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McCoy Tynerと板橋文夫のピアノ
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McCoy Tynerの曲を板橋さんがやったら、、、
- 後は、McCoyTynerですか。
McCoy Tynerの'Beautiful Love' from 'New York Reunion/ McCoy Tyner' を聴いてみると、、、
- このCheskyレーベルの盤は、Joe Hendersonがワンホーンで入っている演奏で、McCoy Tynerの初期の名作「The Real McCoy」の面子が再会したので、この標題となっています。それでこの「Beautiful Love」の演奏を聴いていくと、思わずニヤリとしてしまいます。、、、というのも、ある時、この演奏をMP3で、ブラインドで聴いていて、「アレッ、板さんが'Beautiful Love'をやっている盤なんか、あったかなぁ」と思ったことがあったからです。暫く聴き続けていても、どうにも手口が板さんらしいので、「ホントかよ」と不審に思いつつ、確認すると、この盤だったのです。そう言えば、少し熱っぽさは無く、淡々と弾いているかなぁ、という差がありそうです。この盤をお持ちの皆さんも、だまされたと思って聴いてみてください。つまり、板さんのピアノの根っ子にはMcCoy Tyner的な面があると思って、まんざら間違いではないのです。
McCoy Tynerとの大きな違い
- 無論、板橋さんのピアノは、McCoy Tynerのそれとは違います。プロとして、ギャラを取ってるんですから、クリソツでは世の中通りません。何と言っても違うのが、直接性というか、叙情性で、これが板橋さんのピアノの魅力になっています。この'Beautiful Love'でも、板さんがやると、もっと熱くやるだろうなぁ、と思います。別の言葉で言うと、もっと「泣きのフレーズ」が混じる筈です。McCoy Tynerにも色んなバラードの演奏がありますが、むしろバラード曲も「素材の一つと突き放して」と捉えている感じがあり、そういう楽曲素材として料理している感が否めません。だから聞く方もジャズ本来の、そういう「変奏の妙味」を味わおうという感じになり、McCoy Tynerと「熱い気持ち」を分かち合おうという感じとは違います。それはそれで、正しいジャズの形です。McCoy Tynerの演奏は、どこにも文句の付けようが無い、プロのやるジャズです。一方、板さんのピアノの場合、御本人もそうでしょうが、聞く方も、板さんの、あるいは'Beautiful Love'という曲の演奏として、「熱い気持ち」を伝えたい、伝えて欲しいという面が強く出て来る気がします。それは、それまで板さんの演奏を色々と聴いてきている人にとっては、「この人はここが凄い」という下地があり、それがこの人の魅力になっているからです。この人なら、こういう曲は向いていて、きっと凄い演奏を聞かせてくれるんじゃないか、という期待があります。板橋さんが演奏する'Beautiful Love'を聴くのなら、そういう魅力が発揮されていなきゃぁ、納まらないのです。
華麗さはなくとも、、、
- McCoy Tynerは、、、恐らく板橋さんよりも、テクと言うことでは上なのかと思います(ド素人の言うことですから、余り気にしないで下さい)。板橋さんの指もかなりのものですが、McCoy Tynerは手自体が大きい上に、指も負けずに太いと言う印象があります。それもあってか、McCoy Tynerのピアノは板さんのそれに比して華麗であり、もっと言えば弾き過ぎかと思える程の手数の多さがあります。板橋さんは、殆どそれに肉薄しますが、でも想像では余り「華麗さ」や、「馬鹿テク」に重きを置いていないのではないか、という感があります。そしてそういうピアニストの場合にはそうである事が多いように、板橋さんはむしろ「個別の音の重さ」に重きを置いているのではないか、と感じます。そしてその「欲しい音」を求める姿が、アノ中腰であり、体を激しく震わせる奏法ではないかと思っています。極端かも知れませんが、「百音で幾ら」ではなく、「一音でも重いゼ」という攻め方なのではないでしょうか。そこに、板橋文夫のピアノの真骨頂があり、魅力があると思います。McCoy Tynerは、どんな難フレーズでも平然と弾きこなし、聴く人を自分の術中に取り込んでしまいます。その分、自己完結しており、逆に言えば、「自己中心的」です。ですから、聴く側に「共感」を余り要求しないし、またそれ、つまり「共感」を持ち難い面があるのです。これは、良い悪いの問題ではなく、スタイルの問題です。「どっちかと言うとこっちが好きだから、こっちを聴くヨ」で良いのではないでしょうか。
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