- 「Little Waltz、可愛いワルツ」は、ベーシストRon Carterの作った良いオリジナルです。本人がやってからも、結構いろんな人が採りあげています。Ron Carterにとっても、ビッグネームとなる直前の「Uptown Conversation」という盤の中の演奏が一番で、正に当時彼のやりたいことをやった感じです。自分の他の作品でも何回かやっていますし、サイドメンとしての録音は2,30あるようです。
- Nelsonはその昔、Herbie Mannが「Comin' Home, Baby」や「Memphis Underground」の驚異的な大ヒットで、しこたま溜め込んだ勢いで始めたEmbryoというレーベルの、最初期の作品である「Uptown Conversation」というリーダー作で、これに惚れ込みました。このレーベルは、見開きジャケットの真ん中に穴を空けた意匠で、人目を惹きましたが、他にもMiloslav Vitous等が良い作品を出していました。
- この「Little Waltz」は、上記したように「Uptown Conversation」というRon Carterのリーダー作で発表されたものですが、この盤は一寸した仕掛けがしてあって面白いのです。全部で6曲入っていますが、曲間をソロのベースが繋いで、前の曲から次の曲へと少しづつ雰囲気を移していきます。Ron Carterが一曲やってみて、「さてと、次は何が良いですかねぇ」と想いを巡らせながら、ベースで遊びながら色々と想像を展開しているうちに、「そうか、アレか、うん、そうだなぁ」と次の曲に移っていくという感じです。ギグにしろ、アルバムにしろ、原初的にはこういう風に曲を思いついて行くんだ、という感じで好感が持てます。
- それで、「Little Waltz」ですが、Ron Carterがノーリズムのピチカートでイントロを始めます。とてもファンタスティックな出だしです。今の時点では評価が違うかも知れませんが、音選びが69年という録音の当時としては新鮮です。次に、Hubert Lawesのフルートが幻想的ともいえるテーマを提示し、一応はオン・リズムになります。そしてHancockのピアノも入ってきますし、Grady Tateのブラッシュもそれ風で、実に気持ちが良いです。次に始まるフルートのアドリブが実に綺麗で、どこか中空を彷徨うような感じが独特の味です。さらにHancockのアドリブも音を探りながら、さらに雰囲気が盛り上がっていきます。リーダーのRon Carterによるベースは、この間、ウォーキングに徹したり、細かいパッセージを挟んだりと、着実にソロイストをサポートしていますが、前面には出てきません。そして、そのピアノが演奏の流れのままに、戻りテーマを弾いて、7分半の演奏が終わります。そして上記したように、その雰囲気のままに曲の合間のベースソロに入っていって、次の「Einbahnstrasse、一方通行路」が始まります。
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