Miles Davis’Groovy Tracks
- Miles Davisの好演奏といえば、ごまんとあり過ぎるので、先ず究極の演奏を上げて、後は時代別に見ていきましょうか。ということで、Miles Davisの場合はどうしても話が長くなりますが、大目に見て下さい。
また、Miles Davisの足跡もどうぞ。
- ここでは、盤全体としての評価ではなく、特定のトラックにおける演奏の素晴らしさに着目しています。
- クリックすると右のフレームに盤全体のデータが出ます。そうでない場合も、できる限りDiscographical Dataが分かるようにしています。
では先ず、Miles Davisの究極の名演です。Nelsonが30年余にわたってMiles Davisを聴いてきた感触からして、以下の7つが挙げられると思います。
- Tempus Fugit, Dear Old Stockholm, It never Entered My Mind / from 'Vol. 1, 2'
最初のピークは、このTempus Fugit「光陰矢の如し」でしょう。Blue Note初期録音では、この他にIt never Entered My Mind, Dear Old Stockholm等が感動的です。
- Bag's Groove, Airegin, Oleo, But not for Me, Doxy / from 'Bag's Groove'(1954)
このBag's Grooveは次のピークでしょうか。ロリンズのコロッサスと同様に収録された全曲を挙げましたが、異論は出ないでしょう。Bag's Groove(2ティクとも絶品), Airegin, Oleo, But not for Me, Doxyのどの個別の演奏を採ってみても、他の人がそれを演奏したら畢生の名演になり、偉人に祭り上げられてしまうほどの質の高さです。この録音をめぐるあることないことの噂話はここにあります。
- Walkin', Solar, You Don't Know What Love Is, Love Me or Leave Me / from 'Walkin'(1954)
この人のオープン・トランペットが綺麗に開花したWalkin'が凄く、J.J.Johnson, Lucky Thompson, Horace Silverが生き生きとスィングしまくる。Walkin'の名演に加えて、あろうことか更に、ミュートの名演Solar, You Don't Know What Love Is, Love Me or Leave Meまで入った絶品。交差点の中心に吊り下げられる形式の信号機の意匠も嬉しい。
- Surrey with a Fringe on Top, Diane, When I Fall in Love /from 'Steamin' with the Miles Davis Quintet'(1956)
Surrey with a Fringe on Topは、初期クインテットの代表的な名演です。このSurrey with a Fringe on TopではRed Garlandも絶好調。その他、Diane, When I Fall in Loveなどで、ミュート・トランペットの最高の模範演技を聞かせて、その後「ミュートのマイルス」とか、「卵の殻の上を歩く男」とか言われた。一息いれようと火を付けると、ホワッとMilesの顔が浮かびあがった、という意匠も良い。
- So What, Blue in Green, All Blues /from 'Kind of Blue'(1959)
何処の国でも、古今東西のジャズの最高傑作、とされる究極の名盤。So What, Blue in Green, All Bluesのどれを採っても素晴らしく、これが「モード」と呼ばれるジャンルの開花となった。もし今から買うなら、若干高目で間違って発売されていたテンポが正しくなり、曲目の説明の間違いが訂正された最新のMaster Sound版を買うべきでしょう。
- My Funny Valentine, Four, Stella by Starlight, Joshua /from 'The Complete Concert 1964, My funny Valentine + Four and more'
ライブでは結構凄いんだ、という時期の代表作でも名演がどっちゃり。My Funny ValentineとFourは、元来2枚組の元盤の標題曲。Stella by StarlightやJoshuaも実に良い。
- Autumn Leaves /from 'Somethin' Else/Julian Cannonball Adderley'(1958)
サイドメンもので落とせないのがコレ、Autumn Leaves。Hank Jonesが「泣きのアドリブ」を繰り出すし、御大はミュートの神業を聞かせるし、という大傑作。
ということで、ご用とお急ぎの方向けの究極の絞り込みの結果は上記の通りです。それでは次に、先ず上記に洩れた初期の名演奏から、、、
- The Man I Love, 'Round about Midnight /from 'Miles Davis and the Modern Jazz Giants'(1954)
The Man I Loveは'Bag's Groove'と同時期の録音ですが、やはり落とせない名演です。寄せ集め盤で、コルトレーンが入ったクインテットの'Round about Midnightなども聞き物です。
- Dig, It's only a Paper Moon / from 'Dig, featuring Sonny Rollins'(1951)
Miles Davisは、実はSonny Rollinsとズーッとやりたかったらしいが、そうは行かなかった。It's only a Paper Moonは二人が共演したDigと呼ばれる盤のなかでの名演です、標題曲も素晴らしい。
- Minor March, Dr. Jackle /from 'Miles Davis and Milt Jackson Quintet/Sextet'(1955)
おっと、Minor March, Dr. Jackleを忘れる訳には行きません。ショッタれたMiles Davisのジャケット写真が示すように、まだまだ貧乏とは縁が切れていなかった時期。しかし演奏は最高で、Milt JacksonとJackie McLeanの素晴らしい演奏に目を細めていると、Miles Davisが更にそれよりももっと凄いアドリブを聞かせるという「感嘆これ久しゅうする」盤。
次は、Original Quintetの名演奏から、、、John Coltraneの当初のガラッぱち音を許容する、しないで評価が分かれる。Coltraneのアドリブだけを抜いたカセットを作った人も居た筈。
- It Could Happen to You, If I Were a Bell, I could Write a Book /from 'Relaxin' with the Miles Davis Quintet'(1956)
ミュートの印象が強いこの盤では、It Could Happen to You, If I Were a Bell, I could Write a Book等が聞き物。流し録りであったらしく、トラックの切れ目での私語が何故か嬉しい。
- It never Entered My Mind, Ahmad's Blues, Four /from 'Workin' with the Miles Davis Quintet'(1956)
これはバラードの多く入った盤と記憶するが、It never Entered My Mind, Ahmad's Bluesなどが印象的である。Fourもこれ以降に何度も取り上げられるが、これが基本の下敷きである。
- My Funny Valentine, Tune up-When Lights Are Low /from 'Cookin' with the Miles Davis Quintet'(1956)
その後定番となったMy Funny Valentineの、恐らく最初の名演です。このイラストジャケットの記憶が鮮明な人も多い筈。先ずはMy Funny Valentineが良いなぁとなり、そしてTune up-When Lights Are Low等にも頷いてしまう。
- Bye Bye Blackbird, 'Round about Midnight, Dear Old Stockholm /from 'Round about Midnight'(1956)
Bye Bye BlackbirdはMilesもスゴイが、Red Garlandの好調が嬉しい。この盤はColumbia移籍後の初リーダー作、といっても上記「-ingもの」と同時期に密かに録音してしまっていた盤。 'Round about Midnight, Dear Old Stockholmなんかも完成度がメチャ高い。
次は、セクステット、オケもの、Mobley入り等の種々の盤から、、、
- Miles, Straight No Chaser, Billy Boy /from 'Milestones'(1958)
Miles, Straight No Chaser等の素晴らしい演奏はどうだ。この盤は'Kind of Blue'と対になる名盤で、Julian Cannonball Adderleyも居ます。
- It Ain't Necessarily so, Summertime /from 'Pogy and Bess'(1958)
It Ain't Necessarily soには、何度聴いてもしびれてしまう。この人とGil Evansとの共同作業で、オケに乗って歌い上げる名演。同種のものに、AranjuezやQuiet Nightがあります。
- Someday My Prince will Come, Old Folks, I Thought about You /from 'Someday My Prince Will Come'(1961)
「いつかは王子様が」の名演を聴いていなかったら恥です。
- Walkin', No Blues /from 'In Person at the Blackhawk, vol.1'(1961)
長年聴きなれた54年ヴァージョンとは全く違った印象のWalkin'に発売当時は面食らうと共に、「これも凄いや」と納得しました。バリバリ吹くライブ物が出る端緒となった2枚組。
- If I Were a Bell, On Green Dolphin Street, Neo /from 'In Person at the Blackhawk, vol.2'(1961)
上記の後編。何度も言いますが、このOn Green Dolphin Streetの復活収録はNelson的には嬉しかった。それまでは別のオムニバス盤にしか収録されておらず、聞く人も少なかった。でも、これでCDになってもさして好評を聴かない。世に「ガチャ耳」が如何に多いかの証左です。If I Were a Bell, NeoなどでのWynton Kellyの良さも絶賛もの。
次は、Wayne Shorter加入後の名演から、、、
- Autumn Leaves, Walkin' /from 'In Berlin'(1964)
Autumn Leavesのもう一つの名演。Wayne Shorterが加入した最初の盤で、この時期ではまだ自己主張は押さえています。それでもAutumn Leaves, Walkin'などでは、バンドの今後の方向が仄見えます。
- E.S.P., Little One, Iris /from 'E.S.P.'
「超自然知覚」とでも言うのか、E.S.P.が素晴らしい。ソロソロWayne Shorterらしさがそこここに出てくる。Ron Carterの曲を咀嚼しきった名演に脱帽。
- Stuff /from 'In the Sky'(1968)
StuffにおけるTony Williamsのスゴサに脱帽です。この盤位までが、Nelsonの感性で付き合える限界です。
そして、オマケとして、、、
- Theme etc /from 'Lift to the Scaffold'(死刑台のエレヴェーター, 1957)
やはり、これを落とす訳にはいかないでしょう。映画を見ておられれば、ジャズが焦燥、絶望、熱愛等々の感情表現に使われた必然性がお分かりでしょう。無論、白黒の自制の効いた画面も相俟ってのことですが、、、
|