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板橋文夫「濤」---in depth
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- 板橋文夫のデビュー作である「濤」を、じっくり聴いてみよう、ということです。「オイ、オイ、今さら濤でもないだろうョ」という声がありそうですが、Nelson的にはやはりコレが原点なんです(^^;)
メンバー等
- 上でクリックしている方は、右にデータが出ているはずです。これは、リーダー録音としては2番目の作品らしいのですが、先に録音した「Rise and Shine」よりも発売が早かったようです。時期的には、ナベサダ・バンドでの修行を終え、ヒノテル・バンドで注目された頃の録音ということになります。気鋭のピアニストとしては、トリオで先ずお目見えと言うところです。
Alligator Dance
- なかなかの曲で、面白いリズム・パターンにのせて、「なるほどこれが板橋という男か、良いんじゃないの」と感心させられる導入です。中高音のタッチも強めですから、若干複雑な音になっており、それがその後に見せる「苦い音」の前触れになっています。デビュー作であり、初めて聴いた人は、「McCoy、本田などの系統の人だなぁ」と受け取ったことでしょう。更に、「作曲も、結構期待できそうじゃない」とも感じられます。
Good-bye
- そして、この人の生涯で恐らく一番多く演奏し、またリクェストも絶えず、遂には「Don't Say Goodbye」という曲まで書いて、「俺はGood-byeだけじゃないんだょ」とグチらせたオリジナルです。初めて聴いたのはライブでしたが、このレコードでゆっくりと、しみじみと聴くと、実に何とも素晴らしい曲です。雰囲気としては、この人の特徴であるアーシーな部分ではなく、子供のときから叩き込まれた西欧音楽系の曲作りと捉えています。「渡良瀬」のライナー解説には、「米国に、岡田勉さんと行った時、NYのCentral Parkを歩いていて、フト浮かんだ旋律を暖めていたものがこれだ」と書いてあります。グローバルな場でジャズのオリジナルとして、皆が採りあげてもおかしくない名曲です。この曲が好きな方のために、ここに気がついた録音を纏めてあります。
Toh(濤)
- 3曲目で、しかもB面一杯を一曲で占める「濤」は、実に気宇壮大な大作です。かなりスケールのでかいテーマ提示がありますが、その出だしの迫力を最後までよく持続できています。いわゆる、気負いばかりの「腰折れ」はしていません。丁々発止の動きの多い運動に比して、太極拳のほうがゆったりと力もいらないように見えますが、実はゆっくりと大きな動きを、体のバランスを保ちつつ行うことは至難の業であり、歌舞伎役者の名演技も、静謐な日本舞踊の家元級であるかからこそ出来ることです。早弾きピアノよりも、ゆったりピアノで感動させることのほうがズッと修練の必要なことと信じております。ということで「この若さで、この演奏なの」と感心するばかりです。そしてそのメロディの中に、かすかですが後の「渡良瀬」に至る、アジア的というのか、板橋的というのか、とにかく西欧音楽としてはちょっと毛色の変わった雰囲気がほの見えています。デビュー作で、このスケ−ルの大きさは例がなく、その後の板橋さんのジワジワと広がる人気の基盤がもう既にここにあるという気がします。
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