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Pithecanthropus Erectus/ Charles Mingus
  1. 「Pithecanthropus Erectus」はCharles Mingusのオリジナルです。「直立猿人」という標題からも判るように、作者としてはある種のメッセージを込めた曲でしょうが、なーに、そんな事にかまわずに聴いてしまいましょう。これは正真正銘の、他人は決してやらない、The One and Onlyの曲であり、演奏です。
  2. この演奏は、何が始まるかと思わせる、不気味というと言い過ぎですが、不安感の漂うテーマで始まります。ソロイストのアドリブ自体が、ある種の順序に従って展開していく仕掛けになっており、受け渡し前後は各楽器が百家争鳴状態になりながら、でもそこに調和が生じて次のアドリブに移るようになっています。テーマの提示自体も一種変わっており、テナーの叫びにピアノを始め、色んな楽器が加わって分厚い音がするので、確かめてみると、たった5人の2管編成なのに驚きます。そういう喧騒の中で、まとまりが急に出てテーマがこれらしいなぁ、と判ります。テナーの咆哮、アルトの叫び、そしてギクシャクしたリズムが印象的です。先ず、アルトのアドリブになりますが、ベースとドラムスの息がよく合ったシンコペーションが効いています。このジャンプするリズムのメリハリ感は独特です。そしてベースのぶっといウォーキングが割り込んできたのを契機に、喧騒の中で霧が晴れたようによくハモった合奏で演奏に纏まりが付きます。次がベースのアドリブかと思う展開ですが、実はピアノのアドリブと判ります。何ともなかなか良い、アドリブらしいアドリブです。やはり、途中から狂気に満ちた合いの手が乱入してきます。そして次が、テナーのアドリブです。やはり、「ンッチャッ」というリズム・パターンが執拗に存在を主張し、またまた自然発生的かと思わせるような纏まりに移って、なるほどこれがカタルシスになっているんだ、と得心します。最後はテナーがリードして、喧騒の中に演奏が終わります。リード楽器に動物、特に猿の嬌声に似通った音を出させる演出といい、パターンが有るようで無いような展開といい、正にCharles Mingusワールドです。アナログは、森の中で直立猿人が跋扈するデザインであり、しかも刺激に満ちた、意表を突くような音出しでもあるので、60年代のわが国のジャズ喫茶では、学生の間で大評判の名盤だったのですが、今はどうなんでしょうねぇ。
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