tyner, Herbie Hancock等の匂いを嗅ぎ付ける人もいよう。念のためにいっておけば、本人はKeith Jarrettはキライだ、と言っている。本当にキライなのか、一面で通じる者同士に良くある反発なのかは知りません。また、極端だが、エヴァンスは死への志向で、Michel Petruccianiは生への志向だ、という評論家さんもいる。Michelの評価に、「sunny」という言葉を使う人も結構いるし、誰しもが彼のユーモアに満ち、アイディア溢れる演奏に気付く。確かなことは判らないが、これはMichelのポジティヴな生き方、演奏の仕方を意味していると解釈しており、それは彼が非常な冗談好きであることに繋がろう。つまり、基本的に彼は、人間を肯定しており、恐らくは神についてそれなりの考えをしっかり持っているのではないか。
強いタッチ
- 今でもそうであるが、Michelがあんなに強いタッチで弾けることは信じがたい。隆々たる上背、体躯のMcCoyやPeterson等であれば、鍵盤を見下ろしながら、体重をかけてグワーン、とやることは容易だろう。しかし、身長はともかくも、例えばペダルを補助具により操作するMichelが、正にグワーンとやっているのだから、、、その奏法を身に付けるに要した苦労は、大抵のものではなかった筈である。Michelの独特のタッチは、打鍵された弦だけでなく、その近傍、あるいは共鳴周波数にある遠くの弦も微妙に振動させるようであり、明らかに複雑な厚味を持って響く。例のモンクの非共鳴である筈の隣接鍵の打鍵と同様に、キレイというのかどうかは別にして、ジャズとしては魅力的である。その打圧、指の入り方等の微妙な癖が、Michelの特徴的な奏法の一部になっており、他の人ではなく、彼であるというIdentityとなっている。それもあって、彼はいつも特定の型のSteinway( 7' Steinway 'D' Grand Piano)を指定しているのではないか(と思っている)。そのピアノは西海岸で、ある医者の引越しセールの時に破格の値段で手に入れた物といい、その後のニューヨーク転居時には直ぐには運べなかったほどデカイらしい。(彼のPianismのジャケットにあるのが、それである。)
ロマンティックに歌うこと
- 他の名人上手と同様に、この人も歌う。実に美しい、かつ力感のあるアドリブをする。彼は、聞く人に喜びを与えることに、大きな関心がある。他人の妙な演奏には厳しく、自己満足だと批判する。彼は後期には、子供の頃のアイドルだった多くのジャズメンと共演するが、その幸運に感謝しつつ、その幸せをジャズにぶつけている、と語っている。
キレイな音
- そんなこと、当たり前だろうょ、と言われるかもしれないが、この人の音も格別に美しい。クラシックの素養があるから当然なのでしょうが、音自体と、その余韻が何とも聞き惚れるほどである。そして、そういう素地があって、その上での演奏の良さなので、ファンが多いと言うことか。
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