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ヴァンプ (Vamp)

  • ジャズのライブに行くとよくみる光景で、次の曲に移る時に、メンバーの誰かが喉を潤していたり、楽器の調整などをしてるので曲が始められないことがあります。次にやる曲が決まっているから、その前触れをリズムセクション等がやって出を待つのですが、その曲のテーマ迄はやってしまわずに、コードやリズム・パターンを鳴らして曲想を暗示するに止めるのが普通です。
  • Randomhouseをひも解いても、Vampの項にはVamp till Ready(準備が整うまでヴァンプする)という用例を挙げていますから、間違いなさそうですです。
    At Mister Kelly's/ Sarah Vaughan
  • 何か適当な盤が無いかな、と考えていて思いついたのが、この名盤「At Mister Kelly's/ Sarah Vaughan」です。このライブ盤は最初は10曲足らずで発売されていましたが、CD化の際に、追加曲がゴッテリ入って、20曲になっています。そしてクラブの物音も取り入れてあり、「マイクが良くないけど、もう少し音量を上げて呉れませんか」なんて打ち合わせのやり取りも録音されていて、普通のクラブでの気の置けないヴォーカルを聞く感じがよく出ていて、人気がある盤です。曲の合間の彼女のセリフも、心なしかオズオズという感じに聞こえて、初々しさを感じるヴォーカルです。ヴォーカルとピアノトリオという編成で、次々に曲をやっていく中で、ヴァンプ (Vamp)が出てきます。
  • 例えばこのセッションでも聞きモノかと思いますが、名曲の名唱である「9 How High The Moon」も、ヴァンプで始まっています。お聴きになればお判りのように、リズムセクションだけが、ゆったりしたテンポで、コードを弾いています。それを聴いていたらSarah Vaughanが「乗って来ちゃったわ・・・」と言う感じで、ヴォーカルで入ってきます。こういう手順で物事が進むと、聴いている側は曲の雰囲気が少しづつ広がってきて、ステージも見ているので、「準備が出来たら始まるんだナァ」と判り、そして歌が入ってきて「よぉ、よぉ・・・」となります。
  • ジャズファンならば、そこで「こたえられねぇナァ」と唸ってしまう訳です。このようにヴァンプでは、メロディはやらないもので、メロディをやるとそれは単なるイントロです。例えば「4 Be Anything But Darling Be Mine」の前奏でやっているのは、メロディがありますから、イントロです。ヴァンプでは、演奏本体のテンポとキーがほぼ判っていて、その曲の出だしの部分のコードを反復して弾くことが多いようです。従って、準備が整うまでは、いつまでもそのコードを繰り返す事もあり、事実繰り返せます。「5 Thou Swell」や、「14 If This Isn't Love」で聴かれる導入も、ヴァンプだと思います。例示はヴォーカルとしましたが、別にインストの場合でも、話は同じです。
  • こういったやり方をクラブでのジャズの演奏にこと寄せてメモしましたが、実はクラシックでもこんな感じでコードだけでを聞かせて盛り上げに持って行くスタイルがあるそうです。スカルラッティーが良くやったので、学者さんがそれを「Vamp」と呼んだので、それが定着したんだとクラの方に聞いたことがあります。

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